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短編小説「たこやきのない世界」
「友達と仲良くしましょう」
「将来の夢を持ちましょう」
「素敵な恋人を作りましょう」
「立派な大人になりましょう」
どれも学校の先生や親や社会から言われたけど、私にはさっぱり意味がわからない。
なんでたまたま同じ場所にいるだけの人間と仲良くしなきゃいけないの?
どうして夢なんてものを持たなきゃいけないの?
どうやったら人を好きになれるの?
どこを変えたら立派な大人になれるの?
生きてるとわから
共食魚骨・断編集「魚の骨は猫でも食べない」
―1―【オメラスの地下牢】
廃墟は嫌いだ、時間が止まってるから……
廃墟は嫌いだ、世界に取り残されてるから……
廃墟は嫌いだ、馬鹿と悪党ばかりが集まるから……
だけど今、そんな嫌いな廃墟の屋上で、呑気にダンボール敷いて寝転んで星空なんか見上げている。
コンクリート1枚隔てた下からは地獄の亡者みたいな、奈落の住人のような、悲鳴にも慟哭にもはたまた絶望にも似た叫びが聞こえてくるけど、下で行われてる
ラニーエッグボイラー 幕間
共食魚/共食魚骨(トモハミイオ/トモハミギョホネ)
<人物>
(ヤクザマンション爆破事件時点での年齢は)22歳、外見は身長150センチで黒髪の地味な女。
本人は究極的に影が薄く、目の前にいるのになかなか気が付かれないほど目立たない。本気で隠れてしまおうと思えば、目の前に居ても一切関知できなくなるほどに存在感を消せる。
一切の映像機器に映らない・音声を保存できない・録画したデータが自動的に破損する・
ラニーエッグボイラー 第10話「宇宙人と人類と卵の三角関係」
こんにちは、母星のみなさま。
こちらは観測できる範囲の限界地点にある銀河の、ようやく生命体を観測できる位置まできました。
そちらは今、雪でも降っている頃ですか?
宇宙は果てしなく広く、宇宙船の外に見える星の光はどこまでも美しくて、最初は田舎に帰ってきたような気持ちになりましたが、今は慌ただしかった生活を懐かしく思います。
これから現地語で地球と呼ばれている惑星に到達するので、気を引き締めたいと思い
ラニーエッグボイラー 第9話「毎日健康卵生活のすゝめ」
その日、中学校で階段から落ちて頭を打った俺はすべてを思い出した。
「俺、異世界転生してんなぁ!」
当時は30年も前で異世界転生というジャンルは一般的ではなかったが、頭の中を駆け巡るかつての故郷の風景は、日本とも地球ともまったく異なるもので、強いていえば文化レベルは縄文時代とかその辺りの時代が近いと思うが、とにかく90年代前半・平成初頭の文明的な街並みとは全然違うのだ。
人々は獣の皮をなめした腰
ラニーエッグボイラー 第8話「雨の日はエッグノックに限る」
「……雨」
昼寝して起きたら強めの雨が降っていた。
こんな雨の日にわざわざ用もないのに外に出たがる人がいないけど、私は別に用はないけど外に出ないといけないので、こういう時は夜眠る用の部屋には直行せず、あえて寄り道なんかしてみる。
そう、私は生まれつき半径30メートル以内で24時間離れず過ごしたものを自然死させる謎の伝染病みたいなものを患っているから、無駄な死人を出さないために起きてる間に過ごす部
ラニーエッグボイラー 第7話「銃と刀と爆発卵」
世界は不平等で満ち溢れてるけど、唯一、銃だけは誰に対しても平等だ。
どんなに弱くても引き金を引けば命を奪えるし、どんなに強くても頭か心臓を撃たれれば死ぬ。他の武器ではそうはいかない、剣にしてもナイフにしても、チェーンソーにしても、投げものにしても、どうしても体格の差や腕力の差が出てしまう。しかし銃は誰に対しても平等でいてくれる。
私は銃が好きだ。銃を握っている時間が好きだし、引き金を引く瞬間が好き
