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『新説・明治維新』を読む

本日は、BOOK-OFFで200円+税で手に入れた掘り出し物の一つ、西鋭夫『新説・明治維新』(ダイレクト出版2016)の読書感想文です。

読めたらいいなと思っていた本

本書は、ネット広告などで一時期かなり話題になっていて、存在自体は知っていた本でした。"誰も言わない明治維新の真実 維新のヒーロー・坂本龍馬に一体誰がカネを出したのか!?"というキャッチーな宣伝文句は、歴史好き、明治維新好きの感性をくすぐるものであり、結構売れたのではないかと思います。本の裏表紙には、定価2,980円+税と記載があります。

  1. 本書は解説・年表も合わせて82頁に、著者のスタンフォード大学フーヴァー研究所教授の西鋭夫氏の懸賞論文が付録についても100頁強の薄い書物です。私はBOOK-OFFで200円+税で買ったので、掘り出し物だったと感じていますが、定価で買って読んだら、同じ気持ちになったかは疑問です。というのも、肝腎の部分は、相変わらず不自然にぼかされたままなのではないか、という想いが拭えないからです。西教授の着想、仮説、物語展開は見事だと思うものの、知識・情報獲得のコスパ意識に囚われている身には、話題になっていたタイミングで手を出さなくて正解だったなあ、というのが正直な感想です。

Follow the Money

本書で一番役に立つ教訓は、

Follow the money ーお金がどう動いたか、そのあとを追いかけろ

P36

ということだと私は感じます。特に近代以降の歴史を学ぶ時には必要な態度だと痛感します。公式の歴史は、勝者によって捏造・改竄されていることが確実です。あからさまな事実の捏造・改竄までは行われていないかもしれませんが、都合の悪い事実の隠蔽や解釈による歪曲は当然行われていると考えるべきでしょう。自分自身の歴史を語る時でさえ、ある意図を持って事実を取捨選択している筈です。現在の自分の地位を守る為に特定の過去を隠蔽する行為は日常的に行われています。それが繰り返されることで、定説として定着してしまった歴史があるのは当然でしょう。

実際問題として、経済的裏付けなき偉業は考えられませんし、表の歴史を陰で操った黒幕が存在するという視点は失ってはいけない気がします。何でも陰謀論で片付けるのは乱暴だとしても、善意の解釈で歴史を理解しようとするのはナイーブ過ぎる態度であり、洗脳・誘導にまんまと入り込むことにもなるでしょう。

「カネ」「女」「地位」

最後の章には『日米魂力戦』から抜粋・引用・編集されたCIAのスパイにスカウトされた西氏自身のエピソードが収録されています。この話の真偽の程は一旦横に置くとして、自分のことを徹底的に調べ上げた組織から「カネ」「女」「地位」を目の前に提示されて、スパイを引き受けてしまった人は、間違いなくいるでしょう。

西氏はすんでの所で、日本国籍を棄てることへの逡巡から、米国のスパイとして働くことを断ることを匂わせる展開で話は終了します。自分が西氏の立場だったら、同じ決断をするか、ちょっと自信がないです。

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