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カンヌライオンズ2021速報④ ブランドエクスペリエンス、モバイル、イノベーション部門等グランプリ発表

Cannes Lions 2021、4日目。

ブランドエクスペリエンス&アクティベーション、モバイル、イノベーション、クリエイティブEコマース、ラジオ&オーディオ、クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション、クリエイティブ・エフェクティブネスの各部門でグランプリが発表になっています。

ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門のグランプリは、2020年は、バーガーキングの"Stevenage Challenge"が、ダイレクト、ソーシャル&インフルエンサー部門に続き、3冠目。Stevenageは、イングランド4部リーグの最下位に甘んじるほとんど知られていないサッカーチーム。サッカーゲームFIFA20にこのチームが登録されていることに目をつけたバーガーキングはゼッケンスポンサーに。ゲーム内では、メッシやネイマールなど名だたる選手を使ってチームを組めるモード(Career Mode)があり、ゲーマーたちがStevenageでプレイしてゴールを決めたシーンをSNSでシェアする度にワッパーを無料でプレゼントすると告知。25,000以上のゴールがシェアされ、Stevenageは一番プレイされたチームになった。

2021年は、マスターカードの"True Name"が受賞。トランスジェンダーの人たちは、クレジットカードに記載されている名前を確認されるとき、容姿と一致しない自身の名前でトラブルになることが多々ある。銀行が認めない限り、本名以外をカードに記載することはできないが、マスターカードの働きかけによりいくつかの銀行が承認。Chosen name(自分でつけた名前)でカード名を記載することを実現した。

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この部門、日本からは、良品計画 "MUJI Advertising 2020 Pleasant, somehow(気持ちいいのはなぜだろう)"(日本デザインセンター)がブロンズを受賞。オリィ研究所 "Avator Robot Cafe"(ADKクリエイティブ・ワン)がショートリスト入り。

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モバイル部門のグランプリは、パキスタンの通信会社telenorの"Naming the invisible by digital birth registration"がメディア部門に続き、二冠。パキスタンには、1600万人の出生届の出されていない子供たちがいて、公的な医療や教育が受けられずにいる。そのほとんどが、辺鄙な村に住む子供たちで、親が遠く離れた役場へ届けを出すことが不便なことが主な原因。そこで、telenorは携帯電話から出生届が出せるシステムを開発、政府にも公式なものとして認めてもらい、結果、426の村から120万人もの出生登録があった。

日本からは、Nike "Create with Nike Air Max"(AKQA Tokyo)と"Tuna Scope"(電通)がショートリストに残りました。

クリエイティブEコマース部門のグランプリは、2020年は、コロンビアのビール会社ABinBevの"Tienda Cerca"が受賞。コロナ禍で売上に打撃を受けている街角の小さな雑貨店のため、Whatsappから注文できるオンラインショッピングのサービスを素早く構築し、サービスを提供。6万軒が登録し、70%のお店で売上が上昇、窮地を救ったもの。サービスはラテンアメリカ全体に拡がりを見せた。

2021年は、街頭販売雑誌ビッグイシューの"Raising Profiles"が受賞。コロナによって街頭販売が出来ず販売員たちの売上に壊滅的ダメージを受けていた。そこで、常連購読してくれるビジネスマンたちをLinkedinで見つけ、販売員たちがデジタルでの購読を呼びかけ。リンクドイン上で更にネットワークが拡がり、デジタル購読が増えると共に売上も4倍を記録した。

イノベーション部門のグランプリは、ユニリーバのデオドラントブランドDegreeの"Degree Inclusive"が受賞。制汗剤のボトルは健常者の視点でしか今まで考えられておらず、視覚や身体に障害を持った人たちには使いづらいものだった。そこで、障害を持った人たちとエンジニアやデザイナーがいっしょになり、ストレスなく使えるボトルを共同開発した。

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日本からは、Panasonic "PA!GO-An Experiment for Explorers with Google"(Panasonic)がショートリスト入りしました。

ラジオ&オーディオ部門のグランプリは、Woojerの"Sickbeats"が、ファーマ部門に続き二冠目。アメリカには、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)という消化器系と呼吸器系に異常をきたす難病に悩む子供たちが3万人もいる。その治療に使われる器具(ベストのようなもの)は、子供たちにとって我慢を強いられる非常に退屈なものだった。そこで、ゲーム機器ブランドのWoojerは、40ヘルツの音波振動を与えるその治療法に着目、音楽配信サービスのSpotifyと連携し、何千もの楽曲を治療に使えるようにできるベストを開発し、子供たちの治療を楽しいものに変えた。

日本からは、福島民報 "Night Shake Drill Broadcast"(ラジオ福島/電通)がショートリストに残りました。

今年から新設されたクリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門は、文字通り、クリエイティブの力によってビジネスのあり方を変え、前進させたアイデアに贈られる。初代グランプリは、フランスのスーパーマーケットチェーンCarrefourの"Act for Food"が受賞。カルフールは、環境や健康問題の解決には農業従事者やサプライヤーまで含めた食物の流通体系を改善することが不可欠と考え、生物多様性を阻害する農業法の改正への行動を起こした"Black Super Market"、オーガニック栽培へ移行する農家に対する経済的サポート、ビーガン食品への厳しい基準の設定、屠殺場でのビデオモニタリング等々、"行動すること"をミッションに掲げ継続している。

日本からは、くら寿司 "Tuna Scope 2020"(電通)がショートリストに残りました。

クリエイティブ・エフェクティブネス部門は2017〜19年までに受賞したものの中から、その後の検証で広告効果が認められたものに与えられる。グランプリは、 2019年の受賞作、Nikeの"Crazy Dreams"が受賞。元NFLのスター選手であったコリン・キャパニックをアイコンに起用。キャパニックは、2016年のプレシーズンマッチの試合前、黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えないと、ひざまづいて国歌斉唱を拒否。その行動が賛否を呼び、シーズン終了後にはチームとの契約を終了、プレーする道を絶たれた。その彼がナレーションを担当し、Don't ask if your dreams are crazy. Ask if they are crazy enough.(自分の夢がクレージーかどうかなんて自問するな。十分にクレージーかどうかを自問しろ)と呼びかける。ローンチ直後は、キャパニックを起用したことに失望した人々が自分のNikeを燃やすなど反発も多かったものの徐々に擁護者が現れ好転、一時下がった株価も最終的には上昇に転じた。このキャンペーンによる31%のセールスアップと60億ドルもの株価上昇が評価された。


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