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TAKIBIの価格設定と、葛藤

ファシリテーター・ライフコーチのまなみです。
「自然の中に学びの場をつくる」ことを目標に、2024年2月から東京都日野市に越してきました。
美しい作品を考え、作り、表すことで学習者の主体性を育み、学習者・コミュニティ・世界中の生命を豊かにする、そんな学びの場をみなさんとつくっていけると嬉しいです。


今回は5〜6月に開催するTAKIBIの参加費をどのように設定したのかお話ししたいと思い、noteを書くことにしました。
↓TAKIBIへの参加はこちらのPeatixページから可能です


TAKIBIは2024年5月現在、一回二時間、参加者全員が必ず声を出す機会がある時間を、4,400円(税込)という設定としています。コラボレーションする回によっては多少上下がありますが、通常価格は4,400円と決めました。
これを高いと感じるか、安いと感じるか、妥当だと感じるか。それは人それぞれ考えがあるかと思います。


私は長らく値段を設定することが大の苦手でした。いや、今でも苦手です。
典型的なサラリーマン家庭で育ち、子どものとき必要だったお金はその時々で母親に交渉して手渡しでもらっていました。自分でお金を稼いだことがあるのは、オランダの女王の日のフリーマーケットくらい。アルバイトを始めたのは大学生になってからでした。
私は人から人にお金がチャリンと渡る現場を、実感を持って見たことがほとんどなかったのです。新卒のキャリアをコンサルタントとして始めましたが、先輩のコンサルタントがお客さんに営業しているのを見て、何を話せばいいのかまったく検討がつきませんでした。そしてそのお金がどうしたら自分の給料に変換されるのか、その仕組みもよくわかっていませんでした。

数字に苦手意識はありましたが、これでは自分の人生をつくれていないという感覚もありました。社会人二年目のときに地図子としてブログを書き始めたことをきっかけに、ZINEという自主制作冊子をつくって売ることを始めます。文章を書くのは好きなのでZINE自体は仕上がるのですが、そこから先に印刷費用を投資して、コミケやZINEフェスなどの参加費を支払って、販売して。個展会場を予約したことも二度あります。今まで5冊のZINEをつくったのですが、どれも恐る恐るほぼ最低価格(最低賃金的な)の500円で設定しました。よく売れたZINEもあったし、いまだに部屋の段ボールに在庫として積み重なっているZINEもあります。それでも誰かが500円で買ってくれる、という喜びを知りました。

次に立ちはだかったのが、コーチングセッションの値付けの壁です。私が通っていたTHECOACHのプロコース(現・インテグレーションコース)では、責任を持ってコーチングを届ける経験を積むために、有償セッションのクライアントを3名集めることが必須条件になっていました。当時の自分としては、色々なアドバイスを受けて少し早めに価格を高く設定してしまった感覚がありました。そんな気負いもあって、プロコースを受講していたときは形ばかりの3名のクライアントとなってしまい、修了後も半年くらいは自信を持ってクライアントさんを募集できていませんでした。たくさんのクライアントさんと出会って経験を積み、すさまじいスピードで資格を取る仲間もいる中で、自分は相当なのろのろペースだったと思います。そんな中、自分を信じてコーチングセッションを受けてくださったクライアントさんに、本当に感謝しています。そしてついに、先月無事資格に必要な有償セッション時間数を達成することができました。価格についても色々と試行錯誤する中で、自分が自信を持ってコーチングを提供できる金額がわかってきました。のろのろだったけれども、一歩一歩積み重ねてきたことは無駄ではなかった。最中はそんなふうに思えなかったけど、ここまで続けてきたからこそそう思います。


これらの経験を踏まえて、今回TAKIBIの参加費についても散々悩み、ビジネスパートナーと何時間も話し合いました。
TAKIBIの全体コンセプトとして、多様な意見が反映される場にしたいという目的があります。多様な方に参加してもらうには無料や無料に近い金額にした方がいいのかもしれません。一方で、TAKIBIの場にいることを、参加者おひとりおひとりに主体的に選択してほしいという思いもありました。そこから生まれたのが「働いている社会人が職場の人と一度飲み会に行く代わりに、普段話さないような人と話す機会に参加できる」というコンセプトです。同時に、もしかしたら社会人の飲み会一回分の金額を捻出するのが難しい方もいるかもしれないと考えました。そんな方でもなるべく参加していただけるように、誰でも必要に応じてプレゼントのように受け取って使えるダイバーシティ割引(くわしくはこちらから)の仕組みを今回から導入しています。私たちが考え抜いた思いが伝わるような使い方がされるといいなぁと思っています。

