MarlboroAltria

MarlboroAltria

最近の記事

夜想曲

仕事から帰ると、暗い誰もいない部屋の電気をつける。 僕は死んでいるのに生きている。 散らかった埃っぽい狭い部屋のテーブルに、スーパーで買った半額弁当と安酒の缶を置く。 僕は生きているのに死んでいる。 タバコを火を付けると前日飲み干してそのままになっている空缶を探して灰皿にする。 テレビを付け再生ボタンを押す。初期のモーニング娘。のライブ映像が流れてくる。 その瞬間、僕は昔に戻る。  僕が大学生だったころは、モー娘。の全盛期だった。音楽番組で彼女らを初めて見たその

    • あけましておめでとうございます㊗️

      新年あけましておめでとうございます。 昨年末から、少しずつ駄文を書かせていただきましたが、思ったより多くの方に読んでいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。 本当にありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。 せっかくの機会ですので、少し私自身のことを書かせてください。 私が物を書こうと思ったのは、他人に物を言うのが得意ではないからです。心の中で言いたいことが溢れているのに、いつも何も言えない不自由を感じているからです。 私をもっと見

      • 春にして君とわかれ

        彼がこの部屋を出て行って半年が過ぎた。 私は変わらずここで暮らしている。手直しもせず、模様替えもせす、あの時のままの部屋で暮らしている。 一緒に座ったソファーも、 一緒に食事したテーブルも、 一緒に使った冷蔵庫も、 一緒に数えたカレンダーも、 一緒に作った写真ボードも、 私の電話番号も、 メールアドレスも、 封の開いたインスタントコーヒーも、 使っていた歯ブラシも、 箪笥の中の洋服も、 読みかけの本も、 全部そのまま。  「他に好きな人ができた」 彼に別れを告げられた

        • 僕って、なんだろう。

          大学生になった僕は、ひとりぼっちだった。 入学してから僕は誰とも口を聞かなかった。半月くらい会話らしい会話を誰ともしなかった。 大学では誰も僕を知らなかったし、誰も僕に関心を払わなかった。 教室でも、廊下でも、電車の中でも僕はずっとひとりだった。 初めて食堂に行った時には一緒に食べる人がいない自分に気がついて、ひどく惨めな気分になった。 また周りに惨めだと思われるのが恥ずかしくて悔しくて、二度と行けなくなった。 一人暮らしに期待してみたけれど、何も起きなかった。何

          私は可愛い。

          私は可愛い。 どこにいても一際目立つくらいに私は可愛いのだ。 保育園を卒業する頃には、すでに私はそれに気がついていた。 だって周りの男の子の対応も、先生ですらも私には特別に優しい。勘違いなどではない。明らかにブスと私とでは接する態度が違うのだ。 そしてそれは小学生になっても、中学生になっても、高校や大学、社会人になっても同じだった。 いや、むしろ歳を取れば取るほど顕著になった。 ブスと比べて、私は周りの男からずっと優しく大切に扱われた。 それはとても心地いいこと

          私は可愛い。

          止まった時間

          私にはずっと好きな人がいる。 中高一貫校にいたので、私は彼を6年以上見ていた。卒業して会えなくなっても私は毎日彼を想って生きている。 初めて会った瞬間から私は彼を好きになった。鳥は生まれた直後に見た生物を親と刷り込まれるらしい。それくらい強烈に、恋に目覚めたばかりの、まだ真っ白で何もなかった私の心に彼は深く刻まれた。 中学校に入ったばかりの頃の彼は小学生みたいに小さかった。足が早くて、明るくて、何より顔が可愛かった。 暫くして急に彼は背が伸びて、顔も体も男を感じさせる

          止まった時間

          消せない想い

           郵便受けを開けると、少し厚い封筒が入っていた。社会人になって3年、少しずつ友達が結婚するようになっていたので、封筒が招待状だという事はすぐにわかった。  ただ誰だろうと思った。最近結婚するなんて話をしている友達がいたかな、と思いながら私は裏の差出人を確認した。そしてそこに書いてある名前を見た時、私の胸は掻き乱れた。  そこには私の初恋の人の名前があった。  私は彼女をずっと好きだった。初めて彼女に会ったのは中学校だ。入学式のあと教室の自分の席の隣に座っていたのが彼女だ

          消せない想い