見出し画像

カンヌライオンズ2021受賞の注目作から②

先日行なわれたCannes Lions2021、各部門のゴールドを受賞したものの中から注目の面白いアイデアを紹介しています。

ダイレクト部門でゴールド、アメリカのファーストフードチェーンPOPEYESの"That look From Popeyes"。ビヨンセがAdidasと発表したファッションブランドIVY PARKの新作が、POPEYESのユニフォームに酷似。そこで、IVY PARKとそっくりなファッション写真をユニフォームを着た従業員で撮影し、自社のサイトに掲載。売り切れているIVY PARKの代わりに購入してはとメッセージして販売した。面白がったインフルエンサーたちが購入し、話題は拡散、最後には、ビヨンセからのお墨付きも。

ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門でゴールド、H&Mの"One/Second/Suit"。コロナ禍、企業の求人数は激減した上、学生をはじめ仕事を求める人たちは採用面接で着るスーツを買う金銭的余裕もない。そこで、H&Mは、面接用に24時間スーツを無料で貸し出しするプログラムを開始、自信を持って臨んでもらうことで彼らをサポートした。ファストファッションとして世界を席巻したH&Mは、今回デザイン部門でグランプリを受賞した"LOOP"のリサイクル活動など、こうしたコミュニティベースのアクティベーションへのシフトが見られるよう。

画像1

メディア部門でゴールド、ロンドンを拠点とするHSBC銀行の"Addressing the `No Fixed Address` problem"。ホームレスの人たちは、住所がない(No Fixed Address)ため銀行口座を開設できない。銀行口座がないことで、仕事を見つけたり、社会保障が受けられなかったり、住居を見つけたりできず、悪循環に陥っている。そこで、住所がなくても、慈善団体に登録することで銀行口座を持てることを宣言。ホームレスが多い5つの地区のOOHで重点的にキャンペーン告知を展開した。OOHから応募できるQRコードにアクセスした5人に1人が口座開設にこぎつけ、住所のない口座は52%増加、ブランドに対する好意度も10%アップした。

画像3

PR部門でゴールド、 ロシアの新聞Novaya Gazetaの"N23"。スターリン時代の大粛清の悲劇を現代に伝える博物館House of Executionが取り壊され、跡地に香水ブランドの店舗が建築される計画が発表された。それに抗議するため、大粛清を思い出させる弾薬の匂いを詰めた香水を調香師(自身の曽祖父も大粛清で処刑されている)とともに制作。メディアやオピニオンリーダーに送られ、建設についての議論を呼び起こした。結果、建築計画は撤回され、大粛清の記念館が造られることになった。

画像2

アウトドア部門でゴールド、地中海における難民保護団体SEA-WATCH e.V.の"Lifeboat"。2014年、ヨーロッパで論争となった地中海難民問題は、依然続いているにも関わらず関心が薄れつつある。そこで、実際に地中海を渡った5人の難民に詳細にインタビュー、屋内プールにボートを浮かべ、その航海過程を忠実に疑似体験できる装置を作り、ヨーロッパの様々な国の40人に体験させた。映像はショートフィルムとしても発表され、難民問題は再びニュース等で取り上げられることが増えた。

画像4

デジタルクラフト部門でゴールド。アメリカのケーブルTVチャンネル、COXの"Drawn Closer"。コロナ禍で中止になってしまった小学校の学芸会を、生徒たちがアカデミー賞受賞のアニメ監督と作り上げるプロジェクト。生徒たちそっくりのキャラクターは、フェイストラッキング技術を使って自身がアテレコ、全てリモートでの制作で上演できなかった劇をアニメーションで蘇らせた。フルバージョンは、こちら

画像5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?