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「最期の数日、体の中の会話が こんなだったらいいな」続編 旅立ちのとき

この物語は、こちらの続編です。
先にこちらからお読みいただけたら
嬉しいです。

https://note.com/marigoldpure/n/nb059be092cd5

腸蔵 「なんか、外から、泣いてる声が聞こえるね。」
腎子 「聴き慣れた声たちね。
    泣いてる声だけど、優しい声だわ。。」
胃乃美「本当ね。愛されていたのね、あるじ。
    私たちもこの声に送られながら
    終わることができること、嬉しいわね。」
肝助 「あるじ、ありがとう。そして、みんな、
    ありがとう。みんなが大事だったよ。
    いっぱい助けてくれてありがとう。
    楽しかった。」
みんな「ありがとう、あるじ。大好きだったよ。
    ありがとうみんな。愛してる。さようなら。」

。。。。。

肌子  なんだか、愛おしい臓器さんたち。
    みんな無事に終えたのね。
肌実  静かになったもの。
    ここから最後を締めくくるのは
    私たちね。
肌代  臓器さんたち、気がついていたかしら。
    この最期の時を私たちがずっと
    抱きしめて見守ってきたこと。
肌子  どうかな。わからなかったかもしれないわね。笑
肌夫  多分な!笑 俺たちと比べたら、あいつら結構鈍感だから!
肌実  笑、そうね!可愛い可愛い臓器さん達だったわ。
    80年、あ、もっとね。
    胎内で始まった時からだから。
    ずっとずっと、私たちが、抱きしめて、守ってきた。
肌助  寒い時は冷えないように、暑い時はのぼせないように
    臓器さん達を守るための調節、大変だったぜ。
肌代  力を合わせてがんばったわね!
    私たちは本当に、いろいろなことがよく分かったわ。
    でも、なかなかあるじには届かなくて
    心配したこともいっぱいあるわね。
肌子  確かに私たちは優秀だった!笑
    だって、別の肌に触れただけで、
    優しい想いのこもった握手なのか
    悪意を秘めた握手なのか、すぐ分かったり。
肌夫  いや〜、あるじが20歳くらいの時さ、
    あん時は本当に心配したぜ。
    明らかに騙されてるって握手だったから
    ダメだダメだって、サインを送ったのに
    あるじには届かなくてさ。
肌実  ああ、あの時ね。
    あるじは純粋だったから、信じてしまったわね。
    そして一生懸命だった。でも空回りしたり
    もっと悪い方向へことが転がって。
肌助  気がついたらさ、尖った硬くて冷たいもので
    僕たちに傷をつけていたね。焦ったね。
肌代  そうね、、痛みというより、心配だった。
    傷の数ほどあるじの心も傷ついて
    でも、傷の数ほど、あるじは乗り越えてきたわ。
    本当に愛おしかった。
肌子  「自分にはもう何もない」って、泣いていたりしたけど
    あの時だって私たちが、精一杯あたたかく
    ハグし続けていたこと
    あるじを包み、あるじを守ってきたことを
    少しでも感じてくれていたらいいな。
肌実  そうね。
    心配もしたけど、楽しかったこと、キュンキュンしたこと
    それもいっぱいあったわ。
肌夫  あ〜あったあった、俺さ、あん時すごく幸せだったぜ。
    あるじが初めて愛する人を抱きしめた時!
    俺たちからなんか出てきたよな!光みたいなやつ!
    いや〜、俺たちにこんな力があるなんてってびっくりしたぜ。
    あの光はすごかった!!
肌代  そうそう!あの日から、私たちすごく愛おしい気持ちに
    なった時、光を出せるようになったのよね!!
    それがもう、気持ちよくて気持ちよくて!!笑
肌助  そうしたらさ、相手からも光届くようになったじゃん。
    その光に包まれたらまた、気持ちよくて気持ちよくて!!笑
肌実  懐かしいわ。。
    ねえ。私たち最後に、思いっきり力を絞って、
    あの光出してみない?
肌夫  かなり力が落ちてきているけど、できるだろうか。。
肌子  できなくてもいいから、やってみましょうよ。
    今、届いている懐かしい声の人たち、
    優しく泣いてくれている娘さんや、
    ずっと手を握ってくれているお孫さんや
    近くにいてくれる人たちに
    小さな光を最後にお渡しできたら素敵。
肌代  やってみましょう!もうあまり時間がないわ。
    力を合わせるための想いの言葉は!?

肌全員 ありがとう!!
    笑
肌子  想いの言葉がみんな一緒なんて、私たちいいチーム。
    さすがね!笑
肌実  みんな、本当にありがとう。共にあるじを包み
    臓器さん達を守り、抱きしめて生きてこれたこと
    幸せだった。
肌助  あ!見て!すごく小さくて弱いけど、光が出てるよ!!
    僕たち、光を出せてるよ!!
肌夫  本当だ。。。気持ちいいなあ。。。安らかだなあ。。。
肌代  ねえ、ねえ、みんな見えてる?
    娘さんからも、お孫さんからも、光が届いてる!!
    私たち、光に今、包まれているわ!!
肌子  本当だわ!!
    なんて気持ちいいんでしょう。なんという安らぎ。
    

あるじ みんな。

肌実  え?あの声は??

あるじ みんな、聴こえてるかな?

臓器さん達  聴こえてるよ〜!!

肌子  やっぱりあるじだ!!
    そして、臓器さん達!!

あるじ 臓器さん達と、君たちを待っていたんだよ。
    最期を締めくくってくれてありがとう。
    優しい光をありがとう。
    今日まで、共に生きてくれて、みんな
    本当にありがとう。

    さあ、上を見てごらん。

臓器さん達  わあ。。。。

肌助  綺麗だあ。。。
    あんなに降り注いで来る美しい光を見たことがない。。

あるじ これから一緒に還る場所だよ。
    共にいこう!
    軽やかだろ!私たちも同じ光になっているから。
    今泣いてくれている大切な人たちと、この世で共に
    生きることができないのは寂しいけれど
    あの場所から光を送り続けることができる!
    違う姿で、守り続けることができる!

みんな 思い出話しでもしながら、一緒に旅立とう!!


*皮膚の深い領域にある線維芽細胞は生命力が強く、心肺停止後
 数時間にわたって生存することが確認されています
*これは一つの物語として読んでいただけたら嬉しいです
*一人で旅立つことを否定したりする意図は全くないです

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