実はVol. 0はトライアル価格でもう少し安く値付けをしていました。しかし、最終的な売上を見て率直に思ったことは「もう少し売上が立てば、TAKIBIに時間と労力を割いて協力してくれる方にもっと還元できるのにな」という気持ちでした。グラフィックデザインも絶対価値があることなので、もっと気持ちよくお支払いしたい。一緒にコラボしてくれる方にも、コラボしてよかったと思ってもらいたい。自分自身、教育業界全体としてお金が回っていないことを理由に、報酬の話なしにイベントなどを依頼されることもありました。でも業界関係なく、今まで自分がやってきたことには価値があると思っていました。TAKIBIにご協力いただくすべての方にも価値があると思っています。私はそこに応えられるようにできる限りのことをしたい。そう思いました。TAKIBIをみんなで長く育てていけるような仕組みにしたいという思いで、今は4,400円(税込)で設定してみています。


最後に、教育大学院の同級生とのエピソードで、自分のお金への見方を変えた話があります。私がボストンにあるイザベラ・ステュワート・ガードナー美術館に行こうとカザフスタン人の友達を誘ったとき、その子は難色を示してこう言いました。「私、美術品を世界中から搾取して展示してお金儲けしている資本家の美術館には行きたくないんだよね」と。実際にその子は、カザフスタンの伝統的なイヤリングをつけていたり、学部生が頑張って制作していたTシャツを買ったりと、思いを持ってつくられているものを見定めてしっかりお金を払う子でした。私もそのあり方に感化されて、帰国してからはなるべく大量生産されたものではなく、歴史や思いが乗っているものを買うように意識するようになりました。(最近は常滑焼の急須を買ったのですが、コロンとしていてお茶の香りも良く、とても気に入っています)


宝物を掘り起こしたような気持ちになる、常滑焼の急須。


TAKIBIは始まったばかりで、「こんな資格が取れるよ」など、必ず持ち帰れるものを明示できていないかもしれません。そんな中で、私がTAKIBIで目指している世界は、TAKIBIを通してひとりひとりが人生で全うして死にたいテーマを見つけ、それをライフワークにする最初の一銭を稼ぎ、それを発展させられる仲間と出会えることです。実際に近々、過去参加者の思いを乗せたTAKIBIをお披露目することができるかもしれません。TAKIBIを経済的に成り立たせる方法は色々あるのかもしれませんが、可能ならばTAKIBIのその場がつくられた背景や、テーマを持ち込んでくれる方の思いに、参加者ひとりひとりが自分でお金という贈り物を提供することを選んでくれる。そんな場にできたらいいなと思っています。


ここまで読んでくださって、こんなコンセプトで実施されているTAKIBIの輪に飛び込みたい!そんな方と5〜6月で巡り会いたいと思っています。


Vol. 1については、属性的に声をあげることを諦めそうになっているあなたにも、ぜひその声を届ける一歩を踏み出すきっかけにしてほしい。そんな方に松下琴乃さんと私で、多様性や公平性という新しい考え方やコミュニケーション方法をお届けしたいと思っています。


Vol. 2については、一緒に運営してくれている和田正人が人生で達成したい、自分と仕事のつながりについて深堀りする回です。色々なことを考えて転職という人生の転機を迎えた彼だからこそ、今みなさんと一緒に考えられる問いがあると感じています。


Vol. 3については、少子化というテーマを通してTAKIBIの目指す像を体感していただく回になっています。Vol. 0では実際に20代から60代まで、性別や職業もバラバラなみなさんが集うだけでも感動!さらにそれぞれの経験が生きる少子化というテーマについて臆せず話し合われていて、自分にとっても「これこそがTAKIBIだ」と思わされる回でした。


TAKIBIの立ち上げを経験して、世の中で値段設定している人、大企業からエジプトの露店商人まで、本当にすごいと尊敬の念が湧きました。
自分で値段を設定できるということは、自分らしく生きるためにとても大切な最初のステップです。
そのステップを、まずは自分自身葛藤や苦悩も含めてまるっと体現できることを嬉しく思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
TAKIBIの場でお話しできることを楽しみにしています!


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すべての人が組織や社会の中で自分らしく生きられるようにワークショップのファシリテーションやライフコーチングを提供しています。主体性・探究・Deeper Learningなどの研究も行います。サポートしていただいたお金は活動費や研究費に使わせていただきます。