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前日の気持ち

大舞台の前日の気持ちって、どうなんだろう。
残念ながら僕自身はそんな経験はない。
せいぜいが受験くらいだけれども、もう古い話で、前日をどのように過ごしたのか記憶にない。
人前に立つと言うことでは、結婚式がそうだったかもしれないが、それはここでの大舞台とは意味が違う。

僕はボクシングが好きだ。
明日東京ドームで行われる4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、井上尚弥対ルイス・ネリ。
試合が決まった時から、Googleカレンダーに入れていた。
東京ドームでボクシングの試合が行われるのは、1990年のマイク・タイソン対ジェームズ・ダグラス戦以来。
そう、あの大番狂せの試合以来だ。

大半の予想は、井上尚弥が圧倒的優勢。
前半で決めるだろうとの予測。
これまでの井上尚弥の戦いぶりをみると、そうなるだろう。
今回のネリは36戦で、35勝1敗。
しかし、これまでも井上尚弥は同じような無敗、あるいはそれに近い相手を打ち破ってきた。
前回のタパレスは対戦時37勝4敗。
その前のフルトンは同じく21勝無敗。
そんな相手をマットに沈めてきた。
ネリが彼らと違うのは、そのKO率の高さだ。
36戦中27のKO、75%のKO率。
井上尚弥は、それを上回る、26戦、26勝、23のKO、KO率88%。
しかし、75%のKO率はあなどれるものではない。

また、日本のボクシングファンなら、あの山中慎介との試合は忘れられないだろう。
神の左を誇る山中慎介を、後に悪童と呼ばれることになる、ドーピング違反、体重超過を引き起こしながらも、完膚なきまでに打ちのめした、あの試合は目に焼きついている。
一度スイッチが入ると止まらない連打。
左右のアッパー気味のフック。
それだけではない。
彼は山中慎介のパンチをことごとくかわしていたのだ。
僕は、一発でも井上尚弥がパンチをまともにうけるようなことがあれば、試合の行方はわからないと思っている。

さて、こんな試合を前日にしたボクサーは何を考えているのだろうか。
特に、井上尚弥は明日敗れれば、全てのベルトを失ってしまうのだ。
そんなことを考えるたりするのだろうか。
それとも、自分が勝利することだけを考えるのだろうか。
家族と過ごすのだろうか。
スタッフと試合について話すのだろうか。
練習はするのだろうか。
34年前の、あの番狂せのことを思うだろうか。
夜は眠れるのだろうか。
あるボクサーは、天井に、
「YES I CAN!」と書いてそれを眺めていたと言う。
大場政夫はぐっすり眠っていたらしいが、輪島功一だったか具志堅用高だったかは、試合前日はまったく眠れないと言っていた。
井上尚弥はどちらなのだろうか。
早く明日になって欲しいと思うだろうか。
それとも、今日が続けばと思うだろうか。
いっそ、このまま明後日になればいいと思うだろうか。

こんなことを考えている僕は、自分が戦うわけでもないのに、果たして眠れるだろうか。

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