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シドニーで緊急入院した話

序章

病の前兆

数日ほど、排尿時に痛みがあった。利尿作用のあるURALという市販薬を買って、2~3日続けて飲むうちに、痛みは止まった。
それからまた数日後、下腹部の両脇に重い痛みを感じた。排卵痛かな?と思ってパナドル(解熱鎮痛剤)を飲んでやり過ごした。後から考えると、尿管の痛みだったのかもしれない。その時は知る由もない、病の前兆だった。

体調の急激な悪化

その日は土曜日で、朝から活動的に忙しく過ごした。午後は娘のテニスの試合を観戦。ものすごく暑い日で、薄手の長袖を着ていた私は、袖まくりをした。ところが午後4時ごろになると、急に天気が曇り、気温が急降下した(シドニーあるある)。私は寒気を感じ始めたが、我慢しながらテニス観戦を続けた。
その夜、家に着くころにはひどい悪寒で、体温を測ると38度を越えていた。ご飯も食べずに寝る。

Day 1

エマージェンシー(救急外来)へ

翌朝、相変わらずの高熱に加えて、背中の下部両脇が痛み出した。この痛みには覚えがあった。腎臓だ。
これは医師に診てもらわなければ。でも今日は日曜で、GP(一般医)は閉まっている。病院のエマージェンシーへ行くべき?これくらいの症状で行ってもいいの?
迷ううちにも痛みは増して行く。腎結石、腎不全、人工透析…。怖ろしい言葉がちらつく。やっぱり行こうと決めて、午前8時半、夫の運転で病院へ向かう。

受付を経て医師の診断

エマージェンシーは幸い混んでおらず、二人用のベンチに突っ伏す私。夫が受付で手続きをする。
受付後すぐに、個室で看護師の問診、血圧と体温測定(39度近い高熱)。パナドルをもらい、内部の待合室へ移動。採血と検尿。その後小一時間ほどで医師の診察。数時間待つこともあると聞いていたので、ラッキーだった。朝早くに来たのが良かったのかな。

入院決定

医師によると、腎臓は機能しているが、感染の疑いがあるらしい。抗生物質の投薬と、点滴をする。点滴の目的は、水分補給と、下がっている血圧を上げること。幸いベッドが空き、そこで投薬開始。

点滴が終わるも、血圧が思うほど上がらなかったため、2パック目の点滴を開始。医師が、血圧が上がらなければ今夜は入院になるかも、と伝えてきた。その後、3パック目の点滴後も血圧が上がらず、入院決定。元々低血圧とは言え、それでも低すぎたらしい。

入院は決定したものの、一般病棟に空きベッドが無いので、救急外来のベッドでそのまま寝ることに。家族が着替えや食事(マーポー豆腐。病人には辛くね?)を持ってきてくれる。
救急外来だから、夜中も結構騒がしい。なるべく寝ようと心頭滅却。ウトウト眠りについたと思ったら、血圧と体温チェックで頻繁に起こされる。

Day 2

一般病棟へ

午前2時ごろに、一般病棟のベッドが空いたので、移動になる。(午前2時にベッドが空くって、どういうシナリオ?深く考えないでおこう。)私が寝ているベッドをそのままスタッフさんが押して移動してくれる。移動先は、2人部屋で、高齢のお爺さんと同室だった。病室って、男女分けないんですね。

朝7時、朝ご飯が運ばれてきた。焼いていないトースト2枚にバターとジャム、Weet-Bixと牛乳、ジュースと紅茶。全部しっかり平らげる。

入院中の朝食

日本人スタッフさんが2人(そのうち一人は看護師さん)、声をかけてくれる。ありがたい。

部屋の中にトイレ付きのバスルームがあり、そこでシャワーを浴びる。シャワーカーテンが短くて、床を水浸しにしてしまい、看護師さんに「Oh my god, what a mess!!」と言われる。トホホ、ごめんなさい。

パナドル効果が切れてくると、高熱と背中の痛みがぶり返す。薬を取り過ぎるのが何となく嫌で、かなり痛くなるまでパナドルを取りたくない。この変な頑固さは何だろう。自分の力で直そうとしてる?自然派志向?もう抗生物質をたっぷり打っているのに、小手先の我慢をするなんて滑稽だ。看護師さんにも、無理はしないでと言われる。

超音波検査と空腹

昼食は、あらかじめオーダーをしていた、ナポレターナソース・ミートボールにパスタと茹で野菜、クリーミーコーンスープ、デザートはクリームブリュレ。ジュースと紅茶。メインは15種類くらいある中から選べる。すごく楽しみにしていたのに、正午に超音波の検査があり、検査が終わってから食べるように言われる。ランチを部屋に残したまま、ベッドごと検査室へ押されていく私。誰や正午にアポ入れたの!!

