なりいち 

本好きの「読書note」記録がメインです。本の感想にかこつけて、こころの中身をさらけだ…

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本好きの「読書note」記録がメインです。本の感想にかこつけて、こころの中身をさらけだす。ひとり語り阿呆の読書日記|2024.5 小説はじめました。

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  • 読書ノート

    頭が動いたままに、心が感じたままに残した記録となっています。 読書の感想に正解はなくていいと思っています。 どういう人生だったかで、捉えかたはたくさんあっていい。

最近の記事

掌編小説『手をつなぐ』

 小学校の校庭で、好きな人から逃げている。  全力で走っても、鈴木くんからは逃げきれない。一番に捕まれば、手をつなげるチャンスなのに、いまはダメ。 「もう、にげられないぞ」  そんな嬉しそうに言わないで。  少しづつ縮む距離のせいもあって、心臓が破裂しそう。  よれよれっと走っている親友が近くにいたので助けを求める。 「よ、ようこ、おねがい、たす……」  一瞬、いたずらっぽく笑うと、颯爽と走り去っていく。  あいつ。私の気持ちと、手のひら事情を知っていながら、逃げやがった。

    • エッセイ『古本を味わえるのは紙だけ』

      お気に入りの本は、大切に読みたい。本棚に並んでいる本はきれいな状態で保管したい。売るにしても、次の持ち主にもきれいな状態で手にとってもらいたい。 本を雑にあつかうことは、自分にはどうしてもできない。 だからこそ、本を雑にあつかえる人に憧れる。 古本屋に並んでいる汚い本をみているとワクワクする。 ベタベタ、ぬるぬるするカバー。 日焼けして、色が蒸発したカバー。 ダメージ加工がされたカバー。 千切れかけの帯。 ページがワープする折り目。 一見きれいなのに、なぜか臭い風が吹く。

      • 〈読書記録〉短歌と散文のマリアージュ

        くどうれいん × 東直子 2人の歌人が、短歌と散文でつなぐ、みずみずしい歌物語。 ◇ 本の中身 29歳の「みつき」は、この先の人生を思うと、途方もない気持ちになる。こちらが、くどうれいんパート(黒文字)。 謎の存在「ミメイ」は、おなじ街を漂よっている。こちらが、東直子パート(青文字)。 短歌の背景を語るように散文が綴られているので、短歌がよくわからなくても楽しめる。 みつきの物語は、たまに現れる元カレ「ハギノ」の言葉が刺さり、マッチングアプリで出会って結婚することにな

        • 〈読書記録〉欲望のウロボロス

          むせかえるほど濃厚な匂いが、ただよう。 場所、モノ、ひと。匂いは記憶に縛られて、傷として刻まれる。手放したい感情を刺激する。 ◇ 本の中身 画家の清秀は、父の秘書である間宮から呼び出される。電話では話せない内容であることから、絶縁していた天才料理人の父・康則のマンションへと赴く。 そこには父の遺体と、裸の少女の姿があった。少女の名前は蓮子。8歳のときから11年間マンションに監禁されていた。 この事件は世間を騒がせ、日常は壊された。 被害にあった19歳の蓮子の精神は、誘

        掌編小説『手をつなぐ』

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        • 読書ノート
          43本

        記事

          【読書記録】型がわかれば「おもしろい小説」は書ける

          小説を書くことは、選ばれた、特別な才能がなければできないことだと、勝手に思っていました。YouTubeで著者の動画をみて、本書を読むまでは。 ◇ 本の中身 作品の魅力を最大限、引き出してくれる「上達のポイント」をステップ毎に、丁寧に、わかりやすい文章で教えてくれます。 プログラミングとおなじで、作り方を知っていなければ、おもしろい小説は書けない。そんな当たり前のことなのに、いわれるまで考えもしませんでした。自分には書けないと、はなから諦めていれば考えることもありません。

