見出し画像

「安い労働力」を搾取した結果、世界中で起きていること

先日の「安い労働力」で儲ける時代は終わらせよう で触れたマレーシアの労働搾取について、私が見てきた事をTwitterで書きました。

きっと関心は薄いだろうな...と思いつつ書きましたが、思いがけず多くの方に読んでいただきました。

今日はその内容をまとめつつ、所々補足して書きます。

※この記事は、以下の3点の周知を趣旨として書きます。マレーシア政府や特定の企業の糾弾が目的ではない事をご承知おきください。

✔︎ 出稼ぎの外国人労働者たちは同じ国で暮らし、決して遠い存在ではない事
✔︎ 彼らの冷遇された暮らしは、巡り巡って自分たちに跳ね返ってくる事
✔︎ 世界中で起きている、先進国が後進国を搾取する構造への問題提起


●自宅周辺は建築ラッシュだった

私が住むエリアは高層コンドが8つ建ち並び、ここに入居した8年前は周囲が建築ラッシュ。基礎から完成まで、他の7コンドの様子を見続けてきました。そこで働いていたのが、バングラデシュやネパールなどからの出稼ぎ労働者たち。その一部について、2017年にブログで書いています。

画像4

労働者の住まいは、↑赤枠の様にブルーシートの小屋だったり、コンテナを積み上げて住まいにしている所も。コンテナ内は猛烈に暑いのですが、もちろん冷房無しの鮨詰め生活。誰かが病気にかかったら、感染が蔓延するのは容易に想像できます。

●山の上で野宿する労働者たち

*グレーの囲い内は私がツイートで書いた内容です。

“コンテナも酷いけど、それでもまだ良い方。なぜなら屋根があるから。我が家のキッチンから見えるコンドの建築現場は山の中腹にあり、地上100mほどの山肌で労働者たちは野宿して暮らしていた。

数週間すると、廃材やブルーシートが配給され自分達で山へ担ぎ上げて小屋を建て始めた。おそらく仕事を終えた後に作業していたので、小屋の完成までもだいぶ時間が掛かったと記憶している。

雨風を防げる様にはなったけど、トイレやシャワーは当然無く。どこからか汲み上げた水を桶にすくって、毎朝毎夕、腰に布を巻いた姿で順番に水浴びをしていた。

コンドが建ち上がってくると、彼らは建築途中の骨組みだけの建物へ移動。ドアや壁もまだ無い状態だけれど、ようやくコンクリートの屋根がある場所で眠れる様になる。他国から呼び寄せておいて、住まいも支給されていない。“

...こんな様子を、我が家のキッチン窓から数年間見続けました。時々山を降りてきた彼らと、犬の散歩途中で会う機会も。顔立ちや言語から、バングラデッシュとネパール人男性の様でした。

●砂浜で寝泊まりするガードマン

“建築現場以外でも、同じ事が起きている。以前住んでいた海を見下ろす丘に建つコンドでは、セキュリティガード(警備員)は近くのビーチでブルーシートの小屋に住んでいた。もはや家とは呼べない、ただの囲い。それを偶然見てしまった時、現実を直視できず彼らに声が掛けられなかった。

彼らの月給は、RM1200〜1500(3万〜4万円)と言われ、その中からマレーシアへ来るために負った借金を返したり、本国の家族へ仕送りしたりしている。“

また労働者には未成年も多く含まれ、その多くが“Student Trafficking“で連れて来られている実態も。※Student Trafficking についてはあまりにも闇が深すぎるので、詳細を別記事で書きます。

●物価の違いを利用する事自体は悪ではない

コストを抑えて利益をあげるのがビジネスの基本なのは承知しています。

「母国で仕事が無い人々」を物価の安い国から招き人件費を抑えるのも、ある意味Win-Win。

物価の違いを利用して製造をアウトソースしたり、私達日本人がマレーシアで暮らすのも「物価の安さ」が一つの理由にもなっており、それ自体は「悪」では無いと思います。

けれど、コスト減の為に山やビーチで野宿させるのは、もはや人間として扱っておらず、他国から呼び寄せる以上、最低限の住まいはその“コスト“に入って然るべきでは無いだろうか?

労働環境を整えて招くならwin-win、「本国ではもっと劣悪な環境で暮らしているから」等と足元を見るならそれを「労働搾取」と呼ぶのではないでしょうか。


もちろん、全てが劣悪な環境では無く、ヤクルトさんの様に労働環境や福利厚生を整えている企業も(皆がヤクルトさんの様な環境だったら、どれだけ幸せか...)。


●憤りと、搾取に加担している矛盾

私は世界各国を旅する中で、アジアや南米などのスラムで最低限の暮らしを送る人たちをこの目で見てきました。けれど、たとえ母国でどんな暮らしをしていても、仕事として招く以上は最低限の人間的な暮らしを提供する義務があるはず。

人種や国で値踏みして搾取する構造は断ち切るべきだと思うし、資本主義の構造は、根底から考え直す時だと思っているんです。

でも私も、そんな彼らが建てたコンドに住み、間接的に搾取に加担している...今まで胸を痛めながらも書けなかった理由は、その矛盾に悩んでいたからなのです。

ではなぜ今、書くことにしたのか?

いちばんの理由は、外国人労働者の宿舎で感染クラスターが発生していること。

密室状態を改善しない限り、感染の連鎖は終わらない。そして彼らの劣悪な環境を知りながら、見てみぬふりをしてきたツケが、今コロナ感染拡大という形で自分たちに回ってきていると感じたからです。

●世界中に蔓延する搾取の構造

でも、先進国が後進国を搾取する構造は、マレーシアだけでは無いんですよね。チョコレート、コーヒー豆、ファーストファッション、etc, etc...

そして、労働搾取、環境問題、気候変動、全ての問題は繋がっている。これはもはや、企業やマレーシアだけでなく、世界中で全ての人に直結する問題。可視化して、多くの人が一緒に考えるべきではないか?と思うのです。

そんな構造を鋭く指摘した本がこちら。

読み進めるほどに、先進国が目を背けてきたその加担ぶりに絶望的な気持ちになるけれど、ぜひとも読んで欲しい1冊です。

迷いながらも勇気を出して書きましたが、現役の記者さんから嬉しいコメントもいただき、元気がでました。

また、この状況をなんとかしたいと思っている人は他にもいるとわかり、励まされました。

みなさんも、一緒に考えて頂けたら嬉しいです。

画像4

📖関連記事📖

良かったらこちらもどうぞ


画像2

🌎サイトマップ🌎

過去記事が一覧になったサイトマップはこちら


画像3



ここから先は

0字
このマガジンは週1回程度の記事を更新予定です。まとめて読むならマガジン購入がお得です。

多様性のマレーシア🇲🇾ペナン島から「マルチリンガル教育」「グローバル視点の生き方」「子どもの好奇心・主体性・思考力」をキーワードにお届けする…

この記事が参加している募集

SDGsへの向き合い方

読んで下さってありがとうございます。スキ♡や、シェア、サポートなどにいつも励まされています!