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ひと足お先に、正義を捨てて

世の中は正義で満ち溢れている。
性加害で訴えられた芸能人を叩くのも正義。
訴えた被害者を叩くのも正義。
制作側に意思が理解されなかったと告白した漫画家を叩くのも正義。
その制作側を叩くのも正義。

プーチンは、自分が悪の権化などとは思っていない。
ウクライナを取り戻す、これこそが正義だと思っているに違いない。
もちろん、ゼレンスキーは、ウクライナを守ることが正義だと思っている。
イスラエルもハマスも、正義は自分たちにあると思っている。
隣の隣の国のミサイルも、正義の名のもとに発射されている。
あの裏金にだって、もしかしたら正義が隠れているかもしれない。

だから、僕たちは気がつくべきなのだ。
正義などでは、何も解決しないと。
正義を振りかざす人たちは、これこそが問題を解決する伝家の宝刀だと言うだろう。
でも、よく見るがいい。
相手の手にも、同じ武器が握られていることを。
正義を振り回す戦いに終わりはない。

僕たちに残されているのは、良心しかないのではないか。
良心という、なんの拠り所もない、不安定な、霧のようなもの。
良心という、なんの思想もなく、主義もなく、主張もないもの。
でも、それしか、僕たちには残されていないのではないだろうか。
良心で解決できる問題は少ないのかもしれない。
しかし、それは本当に解決するべき問題なのか。
解決する必要もない事柄に、僕たちは振り回されていないか。
その無意味な戦いに僕たちを駆り立てるのが、正義だ。
そして、そのことに気づかせてくれるのは、良心だと思うのだ。

正義があれば、泣いても馬謖を斬ることができるだろう。
しかし、良心から馬謖を斬ることはできない。
もちろん、この場合の「斬る」は文字通りの意味だ。

正義に基づく行動は、相手を変えようとする。
良心に基づく行動は、自分だけの事柄だ。
そうであれば、知らない人を攻撃することがどのようなことなのか。
自ずと答えは出るだろう。

お前の良心は何なのだと問われても、答えることなどできない。
良心は目に見えない。
良心は用のない時には語らない。
だから、あなたが僕の良心を攻撃しようとしても、それは無理な話だ。
でも、良心は僕の中に確実にある。
あなたの中にもあるだろう。
誰の中にもきっとある。

僕はこの良心とともにこれから生きていきたい。
ひと足お先に。

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