2021おせちについて記録として書いておく(3)
販売実態とニュースがズレる12月中旬
12月中旬、サイトの更新作業をしながら、時折ネットやテレビの報道を見ていて、違和感を感じることが多くなった。
ニュース報道と販売実態とのずれである。
「巣ごもり需要でおせちが人気」
という類の見出しをやたらみかける。
まあこれは別にその通りだったと思う
だが、
「活況」「販売好調」
というところまで行くと若干の違和感を感じてしまう。
供給が追い付いていれば「活況」「好調」という報道もわかるが、ほぼ供給がおいついていないことが明らかだった12月半ばの時点で、この手の用語が出てくるのは何故だ?
という疑問がむくむくと湧いてくる。
あり得る可能性としては
「そういうことにしておきたい心理が働いた」
「予定稿をリアルタイム検証をせずに放出している」
「経済活動を売上金額でしか考えられないアンポンタンor語彙力が貧弱な記者が原稿を書いている」
などが挙げられるだろう。
正直なところ、一瞬コピぺかと思ってしまうほど内容が似通った記事が並んでいた。
売れ筋おせちの例として「個食おせち」が挙げられていることが多かったが、手ごろな価格の「個食おせち」は、11月末あたりにはすでに大半が市場から姿を消していた。
経済系メディア
12月12日付の日経電子版から見ていこう
次は12月18日付ネットメディアLIMOの記事(Yahooにも掲載された)
日経の記事データは11月のものだし、LIMOの記事で出てくる大丸松坂屋の販売ランキングは、12月7日発表のものだ。
取材時期がちょい前なのは仕方ないことだが、12月半ばにだすのであれば、記事公開時に、そのままの文言で公開していいかの状況の再チェックくらいしてもいいんじゃないかと思う。
「活況」「好調」を使っても問題ないのは「供給見込み」があるときか、でなきゃ販売シーズン終了後だろう。
2020年4月に「マスク市場好況」というニュースは流石に見なかったように記憶する(検索しても出てこない)。
ただまあ、上記2つの記事は全文としては比較的穏当な内容だし、文章に不明確な点もない。
LIMOの記事についてはおせちの「一万円以上の高額おせち」という、庶民感覚に抵抗のない枠組みで書かれている。
なので、書き手が意図的な印象操作をしているわけではないように思う。
通信社系の「記事?」
12月7日付の時事通信社のWebサイト時事ドットコムから
時事通信のニュース扱いだが、内容はPRTIMIES経由で公開された大丸松坂屋上野店のプレスリリースそのままである(下記)。
販売企業のプレスリリースとしては特に問題ない内容だろうが、時事ドットコムのニュースジャンル扱いであることに違和感を感じる。
パッと目、一般のニュースと同様にとらえてしまいやすい…と思う。
話題の新製品の発売情報等であればニュース価値もあると思うが…ちとこの扱いは疑問に思わざるを得ない。
ちょっと時期が…の@DIME記事
内容だけ見れば、穏当な記事である。
これが11月末にでた記事であれば問題にすべきところは殆んどないだろう。
だが、公開されたのは12月20日とある。
この記事で大きく取り上げられた博多久松のおせちは、記事公開時点ですでに完売になっていたのだ。
原稿をボツにする勇気はなかったか?あるいは予定稿そのまま公開したか?
新聞社系の記事いくつか
下野新聞 12月21日付
北陸中日新聞 2020年12月16日
すでに「好調」で済まなくなっていた時期である。
2020年21日付の朝日新聞
この記事を、12月21日に公開することに何の意味があるのだろう?
この内容なら年明けでもいいのではないだろうか?
個食おせち完売後のNHKオンライン1人正月特集にもおせちが
12月21日付のNHKの「特集」
ニュースではない特集ではあるが…この時期個食おせちなんて市場になかった…んだが、その点には全く言及がない。
いいんだろか?これ?
末尾が下記
達人たちから聞いたヒントを参考にこのお正月、一回、頭を柔らかくして自分のことを見つめ直してみようかなと思いました。
記事書くときや公開するときも頭柔らかくして柔軟に現実に対応してほしいとオバサンは思う。
末尾の「思いました」の主体は誰?という突っ込みもいれたくなったということもついでにゲロっておく。
やっぱり時期が…の12月22日付FNNニュース記事
12月22日、「おせちがもう買えない」という声がツイッターでたくさん出ていた時期である。
「おせちを囲んでステイホーム」
とうったえるには、時期が残念過ぎた。
謎の多いテレビ朝日の12月18日付ニュース
次に12月18日公開のテレビ朝日の動画付きニュース記事を挙げよう。
取材先は横浜高島屋とあるこの記事、突っ込みどころ満載なのである。
政府がGoToトラベルの全国一時停止を発表してから、高島屋横浜店ではこの3日間でおせちの売り上げが1割以上伸びています。特に高額な商品の売れ行きが好調で、30万円以上のおせちが売り切れているということです。
どこからどこまでが被取材者の発言なのかが不明確なのだ。
そして、GOTOとの関連性は誰が考えたものなのか?これも不明。
GOTO一時停止が政府から発表されたのは12月14日夕刻だが、おせちの完売が目立って増えてきたのは、それ以前のことである。
販売側であれば、その動向はさらに以前につかんでいたであろう。
一見、高島屋の広報担当者が、GOTOトラベル停止の発表との関連まで言及しているかのような文であるが、実態から考えてその可能性は低いと考えられる。
(ネットショップでの変化とリアル店舗での変化は別かも…と思われるかもしれないが、これはほぼ連動している。年末所用ついでに大阪の百貨店、数か所を訪れて確認した)
「高額おせち動向」についてもいささか疑問がある。
「30万円以上のおせち”が”売り切れ」
と
「30万円以上のおせち”も”売り切れた」
とでは、かなり意味に大きな違いが出てくる。
そして、GOTO停止発表以前に、売れ筋価格帯のおせち「も」大量に売切れになっていたのである。
予約終了時期があらかじめ決まっている百貨店では、あまり予想外の早期完売多発は、それはそれで頭の痛いことである。
そんな中で販売側の担当者が「伸びている」という安直な表現をするだろうか?
