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おもしろいと思ったらベストセラー小説でした。

本の断捨離をしたという友人から段ボールいっぱいの文庫本を譲り受けてからなかなか手を付けられずにいたのにようやく読んでみようと思えたのは資格試験が終わったから。それからひと月、私はタイムマシンで江戸時代を生きている。その本は『あきない世伝 金と銀』

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幼くして呉服店に奉公に出た幸という主人公の成長記を堪能している。いる、というのも今12巻まで出ていて完結はしていないから。文章は方言や古典的な言い回し、また漢文もたまに出てきて決して読み易いわけではないのにストーリーの面白さがそれを上回っていくらでも読めてしまう魅力がある。大学生の娘も春休みの時間を使って楽しく読み進めているよう。

私のように時代小説にはほとんど馴染みがない者でも、丁寧な情景描写や人物の描写にぐんぐん引き込まれて頭の中に映像が出来上がる。当時の食べ物がどれだけ粗食だったか、電話のない時代はどこへでも誰かが出向いて伝えないといけなかったんだな、とか、昔の人がどれほどお祭りを楽しみにし、神仏を大事にしていたかなど、新鮮に感じる。

大坂から江戸まで、徒歩で移動するしかないのと新幹線で2時間余りで着いてしまうのと、あるいは世界とリアルタイムで顔を見ながら通話できるのと文明の利器は景色をすっかり変えたことがわかる。

私が幼少期を過ごした昭和はもしかしたら令和より江戸のほうが生活が近かったかもしれないと思う面もある。それほどインターネットは人間の生活を変えた。便利なことは風情や風流と反比例する面もある。反物の色、染料のこと、養蚕や織物、鳥の鳴き声、季節の移り変わり…言葉が美しい。外来語が一つもないことも発見だった。

ビジネスの基本は江戸時代も令和も変わらない。登場人物が皆、生き生きと描かれて置かれた場所でしっかり生きているさまに励まされもする。主人公が知恵をつけて次々と店の発展のためにアイデアをひねり出し、皆を束ねる様子にはだれもが感服し、きっと応援してしまうだろう。

譲り受けた9巻でおしまいと思っていたらあれ?12巻まで出てる!途中でやめるなんて無理な相談。急いで書店で買い求めて本日読了した。こんなに夢中になれる本を友人からもらったと話すと「本のセンスがいいね~」などと娘が生意気なことを言う。この本を書くためにどれほど作者が念入りに調べ事をしているか、わかっているのかしらん。などと思いながら日経新聞を見ると横浜の書店の売れ行きランキングの一位に輝いていた。皆様良くご存じなこと!

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本が売れない時代と言われて久しいけれどおもしろい本はきちんと読者をつかんでいた。

今日も良い週末を過ごすことができました。皆様もゆっくりお休みください。

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