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はかない男2〜募るという字は墓という字に似ている〜

考えれば考えるほどやっぱり墓は欲しい。だって手を合わせたいもん。手を合わせて祈ったり、「あの時、うざいって思ってごめんね」とか、そういうこと謝りたいし、いいことがあったら報告もしたい。NHKで島津亜矢さんに会ったよとか(父が好きだった)。今のところ、わたしたち家族の祈りの対象はあの近所のおじいさんだけだが、そのうち現れなくなるだろう。そうなったら、一体誰に手を合わせたらいいのか。

仏壇は妹の家にある。父がかわいがっていた猫Bがお供えの水を毎日飲んでいる(その水はきれいだと知っているのだ)。仏壇じゃなくて、お墓。やっぱりここに来たら会えるよっていう開かれた場所がいるんじゃないかと日を追うごとに思いは募る。

By the way,募るという字と墓という字は似ている。このごろは墓のことばかり考えているからこういう形の字を見るとつい墓と読んでしまう。

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       ↑かわいがっていた猫B

墓石を買うなら、三回忌の法要には間に合わせたい。昨年2月、一周忌の法要を終えたあと、よっしゃ今年は墓石を買うために働こう、わいがキャッシュで買ったるわーい!と、どてらい男(やつ)風味で密かに誓いを立てていたが、コロナのせいで思うようには働けなかった。悔しい。もう、その辺の石を彫刻刀で彫って手作りしようかな。DIY墓。なんつって。

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     ↑娘Bとひ孫C,D 父の誕生日

もやもやしながら年が明けて2021年。そろそろ三回忌の準備をしなくてはならない。もうこれ以上は引っ張れない。妹に「買うね」と告げる。キャッシュでは無理だが、ローンでならなんとかなるだろう。父の命日は2月19日、それまでに買って設置をしてもらわなければ。タイムリミットは迫る。

大どんでん返しだったのは母である。墓を買おうと思うと言ったら「わたしもそこに入ろうかな」と言ったのだ。え、自分の墓所があるのに?

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      ↑ 趣味は切り絵(どや顔)

夫婦でもおなじ墓に入りたくないという人は多いという。墓所さえも近くは嫌だと言った母が「だって死んだら関係ないし」とか言う。母は早くも色即是空の境地なのか。

父の墓を建てて、その上母のまで建てたらわたしが経済的にきついのを察して気の毒に思ってくれたのか。または、墓がいくつもあっては、わたしや妹亡き後の墓守をすることになるだろう甥っ子の航平が大変だと気を遣ってくれたんだろうか。

よし、こうなったらみんなで入ろう。入りたい者みんな集まれーと決めて、二つ買った墓所の一つは松江市に返却することに決めた。みんなの墓を建てよう。押忍!

正月に降った雪が溶けるやいなや(as soon as)、妹と石屋さんに行って、展示品と書いてあるこじんまりとした洋墓に決める。この買い物の詳細はまた次回書くことにする。

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     ↑レーザーディスクとか

さて残る問題は墓に彫る文字。両親は離婚していて、母は旧姓だし、妹もわたしも結婚時の名字だから、今のところ墓に入る予定の4人はとりあえず名字が全部違う。「○○家」というタイトル(というのか)は使えない。連名の墓って聞いたことないし。

名字じゃなくて「心」とか、「絆」とか、「想」とか、漢字一文字を入れるのも最近は多いそうだ。「最新流行」が大好きな父も賛成だろう。墓だからといって暗いのは嫌だな。しんみりしたのじゃなくて楽しそうなのがいいなあ、みんなの墓だから。2日ほど家族のグループラインで意見を募って「楽」に決めた。わたしにとっては音楽の「楽」である。母は「わー、楽(らく)そうでいいねえ」と言った。妹は「なんか楽しそうで早く入りたくなるね」と言った。(「はかない男3」につづく)


一週間に一度くらいの頻度で記事をアップできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。