ラニーエッグボイラー 第6話「陰謀論者はフラメンカエッグを食べたら脳が破裂するという信憑性の高い噂」
文明と人間は両輪でなければならない。
しかし現実には文明が発展すればするほど、人間の社会に恩恵の数だけ新たなトラブルを増やすのだという。
というのを今朝、たまたまSNSに流れてきたポストで見かけたのだけど、それは確かにそうだなって思う。特にSNSとかネットの匿名掲示板とかニュースサイトや動画サイトのコメント欄とか見てると、私が言うのもなんだけど、こいつら終わってんなあ、って思うような悪趣味な言葉
ラニーエッグボイラー 第4話「死神といくら盛りのルール」
世界にはバグがあった。
すべての現象には原因があり、すべての応報は因果と結びつき、すべての死には理由があるはずだった。
しかしこの世に完璧な者などいないように世界も完璧な物ではなく、世界には自然的に発生しては消えるバグがあった。
それが突然死。どんなに気をつけていても、どれだけ健康であっても、この世に生きている限りは誰もが突然死ぬ可能性がある。もちろん可能性は低く、健康に気を遣っていれば限りなくゼ
ラニーエッグボイラー 第3話「パパとオムレツ」
わたしのパパはおおきくてやさしいです。
ママはいつもパパの悪口ばかり言っていて、「ぼーりょくクソやろう」とか「ヤクザくずれ」とか言うけど、パパは顔はすこしこわいけど私にはとってもやさしいです。
りこんちょーてーのじょーけんとかで月に1回しか会わせてもらえないけど、だい3にちようびはパパに会える日です。
その日は朝からこうえんに連れていってもらって、ベネディクトといっしょにいっぱい遊んでもらいます。
ラニーエッグボイラー 第2話「主人公になれないモブキャラはタマゴサンドを頬張るしかない」
人生恵まれてそうなシンガーソングライターが、自分の人生の主役は自分だ、とか歌ってるが、そういう奴はそう思えるような環境に生まれてるだけで、本気でそう思ってるわけじゃない。
俺はとてもそうは思えない、ギャン狂でDV野郎の父親とシャブ中の母親の間という、煮詰めたヘドロみたいな環境で生まれたから、本気でそう思うしかないし、そうしなければ一生馬鹿にされて日の目を見れない人生を送る羽目になっちまう。
俺の名
ラニーエッグボイラー 第1話「安藤幸子の固うで卵の流儀」
ある時、誰かが言った。労働は喜びだと。
また別の誰かが言った、労働は虚無だと。
私の仕事が喜びなのか虚無なのかは、正直な話、気分によるけれども、世間一般で苦痛とされる労働よりかは遥かにマシだ。目の前にずらりと並ぶヒヨコを見ていると、そう思わざるをえない。
そう、私はヒヨコ工場で働いている。
ひよこ饅頭を作っているわけではない、あれはあれで見た目かわいいし楽しいのかもしれないけど、私の仕事は饅頭屋で
ラニーエッグボイラー 第0話「宇宙飛行士は半熟茹で卵の夢を見る」
ハロー、地球のミナサン。
コチラは観測デキる範囲の宇宙を飛び出して、もうミナサンからは見えナイ位置にイマス。
ソチラは今、西暦何年で何月何日デスカ?
宇宙は果てしナク広く、僅かな隙間カラ見えル外の景色はドコマデモ真っ暗で、最初は田舎ニ帰ってきたヨウナ気持ちにナリましたが、今はタダタダ気が狂いそうデス。
デスガ、宇宙の果てにはキット何かあるハズなので、気を強く持ちたいと思いマス。
追伸
冷たくテ硬
黒いヒヨコたちに幸あれ~新年度始まりました~
写真は厚揚げ焦がしねぎソース丼です。強く生きるためにも摂取していきましょう、たんぱく質。
さて、今日は新年度の始まり、4月1日でした。
これから様々な苦難や理不尽にぶつかる新社会人たちは「嘘だろ……!?」と今後いくどとなく呟くことになるでしょうが、非情にも嘘ではなく現実なのが悲しいところ。
年度はエイプリルフールから始まってるのに。
今日は心なしか、スーツ姿の新社会人たちを多く見かけた気がしま