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信じること(外科病棟より)

外科病棟で働いていたときのことです。
外科病棟というのは、手術を受ける前や手術後のケアをする病棟なんですけど、わたしが働いていたところは、主に消化器のがんや乳がんを扱っていました。手術は、腫瘍や臓器をとって、また縫い合わせるっていうようなことをするわけですが、もちろんリスクを伴います。手術前には、どういった手術をするのか、どのくらい時間がかかるものなのか、手術をした後にはどんな状態になるのか、またどの程度のリスクがあるのかなど本人・家族に説明されます。事前にレントゲンやCTで体の内部について検査されていますが、実際お腹を開けてみて分かること、逆にいうと開けてみないと分からないこともあります。臓器の癒着が強くてなかなか取り出せないことや血管や神経の太さや質、走り方も人それぞれですし、出血が止まらなくて手術時間が伸びることもあります。そしてそれが命とりになることだってなくはないのです。出血が止まらないときは輸血が必要で、看護師は手術室からの連絡を受けて血液バッグを何度も運びに行きます。そんなときは病棟の看護師も祈りながら手術を信じて待つのです。

予定時間に手術が終わらない患者さんの家族は、「大丈夫でしょうか?」と心配をして声をかけられます。手術に邪魔にならないよう手術室に手術の進捗状況を聞いて伝えることも私たちの役割です。「出血していて血が止まらなくて時間がのびています。」それを聞いたご家族からは「だいじょうぶですか?!」。そりゃそうですよね。
「心配ですよね。だいじょうぶですよ。一緒に待ちましょう。」いつからかそんなふうに答えていました。自信満々に清々しく。実際には大丈夫かどうかなんて分からない。手術の状況もみてないし。でも本当にそう思っていたんですよね。
信じる気持ちって物事を動かすんじゃないかって思っています。

カリタスプロセス4
真の意味での思いやりのある信頼に基づく支援関係を構築する。
カリタスプロセス8
全てのレベルにおいての癒しの環境を創り出すこと(自分自身もまた環境の一部)。

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書きながら思い出した私の苦い経験。
看護師1年目はICU(集中治療室)にいました。鎮静をかけられて人工呼吸器をつけて眠っている患者さん。重症肺炎という病名でした。常時、血圧や心拍や酸素飽和度などなどモニタリングされている状態。そんな日が何日も続いていて、短い面会時間にご家族が「だいじょうぶですか?」と切羽詰まった感じで聞いてこられた。このときわたし(心の中で)『えっ⁈どうなんだろ?‼︎わからないよっ!!だいじょうぶなんだろうか?どうしよう!!!』と、急いで先輩看護師に助けを求めに行ったってことがありました。そのときのわたしは、毎日そこに横たわっている患者さんがどんな状態なのか全く分かっていなくて、回復しているのかそうでないのか。。そんなことがあって、いま目の前の方がどんな健康状態、健康レベルにいるのかってことに目を向けるようになりました、、とさ?

おしまいです😊

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