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鑑賞ログ数珠つなぎ「ペーパーハウス」

ある作品を観たら、次はその脚本家や監督、役者の関わった別の作品を観たみたくなるものである。まるで数珠つなぎのように。
前回:舞台「世界は笑う」

https://note.com/marioshoten/n/n7529f3a8cc4b

数珠つなぎ経緯

ペーパーハウスは8月上旬、コロナ陽性になり、自宅療養していた時期に一気見したNetflixのドラマである。かなり人気でランキング上位だったし、韓国版も作られたので、知っている人も多いと思う。

スペインのテレビドラマで、シーズン3以降はNetflixが製作・配信している。シーズン5まであるので、どうまとめるのも無理な気はするけれど、書き残しておきたい。本当に、面白かったから。

あらすじ

8人組の強盗団が、67人の人質を取りマドリードの造幣局に立てこもった。24億ユーロを持って脱出するという完璧な計画を練っていたが、強盗団は崖っぷちの状況に追い込まれる。(Wikiより)

憎めない強盗団たち

8人組とあるが、実際は一人の指揮者と8人の実行者って感じ。指揮者は”教授”と呼ばれ、平和的な強盗を目指しており、緻密で大胆な計画を企てる。
教授は造幣局にはおらず、指令室から彼らに指示を出す。8人が現場で人質を管理しながら、計画を遂行していく。完璧と思われた計画だったが、様々なハプニング(と自滅)に見舞われ、思い通りにはいかない。

8人の実行者たちはくせ者ぞろい。都市名をコードネームとして当てられ、お互いの個人情報を知らない。それぞれが強盗のプロだったり、偽札製造の専門家だったり、ハッカーだったり、めちゃ強だったり、犯罪に関する特別な技術や知識、経験を持っている。

実社会で爪弾きにされ、犯罪をしてしか生きることができないメンバーたち。それは彼らの責任だけではなく、社会の縮図でもある。そんな彼らが夢を掴むため、自分の人生を変えるために、強盗に挑むのである。

だが、彼らは人格的にも問題アリが多く、常に諍いや分裂が絶えないのも事実。ちょっとした気の緩みや感情のままに行動して何度も失敗したり、ピンチを引き起こす。「おい何してんだよ!」「今じゃねーだろ、それ!」見てるこっちは何度もため息をつき、怒りを覚える。その思いは主人公であるはずのトーキョーに向けられることが一番多い。主人公なのに嫌いになった時期もあった。だが彼女がいないとすべてのドラマが生まれないという現実もある。作り手の狙いだろう。他のメンバーもそれぞれ何かしらやらかしている。そして冷静沈着に見える教授が、あくせく走り回り、泥んこになりながら、尻ぬぐいをする。その様が面白さを引き立てている。

彼らはとにかくユーモラスで、情熱的で、自由である。それぞれが抱えた闇を押し込めて、今を楽しもうとする。仲間を大切に思っている。状況がどうであれ、信じることを諦めない。だからわたしは彼らは憎めない。むしろどんどん好きにならざるを得ない。

不思議な感情

ずっと自分の感情が不思議だった。

「強盗」という間違いなくやってはいけない、そして罰されるべき犯罪を行っているにも関わらず、どうしても彼らを応援してしまう。応援しつつも、「いや、彼らは追い詰められるべきだし、捕らえられるべき」と理性が働く。なのに、彼らを捕まえようとする警察や、どうにかして逃れようとする人質に対しても、「なんでそんなことするんだよ!!」と思ってしまう。

この感情のいたちごっこをずっとさせられるのがペーパーハウスである。

組織の難しさ

強盗団は”教授”以外、お互いの情報を知らない。もちろん交流を通して、それぞれの過去や背景が明らかになり、お互いを理解し、素敵なチームになっていく。だけど誰が上で、誰が下で、というような序列のある組織ではない。教授が絶対的リーダーではあるが、造幣局の外側から指示するだけ。現場にいて実行するのは8人。情報が漏れないよう教授と現場のコンタクトも最小限だし、教授だって指令室に24時間張り付いているわけではなく、自身のミッションのために席を外すこともある。

その時にピンチに見舞われたとき、現場リーダーとして「ベルリン」がいるのだが、彼もまたかなりの偏屈者で、リーダーを下ろされてしまう。それはつまり仲間割れであり、混乱である。

組織に属せずに生きてきた面々は、自分のやり方で、自分の信念を貫くことに恐れがない。たとえ目的が同じであっても、同じルートを選ばなかった場合、実力行使もいとわない。完璧に組織に慣らされていないからこそ、もめ事が起きる。

とても難しい。確立された組織でも問題は起こるのに、寄せ集めのくせ者ぞろいの集団が組織として一枚岩になることは、無謀なのかもしれない。

一方で、警察。
交渉人を担うラケル。上層部の思惑に巻き込まれ、思ったような交渉ができない。事件解決のためにどれだけ尽力しても、意見が通らなかったり、悪者にされてしまったりすることすらある。明確な組織は組織で、しがらみが多くて自由はない。だが結果は求められ、責任も追及される。

強盗団と警察。

どんな形であっても、人が集まり、同じ目的の元で懸命に動いていたとしても、うまく歯車が回るわけではない。それを痛感させられるシーンがとても多い。

一番好きなキャスト

これはめちゃめちゃに難しい。
エピソードによっても変わるだろう。

でも選ぼう。

やはり教授。
教授の二手、三手を読んだ計画、プランAがダメならプランB、C、、、緻密なシミュレーションの元に考えられている。常に最悪を想定して、それでも逃げられる、それでも死なない方法を用意している気持ち悪さ(誉め言葉)。あんなにカリスマなのに、社交性が低くて女性たちに揶揄われる感じも愛しく思える。アルバロ・モルテさん、最高です。

そしてナイロビ。
おそらくだけど、同性人気はトーキョーじゃなくてナイロビが多いんじゃないかな。仕事はキッチリするし、誰よりも人の気持ちを理解して行動できるし、基本的には冷静で、一番まともだし(笑)。ナイロビいなきゃ、成功してないと思う、マジで。アルバ・フローレスさん、また別の作品でも見たいです。

まとめ

シーズン5まであったにも関わらず、最後までダレることなく、喜びと悲しみと感動と驚きをたくさん与えてくれた。ひとつ問題をあげるとすれば、回想が多いので、一瞬「え?いつの話?」となることが多い。ただ、見方に慣れるとそう思うことはなく、「あ、回想ね」となる。最初だけの話。

強盗団のお面がダリの顔っていうのもいい。ダリも喜んでるよ、きっと。

あ、あとネイマール出てる!w

次の作品

考え中。

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