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常識に食べさせられていた時代

物の断捨離を進め、暮らしをシンプルにしていくミニマリストが流行り始めててから時は流れ、もはやミニマリストは珍しい人種ではなくなった昨今、必要十分な暮らしという考え方が浸透するにつれて、「ではなぜ過去には不要な物に溢れた暮らし送っていた時代があったのだろうか」と考えることになる。

私たちは社会の大きな何者かに物をじゃんじゃんと買わされる時代を生きてきた。それが個々人にとって本当に必要か必要でないかを、個々人に考えさせる隙を与えず、ただひたすらに売りまくり買わせまくる時代だった。

当然のことながら、家の中に物は溢れ、社会にも物が溢れ、ぎゅうぎゅうに詰まって息苦しく腫れ上がった風船が、どこかに穴が開き始めて、プシュウとしぼみ始め、ある時からそれは加速度的に収縮を始めた。それが「断捨離ブーム」の一面な気がしている。

しかし、物の消費はまだいい。買ったら捨てない限り自分の周りに増え続け、物質として残ってしまうため、いつかその事実に向き合うことが可能だ。

タチが悪いのは、買った側から物理的に消えてしまう物である。
それが「食料」という物質だ。
食べたら消えてしまう。だから食料を買いすぎたのか、つまり食べすぎたのか、振り返る指標が見えづらくなる。食料が体に贅肉としてついてしまって初めて「食べすぎた」と気がつくのだが、果たしてそれが一体どれくらい食べすぎなのかは個人差も大きだろうし、何よりも気がついた時に食べてしまった食料を物理的な量として確認できないのが、困難を助長する原因なように思えている。

もしもすでに食べてしまった余分な食料を、目の前の全て山積みにして再現し、「ほら、これを余分に食べたのであなたは体重が3キロ増えたんですよ」と確認することができれば、「全然食べてないのにどうして太っちゃったのかしら」なんてトンチンカンな発言は出るはずもなく、誰もが納得するのではないだろうか。

物のミニマリストに慣れてきたら、今度は食料のミニマリスト化に慣れていく時が来るような気がしている。物価もどんどん上がる。給料はさほど上がらない。日本円は恐ろしく弱く、これから早急に回復するなんて楽観的な希望は持てないし、高い税金を必死に納めているその国が何かあった時に一人一人を助けてくれる可能性はほぼ無いに等しいのが現状だ。
ならば、社会状況に文句をいう前に、現状の中でなんとか生き残る方法を工夫して、自ら探して行かねばならない。

前時代的な食べ方は、栄養士が推奨することを鵜呑みにしてたくさんの食材を毎日たっぷり摂取しながら、もちろんそれだと余計な栄養までとってしまいがちになるので適度な運動をしましょうとさもよさそうな雰囲気で推奨されスポーツジムや運動系のクラスにお金を払う。対価として筋肉がついてカロリーが燃焼され、たくさん食べても太らない健康的な体を手に入れられますよ、という話はよく目にするありふれたストーリー展開だ。

しかし、どこかおかしいとは思わないだろうか。
食べることにもお金を使って、さらにそれを消費するのにもお金を使っているのだ。それは騙されているとしか思えない程、奇妙な逃れられない輪に嵌められてしまった様子でしかない。

これからの時代の、お金をなるべく使わないで生き残る方法は、もっと簡単なはずだ。
なるべく食べない。
これだけ。

どうしても、食べることが大好きで食べるために生きているという方は、別の方法でご自身に合った方法をぜひ探し求めていただきたいのだが、私の場合は、これまですっかり時代に食べさせられてきたんだなと気がついてしまったので、これからはもう、そんな社会に「食え食え」と踊らされてお金を無駄に使わせれてしまうような生き方はやめたいなと思った。

全く食べるな、と言っているわけではない。
これまで当たり前と喧伝されてきた食生活は、もしかしたら食べ過ぎかもしれないと一度疑ってみることが重要、という話だ。

お酒も好きじゃないからパーティーにお呼ばれした時の乾杯程度にしか飲まないし、タバコも吸わないので、口から摂取するものの費用としては日常のご飯を減らすのみ。
長生きもしたくないから、そんなことしてたら病気になりますよとか早死にしますよと言われても痛くも痒くもない。むしろ確実に早死にできる節約方法がそれなら、率先して実践してみたいものだ。

アフロ記者の稲垣えみ子さんが自炊について語っているネット上の記事があちこちに散見されるのだが、これに出会うたびに深くうなづいてしまう。
稲垣さんは冷蔵庫を持たない生活をされているが、私はまだそこまでには至っていない。我が家には炊飯器も電子レンジも無いが(ついでにもちろんテレビもない)、オーブントースターと冷蔵庫は鎮座している。もしも冷蔵庫が家になかったら、本当に生活感が消せるだろうなと思うのだが、湘南の強烈な湿度によるカビが怖くて全ての開封済みの食材は冷蔵庫内保管にする私はいまだ達成できず。

稲垣さんの生き方を読んでいると、本当に私たちは社会の大きな何かによってお金を使わされすぎているなと改めて認識することが多い。
私もこれからの新しい時代に適した生き方をいち早く身につけなければならない。
過去の常識にとらわれない新しい節約で、社会にお金を強制搾取されない生き方を掴んでいきたい。

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