さらに…
新型コロナウイルスの感染拡大で帰省や旅行を控えて自宅でおせちを楽しむ人が増えるため、年末にかけてさらにニーズが高まると見込んでいます。
「ニーズが高まると見込んでいます」とあるが「供給がおいつきそうもない」というのがほぼ確定に近い段階で、販売サイドがこの表現をするだろうか?
「ニーズが高まると見込んでいます」を使うか?
私の知る範囲では、百貨店のバイヤーさんや広報担当者さんといえば、とても慎重に言葉を選ぶ方が多いものである。
「ニーズが高まると予測されます」
くらいが、が、この時期のギリギリの表現ではないかと思うのだ。
穿った見方をすれば、
「GOTO停止→おせち人気沸騰」という、一見わかりやすい図式に乗せて
「裕福な高齢者がGOTO利用者」という印象を与えようとしていないか?
とも思えてくる。
ちなみに、動画中に映っていたカタログのページは、高島屋おせちカタログ関東版52ページだ。2万円から3万円のおせち中心のページである。高島屋のおせちラインナップの中では真ん中くらいの価格である。
繰り返すが「おせち人気が高まる」と「おせち売上高増加」と「おせち市場が好調」とは違う。
11月末までならその三つは分ける必要はなかったかもしれないが、需給バランスが崩れかけた時期には区分しないと無用の誤解を招く。
実態にそぐわない記事が多発すれば、それは市場を混乱させる効果しかないだろう。
「おせち好調」「おせち人気」を伝えたメディアは市場への影響を考えたうえで、言葉を選んでいただろうか?公開時期を検討していただろうか?
例年、「おせち売り場」の映る報道は、ニュースのオマケで流す季節の風物詩か、変わったおせちが出ればニュースの彩りになる程度の扱いである。
注目する人もさほど多くなかっただろう。
2020年末、巣ごもり需要で情況が変化していたのにも関わらず。メディア制作側がしっかり感知して、情勢に配慮していただろうか?
かなり疑問視せざるを得ない。
12月14日あたりから、「その価格帯はほぼないよ」「このショップ完売」という類の情報を載せるためにサイトを更新しつつ、テレビやネットで流れてくる、「おせち関連のニュース」を眺め、大手メディアの報道への違和感が積み重なるのを感じていた。
元旦公開の東洋経済の記事は好感がもてた
そういった混乱を起こし得ない時期に出た一つの記事がある。
2021年元旦公開の記事だ。
「売れまくったのは高額おせちだけじゃないのでは」とか、「手作り派はどのくらい減ったの?」いう多少の突っ込みどころはあるにせよ、
おせち市場の混乱を起こし得ない時期に公開されたこと、そして、掲載された内容が2020年末の実態と乖離していないことなどから、非常に好感がもてた。
「売り切れたスピードは例年の倍以上で、異常な伸びだった。いくら巣ごもりと言っても、以前からおせちを食べる文化がない人には響かないと思っていた。なぜこんなに売れているのか正直把握できていない」百貨店大手の三越伊勢丹でおせち販売を担当する中本光昭マーチャンダイザーは驚きを隠さない。
三越伊勢丹のマーチャンダイザー中本氏の売り切れスピードに関する驚き、これは納得の感覚である。
三越伊勢丹の中本氏は「12月31日に届けるおせちの配送能力は限界に近く、一部で受注の抑制も行った」と話す。
これもわかる。
当初から冷凍おせち訴求を強化して負荷分散(冷凍は30日着が多い)…というのは、三越伊勢丹に限らずいくつかの百貨店でとられていた施策だった。
さらに、時期によるネット広告の打ち方は、一部の百貨店で例年とはかなり変わったようにも思う。
「販売期間を残して在庫切れの嵐」ではリアル販売現場への負担も大きいし、他方面に影響が及ぶ可能性もある。
東洋経済のこの記事には、販売は好調推移であったものの供給が限界だったことが、現場の声と共にしっかり書かれている。
元旦公開ということは取材時期が年末であることは明らかだ。
商売は商品がなくては成り立たない。
そのことがしっかり踏まえられた丁寧な記事だと思った。
こんどは細かい部分にもうちょっと突っ込んでみてね>遠山記者
とエールを送りたくなった。
まとめとして
例年なら12月29日くらいまで「間に合うおせち特集」を更新するが、今季は結局「モノがない」ことから2020年12月27日で更新を終了した。
実のところ12月21日時点で「モノがない」の嵐が強烈すぎて「ここにはあるよ」は書けなくなっていた。正直更新やめてもよかったくらいであるが、せっかく来た方に申し訳ない。
「お正月なび」は年の半分しか稼働しない、お正月準備に特化した個人サイトだ。
おせちの販売状況もを扱う弱小自家メディアの真のコタツライター(私のデスク下にはデスクコタツが入っている)として、できるだけ真摯に情報を提供していきたいと思う。
煽らず、フェイクせず、来訪者が自分で好みに判断するための各種情報を提供する、そんな方向で頑張っていきたいと思う。
おせち製造、販売、配送、企画等、食材生産等々、各方面で頑張っている皆さんには、心から「ありがとう、お疲れさまでした!」といいたい。
今年もよろしく!
一部では、GOTOトラベルの一時停止発表(12月14日)の影響を報じる。
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