          【読書記録】型がわかれば「おもしろい小説」は書ける

          【読書記録】give & take のマナーって難しい

          100分間、夢中で読める中編小説『ハンドレッド ミニッツ ノヴェラ』シリーズとなります。 ポトラッチ(potlatch)とは 北米の西海岸の先住民が気前のよさを競った宴の習慣のことです。 主催者は客たちに食物のほか大量の財物を贈り、威勢を誇示します。客はそれを上回る返礼をすることが義務づけられています。いきつく先は、貴重な私財を壊して相手を圧倒する。という本来の目的を忘れた行為にまで発展するのです。 モースの「贈与論」が有名。文化人類学にも登場します。 ◇ 本の中身 正

          【読書記録】give & take のマナーって難しい

          4月、読みおわった本「まとめ」

          今月は「8冊」読みました。 コンビニ人間 / 村田沙耶香 普通って、なんだろう。 大丈夫、みんな、わかってない。 水中の哲学者たち / 永井玲衣 水面を、ちゃぷちゃぷしているだけでは、もの足りない。 深く潜るように、問いつづける。 誰が勇者を殺したか / 駄犬 勇者になりたい? 休むヒント。 / 群像編集部 休み、なにしてる? 問うとはどういうことか / 梶谷真司 考える。疲れるし、難しい。 たまごのはなし / しおたにまみこ ささくれた、こころが潤う

          4月、読みおわった本「まとめ」

          【ペンギン・ハイウェイ】 - 少年は、おとなへ -

          夏休みまえのある日、登校中に不思議な光景を目にする。住宅街にペンギンが現れたのだ。 小学4年生のアオヤマ君は、ペンギンを研究することに決める。  歯磨きを忘れて虫歯になるほど勉強熱心なアオヤマ君。 ある日、歯科医院に勤めるお姉さんの投げた缶コーラがペンギンに変わる瞬間を目撃する。 「この謎をといてごらん。どうだ。君にはできるか」 ペンギンの謎を解明することは、お姉さんの謎を解明するのとイコールになる。 友達のウチダ君と調査をつづけている森の丘に「球体の海」があることをクラ

          【ペンギン・ハイウェイ】 - 少年は、おとなへ -

          【レーエンデ国物語 夜明け前】 - 消えた歴史が、語られる -

          「革命の話をしよう」 この一節からはじまる物語も、ついに第4の歴史を記します。舞台となるのは帝国の支配にすっかり慣れてしまったレーエンデ。 ついにレーエンデを「国」と表現する場面があります。感慨深いです。 3部までに語られなかった謎や、歴史の裏側に触れている今作。運命は激流となって加速します。 「夜明け前」にふさわしい内容となっており、最終巻ではどんなラストを迎えるのか、楽しみです。  ◇◇◇ レーエンデの自由のために翻弄し、解放の英雄となる「レオナルド」 御子のた

          【レーエンデ国物語 夜明け前】 - 消えた歴史が、語られる -

          【たまごのはなし】 - ひねくれ哲学たまご -

          第27回 日本絵本賞 大賞 第14回 MOE絵本屋さん大賞 第2位 第 2回 TSUTAYAえほん大賞 第2位 第28回 ブラチスラバ世界絵本原画展 金牌  ◇◇◇ 1玉だけ目覚めた、たまご。 ほかのたまごは起きない。ころがしたら割れてしまった。 マシュマロならどうだろう。やっぱり起きない。マシュマロたちに埋もれてみた。それでも起きないから、かじってみた。 「なんで かじるのさ?」 みじかいボッチ生活に別れをつげて、たまごとマシュマロはキッチンをとびだし、冒険のような散