超音波検査は30分ほどで終わり、検査室の外の待機場所で、部屋に戻してもらうのを待つ。スタッフさんも昼休憩中なのか、かなり待たされる。空腹が辛い。新たな患者さんを運んできたスタッフさんをすかさず捕まえる。
「すみません、もう検査は終わってるので、部屋に返してもらえますか?朝から何も食べてなくてお腹がペコペコで。」と言うと、スタッフさんに笑われる。あんまり食欲旺盛な入院患者はいないのかな。だって私のナポレターナソースが待ってるんだもんね。

食っちゃ寝

無事部屋に帰ったのが、午後2時ごろ。意気揚々とランチを食べる。コーンスープはまずまずの美味しさだったけど、メインはやはり病院食、若干残念な感じではあった。ミートボールは怪しげな灰色だったし、野菜は冷凍物。それでも8割方平らげる。
昼食時に不在だったために、夕食のオーダーが出来なかったことが悔やまれる。何が来るんだろう。

食べているとき以外は、ずっと寝ている。キンドルもスマホもあるけれど、何も読みたくないし、観たくもない。全身がだるくて、色々な雑音をシャットアウトしたい感じ。

夕方、夫と娘が着替えなどを持って来てくれる。ランチがあまり美味しくなかったと聞き、息子が作ったカレーも持って来てくれた。バーモントの辛口。辛いの大丈夫か病人。美味しくいただく。

超音波検査の結果とCTスキャン

担当医師がやって来て、超音波検査の結果、両方の腎臓にインフェクション(感染)が確認されたとのこと。その上、左の腎臓にPUS(膿)のようなものが見られ、詳しく調べるために、CTスキャンが必要だと言われる。

夕方にCTスキャンをする。初めての経験。大きな輪っか状の機械に入っていく。大きな音に不安になる。ちょっと怖くて、目をつぶったまま時が過ぎるのを待つ。アラフィフになっても、相変わらずチキン。

夕食は、チキンパルメジャーノと冷凍野菜。

病院の夜

病室は結構寒い。家の毛布を一枚持って来ていて良かった。それでも寒くて、ジッパー付きの厚いトレーナーを着たり脱いだりしている。

昼間も寝てばかりなので、夜の睡眠も浅い。その上、夜中に数回、血圧と体温検査で起こされる。だから睡眠はいつもとぎれとぎれだ。

夜中の体温検査で38度超えの高熱だったので、当直の医師が来てくれる。念のため採血して、血液が感染していないか調べるとのこと。

DAY 3

朝のルティーン

朝食は同じメニュー。食欲がなく、Weet-Bixだけ食べる。吐き気がするので、今日のランチとディナーは軽いものと思い、サンドイッチとスープをオーダーした。

今朝のシャワーは、前日の失敗から学び、水しぶきが飛ばないよう細心の注意を払う。ペーパータオルで髪の毛を拾ったりして、名誉挽回を狙う。

医師から説明があり、CTスキャンの結果、膿と思われたものは無害なCYSTS(嚢胞)で、特に治療を要しないとのこと。血液検査の結果も良好で、血液への感染は見られなかった。その結果、治療は引き続き毎日の抗生物質投与のみ、と決まった。こうなると、本日中に退院できる可能性もあるらしい。

忙しい夫

朝早く来てくれるはずの夫が、なかなか現れない。電話すると、まだ家で洗濯と掃除中と言う。体調が悪い私は、つい不機嫌にわがままを言いそうになるが(早よ果物持って見舞いに来んかい!)そこはぐっと我慢。夫だって大変だ。家事や子供の世話、仕事、そして私の見舞い。病気になると余裕が無くなって、つい家族に当たりたくなるけど、そこをぐっと我慢した自分を褒めてあげたい。(てか夫を褒めろよ)

徐々に回復

この日の体温は、37度前後で安定しており、背中の痛みもかなり軽減してきた。スマホで音楽を聴いたり、VOICYやYOUTUBEを聞く余力も出てきた。軽いエッセー本も読めた。着実に回復している。退院なるか。

果たして、主任医師だというダンディーなインド系医師と、担当の若手医師がやって来た。今日の抗生物質投与の後に退院して、明日からは自宅に看護師が訪問してくれる、Hospital in the Home(HITH)というプログラムに引き継いでくれるとのこと。やったー!

退院

手続きが完了し、担当医師に「You are good to go.」と言われる。夫の迎えを待つ間、荷造りなど退院の準備。使用したシーツなども綺麗にたたんで、飛ぶ鳥後濁さず(ついやってしまう)。

看護師さんにお礼を言う。本当に至れり尽くせりだった。私は寝転がっていただけ。ありがたい。

なお、素晴らしいMEDICARE(オーストラリアの国民皆保険)のおかげで、支払いは一切無し。税金は高いけど。それでも、ありがたや~。

その後

退院直後の2日間は、看護師さんが自宅まで来て、抗生物質の注射を打ってくれた。その後は経口薬に移行し、一週間も経つとほぼ全快した。

病気で入院するのは、人生初めてのことでしたが、幸い大事に至らず、短い入院で済んで本当に良かったです。
健康には、ますます気を付けないといけませんね。








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