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<猫に見える眼鏡>ショートショート

私は古民家を買って住んでいるのだが一つだけ悩みがある。

ある程度は覚悟していたが、どうにも我慢できない。

そう、虫である。

ただでさえ自然に囲まれていて虫が多く、家の隙間からわんさか入ってくる。

同じく古民家に住んでいる友人からは慣れると言われたが、そんな気がしない。

いつも虫にビクビクしながら生活していたところ、郵便受けにチラシが入った。

『虫が嫌いなあなたに朗報!虫が猫に見える眼鏡発売開始!』

ほう、これは面白い。

早速街の眼鏡屋に買いに行った。

「いらっしゃいませ」
「虫が猫に見える眼鏡を買いに来たんですけど」
「お、チラシを見て下さったんですね」
「そうです」
「では早速準備をします」

そういうと店員は奥からガラガラとプラスチックケースを乗せた台車を運んできた。

ケースの中は・・・・

「うわ、ゴキブリじゃないか!」
「そうです、立派に育った大きなゴキブリです」
「うわー見たくない見たくない」
「早速この眼鏡をかけてみて下さい」

店員が眼鏡を掛けさせてくれた。
デザインは特記すべきところはなく、いたって普通である。

「うわ、本当に猫に見える!かわいい!」
「でしょう。特殊な光線を使用したレンズで虫を猫に変換しているのであります」
「ついつい触りたくなるぐらいかわいいじゃないか」
「いけませんお客様。見た目は猫ですがゴキブリであることに変わりはありません」
「おっと危ない。しかしこれは良いじゃないか。買います買います。」
「まいどあり。色々注意事項もありますので、説明書をよく読んでくださいね」
「ああ、分かりました」

こうして私はまた古民家に戻ってきた。
なるほど、家の中をさーっと見渡すと猫が数匹見える。

まあ猫であればそこまで気にならないものだ。

夜寝ている時も猫が布団に乗っかってきたが可愛いので許す。

ごはんを盗もうとする猫、私の肩に乗っかってくる猫、皆かわいい。

猫の割には軽いが、良い眼鏡を買ったものだ。

晴れた日、庭木の手入れをしていると、花壇に虫がわらわら集まっているのが見えた。

非常に気持ち悪い。

眼鏡屋の店員はレンズの仕組みが光線云々言ってたから、太陽光の影響で効果がでないことがあるのかもしれない。

とりあえず私は超強力な殺虫剤を虫の群れに散布してやった。

数匹逃げ去ったが、ほとんどはピクピクと痙攣している。

ざまあみろと思った。

そういえば眼鏡の説明書を読んでなかったので、家の中に戻って読んでみる。

ふむふむ、なるほど。

『虫は猫に見えるようになりますが、猫は虫に見えるようになります。』



やっちまった。


「ごめんくださーい・・・・・きゃああああああああああああああ」

隣人の奥さんの叫び声が聞こえる。


説明書はよく読もうという話。


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