まやきのこマーケット(10/15)の話録①

・4人組 60前後のおじさん1人と20くらいの若い女性3人

まず、どういう関係性の4人なのか全然わからなかった
大学のゼミかな、というのが1番最初に頭をよぎる

茶髪の女性「なにやってるんですかー?」

お話屋の説明をする

おじさん「やってもらおうか」

地面で申し訳ないなと思いながら直座りしてもらった

あづき「物語か唄か、両方でもいいですけど」

「物語がいいな」

誰かが言った

あづき「4人全員まとめての物語か、それとも誰かメインの人を置いて作るのでもいいですけど」

おじ「それならやっぱりこの子だな!」

そう言って灰色のニット帽を深く被った女性を指す

「いいね、それがいいよ!」
他の3人も同意してる

指された帽子の女性はまんざらでもなさそうな感じで、かといって騒ぐ風でもなく黙って、端っこから私の前まで移動してくる
場所を譲る他の3人

START

あ「うーん、そうだな……何か好きな飲み物とかありますか?」

帽子「パイナップルジュース」

女性A「そうなの!?」

帽子「うん、最近ハマってる」

パイナップルジュース と黄色い文字で紙に書く

あづき
「うーん」
「駅、、に行くことって多いですか?」

帽子「はい、多いです」

あ「駅、、の中で、この辺が好きっていう場所あります?」

帽子
「・・・」
「入口、、、駅の入り口あたり」

あ「改札より手前の?」

帽子「はい」

駅の入り口かぁ なんとなくその駅大きそうだな

あ「駅の入り口はどんな人がいますか?」

帽子「サラリーマンとか、、学生とか、、若い人とか、、」

なるほど

あ「その駅の入り口にいる時って、どんな気持ちになる?」

帽子「人の視線を感じる」

人の視線を感じる……人の視線を感じる!?
どういうこと?
たくさん人がいるからむしろ視線は埋もれていきそうな気もするんだけど

帽子「私が見てると、視線を感じる」

なんか不思議な感性を持った子なのかな、って思った
物語の糸口になりそうだな、って思った

ここで別の人に話を振る

あ「この物語に出演したい、っていう人いますか?」

茶髪の女性「じゃあ、はい!」

あ「自分自身で出たい?それとも別の何か、生き物とか物体とか、そういうものになって出たい?」

茶「自分自身でお願いします」

あ「じゃあごめんなさい、名前だけ聞いてもいいですか?」

茶「えりこ(仮名)です」

あ「そしたらえりこさんを主人公にした話にするね」

残っていたもう1人の女性にも聞く

あ「貴方は出演したいですか?」

眼鏡の女性「じゃあ、はい」

あ「自分自身で出たい?それとも別の何か、生き物とか物体とか、そういうものになって出たい?」

眼鏡「私は、自分自身じゃなくていいです……」

あ「じゃあ、なにがいいかな……」

眼鏡「パン屋さん」

大体物語の素材は集まったかな、と思ったので始めることにする

[物語要旨]

--
私(えりこ)はいつも駅にいる。用事もないのに駅にいる。携帯を見たり時計を見たりして、誰かを待ってる振りをする。そうして駅で、時間を過ごしてる。
でもその日、私は何かに見られている、何かの視線を強く感じた。
視線の主をどれだけ探しても、それらしきものは見つからない。
もやもやがつのる。ふと目線を落とす。
すると視線の主が見つかった。
ゴミ箱の横に置かれた、飲みかけのパイナップルジュース。
透明なプラスチックの容器に入ってストローも刺さったままのパイナップルジュース。
視線の主はそれだった。
「このパイナップルジュース、すごい私のこと見てくるじゃん」
気味が悪くて、ゴミ箱に捨てようと思ったけど、中身がまだ入ってる。
どこかに中身を捨てられるところはないかと、飲みかけのジュースを持って捨て場所を探しに歩き始めた。
すると
「あ!」
横から明るい声が飛んでくる。
「そのパイナップルジュース、私大好きなんです!」
駅の構内にあるパン屋さんの女性が話しかけてきていた。
聞けばそのパイナップルジュースも、駅構内の近くで売っているものらしく、そのパン屋の女性はいつも買って飲んでいる、ということらしかった
「飲みましたか?どうでしたか?」
前のめりにぐいぐいと話しかけてくる。
--

