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<質問責めの女性>ショートショート

僕はマッチングアプリを始めた。縁もゆかりもない女性とうまくいけば繋がれるという代物である。

これはマッチングアプリを始めてから1か月後のある出来事。

「出身はどちらで?」

狭い個室で女性から質問を受ける。
どうやら僕に興味津々のようだ。

「はい、千葉県出身です」

矢継ぎ早に女性は質問してくる。

「ご家族はいらっしゃるんですか?」

僕にも家族はいる。
正直に答えてあげると、次の質問が飛んでくる。

「小学校はどこですか?」
「中学校は?」
「高校は?」
「大学には行かれたんですか?どこですか?」

学歴が気になるんだろうか。
あまり学歴を気にする人に良いイメージは無いが、正直に答える。

料理が運ばれてくる気配はない。
慣れない雰囲気の中、腹が減った。

「ご職業は?」
「転職歴はありますか?」

一方的な質問責めである。
僕に返す隙を与えない。
しまいにはこんな質問も飛び出す。

「資産はどのくらいあるのですか?」

どストレートである。
ここら辺からもう幻滅してしまった。
世の中には黙秘権というものがあるが、それとなく答えてみる。
まだまだ質問は続く。

「ご趣味は?」
「身長と体重は?」

この女性にはデリカシーというものが無いようである。
根掘り葉掘り聞かれてしまい、裸にでもされたような気分だ。

「質問は以上です。」
「はい。」

やっと終わったようである。
ここから僕のターンといきたいが、さらに女性は被せてくる。

「ではまとめて読み上げます」

女性が僕の答えた内容を最初から読み上げる。
なんて細かい女性だろう。

「この内容で間違いないですか?」
「はい」

「では身上調書についての取り調べは終わりです。午後から事件当日の調書に移ります」
「はい」

女性警官はそう言うと取調室から警察署の外まで同伴してくれた。

「お昼休憩を挟んで、13時からまた入口に来てください。取調室に案内します」
「分かりました」



マッチングアプリで知り合った女性にストーカーをしてしまい、挙句検挙された僕。


今日は人生初の取り調べ。



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