          【たまごのはなし】 - ひねくれ哲学たまご -

          【問うとはどういうことか】 - 正しさに殺されないために -

          2021年の元首相でありオリンピック委員会会長であった森喜朗氏の発言からはじまります。 「女性差別」だと騒がれて、叩かれていました。梶谷さんはもっと厳しく捉えていて、「反民主主義」と主張。森氏だけではなく、マスコミや疑問をもたなかった大人たちへ「問う力がない」と言及しています。  ◇◇◇ 問うことをしなくなる要因は5つ、考えられるそうです。 基本歓迎されない 「わからない=質問」教育の基本はわかることだから質問は好ましくない しばしば攻撃的である 「どうして」や「な

          【問うとはどういうことか】 - 正しさに殺されないために -

          【休むヒント。】 - 仕事と休みの関係性 -

          群像 2024年 01 月号 特集「休むヒント。32人の休みにまつわるエトセトラ」の単行本化。 益田ミリ「休み時間」描き下ろし。  ◇◇◇ 休むことが苦手な日本人。 いまだに「休むのは悪いこと」と認識している人が一定数います。 仕事をしていると安心できる。むしろ、仕事をしていないと不安になるようです。 仕事に夢中になる時期はあっていい。私にもそんな時期はありました。 ムリをしているわけではない。充足感があったからやっていた。今では違法になった長時間労働。日付けが変わるま

          【休むヒント。】 - 仕事と休みの関係性 -

          【誰が勇者を殺したか】 - 勇者をつむぐ物語 -

          魔王を倒した勇者一行。 王都に帰還したのは仲間の3人だけだった。 高潔の剣聖 性悪の聖女 偉才の賢者 なぜ勇者は死んだのか。その質問に答えるときの3人は歯切れがわるい。 様々な疑惑はあるけれど、誰もウソをいってないようだ。それなのに真実がみえてこない。  ◇◇◇ 才能に恵まれた剣聖、聖女、賢者をまとめる勇者は、なんの才能もなく、ただ努力をするだけの普通の人でした。 その努力が異常だったのです。 休むこともなく、体力の限界まで動いて気絶するように眠る。毎日そこまで自分を

          【誰が勇者を殺したか】 - 勇者をつむぐ物語 -

          【水中の哲学者たち】 - 息をするように考える -

          ㊗️受賞 第17回「わたくし、つまりNobody賞」 哲学研究者であり、哲学対話ファシリテーターでもある永井玲衣さんの哲学エッセイとなります。  ◇◇◇ 水の中をたゆたうように、言葉に揺られるような文章を読んでいると癒されます。 ユーモアがあり、静かで柔らかくありながらも感情が揺れ動き、コミカルで面白く、とても好きな文章です。 哲学対話をしたことはないけれど、疑問を投じるという点では、会社の会議も似たようなことかもしれません。 だれかの発言が、水面に投げた小石

          【水中の哲学者たち】 - 息をするように考える -

          【コンビニ人間】 - これは愛の告白 -

          普通がわからない。 他者のいうことがわからない 社会に生きる正常がわからない。 幼少期、行動や発言に周りが引いた。 どうしてかは理解できなかった。 そんなことが何度も繰り返された。 いつしか彼女は話さなくなり、何もしなくなっていった。 異常とみられる彼女を「治す」と表現する家族。妹のアドバイスのおかげで人間に擬態して生きてきた。コンビニをとおして世界と触れているときだけ人間になれた。 体の全てはコンビニのものでできていた。 2番目の店長の「体調管理も自給のうち」という呪い

          【コンビニ人間】 - これは愛の告白 -

          文庫本の「解説」には愛がある

          文庫本の後ろにある「解説」 私は必ず読むのです。読まないなんてもったいない。 あるとき「読む派」と「読まない派」に分かれていると知り、ビックリしました! 単行本を持っているのに、わざわざ文庫本を買うのは解説を読むためでもあるからです。 プロの作家が書かれる解説は、感想を言い合っているような楽しさがあります。 私には読書仲間がおりませんので、そのような至福な時間をつくれる人を羨ましく思うのです。 サラッとブクログなどでレビューを見ても物足りない。もっとheavyで、よ

          文庫本の「解説」には愛がある