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告発の勇気が社会の希望② 命がけでたたかう若者たち(下)

311子ども甲状腺がん裁判
社会は一人ひとりの声、踏み出す一歩を待っている

321人とその家族の苦しみがともにある
 裁判を起こすには、たいへんな覚悟と勇気がいる。しかも、いま現在も過酷な闘病生活のなかで、数年後、いや、明日でさえ不安な日々を送っているのである。文字通り、命がけの裁判だ。それでも、国家権力を背景にもつ日本有数の巨大企業を相手にたたかいを挑む。
 いまわかっているだけでも321人いる甲状腺がん罹患者には、321とおりの苦しさや不安、闘病がある。原告たちは「この裁判が、ほかの甲状腺がんのみなさんの力になればと思う」「同じような境遇で将来の生活に不安を抱える人たちの、救いのきっかけになることを願っています」と語るように、自分だけではない、320人とその家族の苦しみがともにあるのだ。
 同時に、原告たちは互いの経験を知り、裁判への思いを分かち合い、一人の人間としての強さと輝きを増している。

権力や私利私欲が生む犠牲 だれかに押しつけない社会を

 支援の輪も広がっている。開廷日には毎回、200人近い支援者が駆けつける。そこには大学の授業で裁判を知った学生や若い人の姿もある。
 注目される裁判にもかかわらず、使用法廷は傍聴席わずか25席程度の小法廷だった。しかし、支援者らが署名活動に取り組むなどした結果、第5回期日からは大法廷になった。
 甲状腺を手術した原告は声が出しづらい。当初、裁判所が許可しなかった陳述のさいのマイクの使用も、許可された。世間の注目、支援の声が、原告たちの大きな後押しになっているのだ。
 被告の東電はこれまでに、原発事故と甲状腺がんとの因果関係を否定する明確な根拠を示せていない。

口頭弁論後の報告集会。会場は支援者でいっぱいになる

 理不尽に声をあげ、社会に訴えるアクションは、社会全体をよりよい場所に引っ張り上げることにほかならない。いまいる犠牲者を救済することが、二度と同様の犠牲を出さないための第一歩だ。
 そして彼らとともに、大きな権力や私利私欲が生む犠牲が、だれかに押しつけられる社会を拒むために、私たち一人ひとりの声、踏み出す一歩を、この社会は待っている。(._.)φ
★次回期日は3月6日午後2時~東京地裁で(予定)。 
●原告の名前はすべて仮名です。 【完】


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