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カンヌライオンズ2021速報⑤ 最終日 フィルム、チタニウム、グラス部門等グランプリ発表

Cannes Lions2021、最終日。

フィルム、チタニウム、グラス、サステナブル・デベロップメント・ゴールズの各部門でグランプリが発表になっています。

フィルム部門のグランプリは、3つ出ました。1つ目は、2020年から、ラコステの"Crocodile Inside"が受賞。エディット・ピアフの「愛の讃歌」に合わせ、男女の感情の流れを崩壊するアパートというメタファーで壮大に描きました。フランスの映像グループ、Megaforceがディレクション。ゴールドを受賞したバーバリーの"2020 FestiveSeason"も彼らによるもの。

2つ目は、2021年から、Nikeの"You Can't Stop Us"が受賞。突如巻き起こったコロナの世界的蔓延は、人々からスポーツしたり観戦したりする楽しみを奪った。そんな中、人々を勇気づけるため "Nothing can stop what we can do together(団結すれば何ものも我々を止めることはできない)"と世界にメッセージを放った。新たな撮影が困難な中、既存の素材を使って見事なクオリティ高い映像を作り上げた。

3つ目は、2021年から、Libresse/Bodyformの"#Wombstories"が受賞して3冠目。3分以上に及ぶ完成度の高いムービーは、子宮(womb)にまつわるストーリーを、実写のシーンと13人の女性アーティストのアニメーションによる表現をクロスオーバーさせ、形容しにくい傷みや複雑な感情を見事な表現に落とし込んでいます。悦び、愛情、憎しみ、などの言葉で簡単に語れるものではない(It's not that simple.)、あなたの話を聞かせて(#Wombstories)とメッセージします。エミー賞受賞の女性映画監督のニーシャ・ガナトラがディレクション。

この部門、日本からは、森ビル "Desigining Tokyo"(電通)がショートリストに残りました。

チタニウム部門のグランプリは、またもEssity社の生理用品ブランドLibresse/Bodyformの"#wombpainstories"が獲得。ヘルス&ウェルネス、フィルム、フィルムクラフト、チタニウムのグランプリと合わせ、最終的に4冠となりました。

"Blood Normal"、"Viva la Vulva"などで今まで語られてこなかったタブーを描いてきたBodyformは、今回は子宮にまつわるpain(痛み)にフォーカス。出産、不妊や流産、また、女性の10人に1人が悩んでいると言われる子宮内膜症(endometriosis)や腺筋症(adenomyosis)など、おおっぴらに話したり相談できないが故に知識の得られなかったテーマを明るみに出しすことで、話題にしやすくしたり、悩みの解消の一助となることが目的。話題を誘発するものとして、傷みを比喩的な言葉やアートで表現したPain Doctionaryやリサーチ結果をまとめたPain Report、ヴァーチャルの博物館Pain museumなどを様々なコンテンツを制作、拡がりのあるキャンペーンを構築しました。

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準グランプリに相当するチタニウムライオンには、以下の6つが選ばれました。

Diesel "Enjoy Before Returning"

Burger King "Stevenage Challenge"

Michelob Ultra "Contract for Change"

beats by dr.dre "You Love Me"

Corona Beer "The Match of Ages"

City of Chicago "Boards of Change"


ジェンダー・イクオリティを推進する優れたアイデアに与えられるグラス部門のグランプリは、ブラジルのスターバックスの"i am"が受賞。ブラジルでは名前の変更は、高価で煩雑な手続きが多い上、偏見も強く、トランスジェンダーの人々にとって困難である。そこで、スターバックスは、国際トランスジェンダーデイに店内を名前変更の登録所にして手続きを無償でサポート。公式な変更を認める証書とともに新たな名前の書かれたカップをプレゼント。毎年のイベントとして行うことも宣言した。

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サステナブル・デベロップメント・ゴールズ部門のグランプリは、スウェーデンのDoconomyの"The 2030 Calcurator"が受賞。Doconomyは、地球環境問題に対して、企業や社会への変革を促すツールやシステムを開発するフィンテック・スタートアップ。国連は、2030年までに二酸化炭素排出量(carbon footprint)を半減させることを政府間の共同目標としている。しかし、その目標は企業や消費者にとって認識しづらいもの。そこで、このまま2030年まで同じ方法で製品を作り続けるとどれだけの二酸化炭素排出量(carbon footprint)があるかを数値化できる計算機を制作、オープンプラットフォームとして提供することで、商品パッケージに簡単に明記することが可能に。メジャー企業への製造手法に警鐘を鳴らすとともに、商品開発資金に乏しい小さな企業にもこの指標をもとに製品を作ることを促進している。Doconomyは、2019年にも"Do Black - The Carbon Limit Credit Card"でクリエイティブEコマース部門でグランプリを受賞している。

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全ての非営利団体の受賞作の中から選ばれるグランプリ・フォー・グッドは、メキシコのジャーナリストの人権擁護団体、Propuesta Civicaの"#StillSpeakingUp"が受賞。メキシコでは、政治と麻薬の関わりを暴こうとした120人以上のジャーナリストたちが殺害されている。その運動のリーダー的存在であり、自身も2016年に殺害されたJavier Valdezを突如、国営TVの生放送でAIで蘇らせ、メキシコ大統領に向けジャーナリストの安全の保護を呼びかけた。

以上にて、史上初のオンライン開催のカンヌライオンズ2021はお開きとなりました。あっという間の5日間でしたね。また、余裕があれば今年の傾向や分析等をお伝えする機会が持てればと思っています。
ひとまずは、おつかれさまでした。

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