「誕生の数時間の子宮と胎盤とへその緒のお話」
子宮さん:今日は私にとって嬉しくもあり
心からさびしくもある日。
胎ばんさん:子宮さん、本当にお世話になりました。
いよいよこの日を迎えたのね。
へその緒さん:本当に愛おしい赤ちゃん。
あれからもう280日もの時間を
過ごしたんだね。
胎ばんさん:この子と一緒に始まって
私たちもずいぶん育ったわ。笑
へその緒さん:胎盤さん、ずいぶん大きくなって!
胎ばんさん:あら、臍の緒さんも、ずいぶんお長くなって!笑
この子に育ちのエネルギーと、栄養と、酸素を送って
ここまで大きくなってくれたから、もう安心。
へその緒さん:そうだね。この子はこれから生きる。
だけど私たちの命は、あまりにも短い。
わかってるけど、やっぱりさみしいな。
胎ばんさん:臍の緒さん、私たちには最後に大きな仕事が
残ってるわね!
子宮さん:そう!これからの陣痛に赤ちゃんが絶えられるように
最後の酸素供給をお願いします。
胎ばんさん:陣痛の間は、酸素を送りにくくなるのよね?
子宮さん:そうなの。ほとんど酸素供給ができない状態になるから
陣痛と陣痛の間の私がゆるんでいるときに
しっかり送ってあげて欲しいの!
へその緒さん:わかったよ。最後の力を出して無事に外の世界に
送り出せるように胎ばんさんと力を合わせる!
子宮さん:さあ、始めるわよ。その前に、この子に最後のハグを
しましょう。ここまでよく、生きて育ってくれた。
胎ばんさん:やわらかくて、温かくて、なんて愛おしいんでしょう。
あなたを守れたことを心から幸せに思う。
へその緒さん:まだ小さい頃は、スイスイ泳いでくるくる回って。
右回転が好きだったね。ほらみて!まだ少ない髪の毛なのに
ちゃんとつむじが右回転してる!笑
子宮さん:あなたをずっと抱かせてもらえて、私も幸せだったよ。
健やかに、幸せに、祝福を受けて、生きていけますように。
子宮さん、胎ばんさん、へその緒さん:(赤ちゃんをハグ)
子宮さん:では、この子を外の世界へ、新しい世界へ、送り出しましょう!
・・・・・・・・・・・・・
胎ばんさん:赤ちゃんの産声が聞こえる。。
よかった、無事に送り出せたのね、私たち。
へその緒さん:ちゃんと、呼吸できてるよ!肺から水を出して
ちゃんと酸素を吸えてる!
よかった、よかった、もう自分で呼吸ができるよ!
胎ばんさん:私たちの役目は終わったわね。
無事に終わったわね。
へその緒さん:そうだね。感無量だね。そして、その時が、来たんだね。
胎ばんさん:もう始まってるわね。体が少しずつ止まっていくのがわかる。
へその緒さん:私も。拍動が弱まってきたよ。もうすぐ止まりそうだ。
胎ばんさん:私たちが終わることで、この子がはじまるのよ。
死はこうやって、生きることをはじめさせる。
へその緒さん:私たちの死は、この子の生につながる
贈りものだね。
子宮さん:そうよ。そして私もまた、胎ばんさんとへその緒さんを
送り出すことで、次の命を宿せるのよ。
とてもとてもさみしいけれど、これまでもずっと
死が生きることを支えてきたの。
胎ばんさん:子宮さん、ありがとう。へその緒さん、ありがとう。
私たち、いいチームだったわね。
へその緒さん:あ!いま私と赤ちゃんが離れた感覚があった。
赤ちゃんのなき声も、なんか、安心しているような声に
聞こえない?
子宮さん:お母さんの腕にしっかりと抱かれたのね。
あら、もうおっぱいに口をあててる!
そのことで、赤ちゃんが、胎ばんさんとへその緒さんを
外の世界に送り出すホルモンをお母さんに出させるのよ。
胎ばんさん:そうなのね。私たちは、あの子の力で無事に終えられるのね。
へその緒さん:そうやって、お母さんの生きるを支えるんだね。
私たちが外に出ることで、お母さんが「生きる」。
子宮さん:私たちはいつもこうやって繋がりあっている。
奇跡のような自然の摂理なの。
胎ばんさん:もう子宮さんにくっついているのが難しくなってきたわ。
子宮さん、ありがとう。私たちを送り出してね。
子宮さん:私ももう、胎ばんさんを抱いているのが難しくなってきたわ。
そっとそっと離すから。
本当にありがとう。
へその緒さん:子宮さん、胎ばんさん、本当にありがとう。
・・・・・・・・・・・・
助産師さん:お母さん、これが胎ばんですよ。そしてへその緒。
お母さん:ああ、これが。
触れてもいいですか?
助産師さん:もちろんです。ぜひ触れてみて!
お母さん:胎ばんさん、へその緒さん。
お腹の中で、私の赤ちゃんを育て、守ってくれて
本当にありがとう。
お疲れさまでした。
この子を、大切に、愛おしく、育てていきますね。
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