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倉敷という街で一緒に暮らしを重ねたいと思う出会いたちが、とてもあたたかくて愛おしいものばかりであることは確かで|2024.雨水・霞始靆

■ 霞始靆(かすみはじめてたなびく)

岡山は「晴れの国」と聞いていたのに、こと雨水に入ってからは連日のようにお空がグズグズとしている。


・聴覚障がいのあるわたしは、三半規管がヨワヨワです

聴覚障がいがあることも相まって、わたしはとかく気圧の変動に弱い。あまりにもお天気に体調が左右されるものだから大学病院で検査をしてもらったところ、耳の奥にある三半規管という体の平衡感覚をつかさどる部分がうまく働いていないらしい。

そんなこともあって、子どもの頃は体育の平均台はドクターストップ。小さい頃はよく体のバランスを崩してはコケていた。まぁ、これは大人になった今でもヨワヨワなので、こうして雨が続く日々は調子があがらないし、暗闇では何でもないところでつまづいて周りを心配させてしまう。

でも、高いところは大好き。

・車はおろか自動車の運転免許も持っていないので

そうそう。わたしは自動車の運転免許を持っていないので、倉敷市街地の移動は基本的に自転車を使っている。自転車に乗るのは大学生以来。

学生時代の友人や家族に「自転車かったの!」と自慢をするたびに「なんでそんな危ないことを!」と驚かれる。ええ。大学時代のわたしは、車道と歩道の段差を自転車でうまく上がれなくて顎からこけたり、車一台走っていない住宅街で自転車ごと電柱に正面衝突したりしたことが、ある。

プライベートならともかく、ここ最近は地域おこし協力隊の活動として自転車に乗る機会がぐっと増えたので、事故なんて起こすわけにいかない。というわけで、仕事中は時間に余裕を持って家を出発して、安全運転を心がけている。今のところ、無事故で過ごせている2カ月とちょっと。

それでも、安心安全に体調やお天気が芳しくない日は歩いたり公共交通機関を使ったり、それから車に乗せてくれる優しい人たちに甘えながら過ごしていて。

星の光の澄みわたり @hh_sumiwatari

もちろん、誰かに頼ることが前提になってしまってはいけないけれども、倉敷という地に移住してきて、少しずつ頼りたい人が増えていくというのはなんだかとても幸せだなぁと思う。

・移住3ヶ月目、名前を呼んでもらえるありがたみをひしひしと

ありがたいことに、所属しているウェブメディア倉敷とことこの取材先のほとんどが、周りの方々からの紹介で。

「真梨子ちゃんは、きっとおもしろいと感じてくれるイベントだよ」と誘ってもらえること。取材先で「真梨子さんの発信を見てこのイベントに参加しました」という参加者さんや「いつも活動頑張っているねぇ」と声をかけてくれる主催者さんたち、みんなから名前を呼んでもらえること。

くらしきボランティア大会にて

そしてプライベートでも

ちょっと落ち込んだ日に一緒にご飯を食べてくれる人、心ときめくイベントに一緒に行きたい人、何でもない日に同じ場で仕事をしてくれる人……

協力隊のみんなとご飯に行った日

一緒に過ごしたい誰かが、増えていくこと。それらを嚙み締めながら「あぁ、わたしは倉敷という街に根を張り始めたんだな」なんてしみじみ実感する。

・それじゃあなんで、倉敷という街をこんなにも好きになり始めているのだろうと思うとやっぱり

倉敷には、歴史情緒あふれる美観地区や下津井の廻船問屋に古いお屋敷、児島の瀬戸内の凪や、水島のきれいな工場夜景があって。

倉敷美観地区:倉敷川
鷲羽山ビジターセンターより
鷲羽山東屋展望台より

下津井の友人からもらった生わかめで作った今年最初のわかめご飯や

友人が「買いすぎてしまった」と笑いながらおすそ分けしてくれた連島れんこんで作った炒め物も

わたしを幸せにしてくれる。

日常的にそれらにアクセスできることは、もちろん「暮らし」として魅力なのかもしれない。

でも、でも、転勤族育ちのわたしは、ふと思う。

観光地の景色や特産物に違いはあれど、観光地にふらっと行ける街は全国どこにでもあるし、その土地ごとにおいしい食材はあるもので。

photo @neko33umeki

それじゃあなんで、倉敷という街をこんなにも好きになり始めているのだろうと思うとやっぱり、取材先やプライベートで仲良くしてくれている人たちの顔が思い浮かぶ。そして、「この人たちがいるトコロ」が好きなんだよなぁと気付いては、頬が緩んでしまう。

・この人たちがいる倉敷という街を

そういえば。

12月に倉敷アイビースクエアで開催されたクリスマスマーケットでは、取材先でお世話になった人たちが営むお店を訪ねて歩いたし

1月は、倉敷移住を後押ししてくれた人たちの営むホテルで手話講座をしたし

ここ最近は「真梨子ちゃんにこの景色を見せたい!」と言ってくれる人に連れられて笠岡諸島の六島や

photo @yuuki_locaiguides

水島の工場夜景を見に行ったり。

この夜景を見に行った日は、直前まで大雨が降っていて「今日は、もう諦めるしかないかしら」と弱気になりながら夜ご飯を食べてお店を出ると雨がやんでいて。

一か八かで向かった山の上の展望台は、ちょうど霞がかかっていて。雨上がりの夜にしか見られない幻想的な風景に、寒さも忘れてじっと心を奪われた。

これは、車どころか運転免許を持っていないわたしには到底自力ではたどり着けなかった景色。連れてきてくれる人がいること、この景色を見せたいと思ってくれる人がいること、そんな倉敷に移住してこられたこと。

命がけでも高いところにのぼりたい。たのしい。

・共に暮らしを営んでいきたい人たちがいるこの街で、いつか定住できたらいいな……なんて野望を抱いたり

わたしはきっと、「どこで暮らすか」よりも「誰と暮らすか」を重視するタイプの人間で、その一緒に暮らしたい人の好きな景色や好きな食べ物のある街を、どんどん好きになっていくのだろうな……なんてことをふと。

東北に12年、九州に6年、また東北に4年と、近畿に2年、そして関東で5年半を過ごして、中国地方は岡山県倉敷市にやってきた。まだ「定住」というワードはわたしにとって身近なものではないけれども、わたしはいつだって「定住」する生活に憧れている。

photo @neko33umeki

そんな生活が、この倉敷で叶うのだろうか。それはまだ分からない。でも、倉敷という街で一緒に暮らしを重ねたいと思う人とたくさん出会えていること、そのどれもがとてもあたたかくて愛おしいものばかりであることは確かで。

photo @neko33umeki

【雨水】降る雪が雨へと変わり、雪解けが始まる頃。
初侯:土脉潤起(つちのしょううるおいおこる) 2月19日~2月23日
次侯:霞始靆(かすみはじめてたなびく)2月24日~2月28日

末侯:草木萠動(そうもくめばえいずる)2月29日~3月4日

茶道手帳2024

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