あづき「どうやって答えましたか?」

帽子「・・・甘くて、おいしいです」

--
「甘くて、おいしいです……」
「ですよね、私もそう思います!」
元気な人だな…..でも話している暇はない。
私にはこのジュースを捨てるミッションがある。
会話を切り上げて捨て場所探しを再開したが、あれ、ちょっと待てよ、と思う。
(パイナップルジュースが好きっていう話してたのに、そのジュースを捨ててたら、もしその姿を見られでもしたら、とんでもなく気まずいんじゃないか……)
頭の中がぐるぐるぐるぐるしてきた
困った どうしよう
--

あづき「どうしようか?」

帽子「パン屋の女性にあげる」

--
そうだ、そんなに好きなら、これパン屋さんにあげちゃえばいいじゃん
頭がぐるぐるしすぎてショートして、そういう結論に至った
もう一度パン屋さんのところへ戻る。
「あの・・・このジュース、私もういらないので良かったら差し上げます」
「え、いいんですか!?ありがとうございます!」
素直に受け取るパン屋さん。
受け取って、ストローに口を近づける。
これでいいのか?
--

あづき「本当にこれでいいですか?(おじさんに聞く)」

おじ「ちょっと待った!って言って止める」

--
「ちょ、ちょっと待って!」
流石に理性が働いた。
ストローに口をつける寸前、静止することに成功した。
驚くパン屋さん。
今までのいきさつを全部話した。
「そっか、、そういうことだったんですね」
いつも駅に1人で来て、待ち合わせの振りをして時間を過ごし、誰とも関わらずに帰る。そんな閉鎖的な暮らしをしすぎて、他人との関わり方がわからず、意味不明な行動をしてしまった、とも話した。
すると、パン屋さんがこう言った。
「そしたら、、、私もうすぐ仕事終わりなんです。良かったら、帰りに一緒にパイナップルジュース買って飲みませんか?うちのクロワッサンと相性ピッタリなんですよ!」
そう言って明るく笑うパン屋さん。
駅で友達が初めてできた。
--

あづき「・・・というお話でした」

パチパチ


でさ、これで終わりなんだけど、ここから不思議な展開が待ってたんだよ

帽子「おもしろかったです」

あづき「ありがとうございました」

帽子「あの」

あ「ん?」

帽子「私、駅で視線を感じるって言ったじゃないですか」

あ「はい」

帽子「その答え合わせになる写真があるんですよ」

???
答え合わせ?
どういうこと

帽子「これです」

って言って見せられた携帯
画面を見ると、ハッキリとは見えなかったけど、駅前でたまに見る、大きな看板を立てて立つ人たち キーワードは 聖書 福音 幸福 みたいな
感じだった

帽子「私たち、コレなんです」

一瞬、思考が停止した
まず物語が終わった直後に、お客さんの方から新たな物語を提示されるのが初めてで、すぐに対応できなかった
あと普通に、「私たち、コレなんです」の意味がわからなかった

あづき「(状況が飲み込めず曖昧な返答をしている)」

茶髪「私たち、向こうでお店出してるんですよー」

そうなの!?!?!?
出店者!?

茶「ポストカードとか売ってるんです」

なんか頭回ってなかったけど、店出してるなら、せっかくだし行こう、っていう気持ちにはなってて、行ってみた

30歩ほど歩いたところにお店はあって、6人くらい、また若い女性がいらっしゃった

おじさん「せっかくならポストカード1枚差し上げますよ」

あづき「いえいえ、ちゃんとお金払いますよ」

いろんな柄のポストカードから、自然豊かそうな1枚を選ぶ
すると

おじさん「その絵、なにを表していると思いますか?」

思わず言っちゃった
あづき「俺みたいなこと聞きますね笑」

あづき「庭、、、ですかね?」

おじさん「それはね、楽園、なんですよ」

この時点で「私たち、コレなんです」の意味は大体わかった
っていうか、めちゃくちゃいろいろ聞きたいことあったんだけど、自分の店もあるし、なにより10人くらい若い女性がいて、うおお圧力、ってなってたから、もう戻ろうと思った

そしたら最後、帽子の女の子が別のポストカードを持って俺のこと見てて
渡したいけど渡しづらい、みたいな距離感でモジモジしてる

あづき「そんなおっかなビックリしないで渡せばいいじゃん笑」

って要ったらスッて渡してくれた

言い忘れたけど
その帽子の子、駅で待ち合わせの振り、本当にしてるし、コンビニで何買うか迷うふりして過ごしたりもしてるらしい

俺と同じだね




おわり


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