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カンヌライオンズ2021速報③ フィルムクラフト、デジタルクラフト、エンターテインメント部門等グランプリ発表

Cannes Lions 2021、3日目。

フィルムクラフト、デジタルクラフトなどのクラフト系の3部門とミュージック、スポーツを含むエンターテインメント系の3部門でグランプリが発表になっています。

フィルムクラフト部門のグランプリは、生理用品ブランドLibresse/Bodyformの"#wombstories"が受賞しました。3分以上に及ぶ完成度の高いムービーは、子宮(womb)にまつわるストーリーを、実写のシーンと13人の女性アーティストのアニメーションによる表現をクロスオーバーさせ、形容しにくい傷みや複雑な感情を見事な表現に落とし込んでします。悦び、愛情、憎しみ、などの言葉で簡単に語れるものではない(It's not that simple.)、あなたの話を聞かせて(#Wombstories)とメッセージします。エミー賞受賞の女性映画監督のニーシャ・ガナトラがディレクション。

この部門、日本からは、森ビル "Designing Tokyo"(電通)がブロンズを受賞しました。

デジタルクラフト部門のグランプリは、アメリカのゲーム会社Epic Gamesの"Astronomical"が受賞。自社の人気ゲームFORTNITE上で行われた、ラッパーTravis Scottのライブイベント。彼のニューアルバム『Astroworld』の世界感にアレンジされた空間で巨大なトラビスがパフォーマンス、1200万人ものゲーマーたちがイマーシブなライブ体験したもの。

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下は、行われたイベントのフルバージョン(約9分)。

日本からは、以下の3作がブロンズを受賞。
資生堂 The Continuously changing brand logo "Shiseido Karakusa"(電通)
森ビル "Mori Building Urban Lab"(SIX)
YAKUSHIMA TREASURE "Another Live from Yakushima"(Dentsu Craft Tokyo)

森ビル "Designing Tokyo"(電通)、ヤマハ "Dear Glenn"(電通)、"Tuna Scope"(電通)がショートリスト入りしました。

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インダストリークラフト部門のグランプリは、スキンケアブランドDoveの"Courage is Beautiful"のOOHポスターシリーズ、"Patricia"、"Amanda"、"Patrick"が受賞、プリント部門に続き二冠。長くDoveがブランドとして掲げている"Real Beauty"、美しさは見かけではなく何をするかに宿るというそのコンセプトを体現しているかのような、コロナ禍で闘う医療従事者を登場させたシリーズ。肌に刻まれたゴーグルの跡などが現場の過酷さを物語る写真は、実際に登場する人々が撮ったセルフィーで構成、クライアントへの提案から4日という短期間で制作、リリースされた。また、登場した人たちの勤務する医療施設近くのOOHにも重点的に掲示するなど、医療従事者を称え元気づけることも目的とした。

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日本からは、アドミュージアムTOKYO "Creativity Uncaged.-1,3,4"(電通)、江崎グリコ・ポッキー "Pocky the Gift"(電通)がショートリスト入りしました。


エンターテインメント部門のグランプリは、2020年はマッチングアプリのTinderの"Swipe Night"が受賞。日曜夜、プラットフォーム上でオリジナルドラマ"Swipe Night"をオンエア。ドラマは進行中にいくつかの2択が現れるインタラクティブ型ストーリーで、swipe機能を使いながら進めていく。8分のストーリーは2,000もに枝分かれし、同じような選択をした人がアプリ上に現れ、マッチングが楽しめる。マッチング率は、26%上がったそう。


2021年は、台湾の不動産会社Sinyi Realtyのブランドムービー"In Love We Trust"が受賞。台湾はアジア1の離婚率があり、結婚に慎重な若い人たちが増えている。それは住宅販売にも影響するということで、結婚に迷っている、役所の戸籍課で働く女性を主人公にしたドラマを制作。


日本からは、SKⅡ"Centre Lane"(GREY Tokyo)とANA "Game Chronicle"(ENJIN Tokyo)がブロンズを受賞。ヤマハ "Dear Glenn"(電通)がショートリストに残りました。

エンターテインメント・フォー・ミュージック部門のグランプリは、2020年がLil Nas Xのミュージックビデオ"Old Town Road"が受賞。SoundCloudでリリースされた当初、話題にはならなかったこの曲は、ビルボードのカントリー音楽チャートから除外されたことから注目。カントリー音楽とヒップホップというジャンルを超えた楽曲は、ジャンル論争から人種論争まで発展。そしてリミックスされた曲には、カントリーの大御所ビリー・レイ・サイラスまで参加し、多くの反応を生み社会的流行となった。PVのディレクターは、歴史的な要素をうまく取り込む手法で知られるCalmatic

2021年は、ブラジルのeショッピングサイトMercado Livreの"Feed Parade"が受賞。コロナの影響で中止された年1度のPRIDEパレードを楽しみにしていたファンは多い。そこで、実際にパレードが行なわれる道路をインスタグラムのフィード上に表現。オンラインからコメントを書き込むことで実際にパレードに参加している体験を提供。その模様は、LGBTQ+アーティストでもあるGloria Glooveの楽曲と融合、ミュージックビデオとしてリリースされ話題に。

審査委員長を努め、自身もアーティスト/プロデューサーであるワイクリフ・ジョンは、選んだ2作の受賞理由を「エンゲージメントと勇気を持ったアイデアとして評価した」と語りました。

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日本からは、ヤマハ "Dear Glenn"(電通)がシルバーを受賞しました。

エンターテインメント・フォー・スポーツ部門のグランプリは、2020年はASICSの"Eternal Run"が受賞。ASICSは、ゴールテープ(Finish line)というものが、ランナーたちの精神や身体の潜在能力を縛りつけているのではないかと仮説。世界で始めてゴールテープのないマラソン大会を、ユタ州のソルトフラッツという塩湖の後にできた平原で開催。23人のアスリート、インフルエンサー、ジャーナリストを招き、それに耐えうる自身の長距離用ランニングシューズGLIDERIDEの性能もデモンストレートした。

2021年は、フィンランドのHouse of Laplandの"Salla 2032"が受賞。フィンランド北部、北極圏にあるラップランド地方は、地球温暖化により2032年には15度も気温上昇、土地が浸水し消滅の危機にもあると言われている。その中心地であるサラ市は、突如、2032年の夏のオリンピックに正式に立候補することを宣言。ポスターやロゴ、グッズ、正式マスコットまで作る凝り用で本気であることをアピール。世界が!?となったところで、暑くなるのだから、夏のオリンピックも開催可能という論理を展開し、その深刻な温暖化問題を世界に訴えることに成功した。

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