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とりとめなき60

八時前より始業、洗い物である。食器類の整理等も行ない、終業は十一時を回っておった。親戚より譲り受けた器の数々、これらを一点∕﹨手にして、用途に思いを巡らせながら磨くのだから、時間は直ぐに過ぎる。その中のひとつに見慣れた品 ─石見焼の甕─ が。工芸品の類を見るのはそれだけで愉しいが、地元の品に出会うのは一層愉しいものである。他にも ─こちらは島根関連ではないが─ 漆の盆などもあったから、菓子鉢にしてみる。中央の桔梗、金色も相まって瑞々しい。

昼からは岡崎公園へ。やんごとなき事情ありて金銭を伴う放浪が叶わぬ身となってしもうた。ゆえにこの界隈にはまた世話になることであろう。室内で、静かで、煙草が吸える。思い当たる場所は少ない。そして岡崎近辺は明媚だ。ちと遠いのが難であるが... 書を読み、備忘を記す。飲み物は持参の水筒、冷珈琲である。

付き合ってもろうたのは辻邦生『詩と永遠』で、表題の一章を読み終える。同じく評論『小説への序章』で論じられた「時間」は、矢張り辻にとって強い関心だったのであろうか、本作においても「永遠」という軸を用いて論じられる。

終りの見えないものは、終りを知らず、終りを知らないものは、ただ変化をいきるほかないのです。この変化を生きるというのは、終りを目ざした〈目的─手段〉のプロセスのようなものとはまったく異なり、変化のなかにとどまり、変化と戯れ、変化のなかに脱字的エクスタテイクに一体化しています。

辻邦生『詩と永遠』

辻の美しくも明晰な作風は、この研ぎ澄まされた時間論、ひいては普遍的主観が土台にあるといっても過言ではなかろう。

Prime Videoに追加されていたポール・シュレイダー監督『The Card Counter』を久し振りに。序盤も序盤であるが、車をモーテルに駐車しカウンターへ向かう一連のカメラワークに唸る。いやはや、珠玉である。続きはまた今度...

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眠れない夜に

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