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バッグと刀(後編)

近侍バッグをポチり、前回のnote(バッグと刀前編)を書いたら、霧が晴れるように一気にコンセプトが決まってしまった。

コンセプトについては別の記事を書くけれど、方向性は決まっていたものの何かしっくりこなかったという所に、残りのパズルのピースがぴたぴた!とハマるような感覚で決まった。しかも、そのピースはずっと手に持っていたもの、みたいな。手の体温が移ってしまっているくらいずっとずっと持っていたものだった。どこにはめたらいいか知っていたのに躊躇していた。

宇多田ヒカルの
「廻らないタイヤが目の前に並んでるけど
Accel踏まずにいるのは誰だろうね 矛盾屋」
まさにそうだった。

近侍バッグが届く日は、これからも現在の仕事を続けるかどうかに関わってくる、とてもストレスがかかる日だった。なのでその日に届くように頼んだ。
今日帰ったら対面できるんだなと思うと、心の中に爽やかな風が吹いているようだった。これからどんな方向に行くかは分からないが、味方がいるから大丈夫、なんとかなるさという気持ち。

帰りにはケーキを買った。近くのコンビニのやつでもいいけれど、少し歩いて、昔からある地元のお菓子屋さんのものを。これもコンセプトに基づく判断。今日という記念も兼ねて本日のケーキを。色とりどりの季節のフルーツタルト。
配達員の方からバッグを受け取り、一緒に写真を撮り、ケーキでお祝いをした。

自分が今まで持った中では一番高価なバッグで、一番シンプルかもしれない。外側は黒一色でかっちりしていて、内側のみ鮮やかな赤という裏勝り。見えない部分の美学。本革の香りと手触り。スタッズなどの飾りも付いていないけれど、しっかり強さを感じる。
まさにうちの本丸の近侍、同田貫!
小さめサイズながら、同田貫コラボの長財布とパスケースが入り、ポケットも2つ付いていて機能性も抜群!

バッグと一緒に布団で眠りたいなと思ったのは初めてだった。そういえば刀と一緒に寝る方もいると聞いたっけ。

その翌日、一本の電話があった。週末にコンセプトに基づく予定を入れていて、それは当初ZOOMで行われる予定だったのだが、先方の都合で準備が整わないためZOOMは中止、もしくは現地に来てもらうようになる、と申し訳なさそうな声音だった。
迷うはずが無いじゃないか。コンセプトであり、近侍バッグのデビューにもなるのだから。行きます!と即答した。

当日は土砂降りの雨だった。革なので心配だったが、防水スプレーを吹いてハンカチを2枚持って行った。
緊張していたが、近侍バッグがいるので心強かった。そわそわしそうな気持ちを小さいながらもどっしりとした近侍バッグが落ち着かせてくれた。
普段は入れないバックヤード、そこの偉い方との会話、ドキドキもするけれど同時にわくわくした、夢みたいな時間。これからの目標もできた。これもすべてコンセプトが決まっていたのと、近侍バッグが居てくれたので、迷いなく味わうことができたのだと思う。

帰りには気になっていたセレクトショップと百貨店に寄った。
はじめに行ったコンセプトの場所は交通の便がいまいちなため、約3キロほど高低差のある道程をびしょ濡れになりながら歩いた。途中バッグをこまめに拭きながら。
セレクトショップも百貨店も、雨の中歩いた後のくたびれた姿だったけれど、ここでも近侍バッグのおかげで入る勇気を持てた。
ハイブランドの店員さんとのお話はとても楽しかったし、いつか気に入ったデザインのものがあれば持ってみたいと思った。セレクトショップでは店員さんにおすすめされたブランドがとても似合って驚いた。
その後のゴールデンウィークには中目黒にあるそのブランドの路面店へ行き、銀座で試着の旅もした。試着の旅については、こちらも後ほどnote書くつもり。

ちなみに、雨の中合計5キロ程歩いていたので、こまめにバッグを拭いていてもやはりダメージが出てしまった。家に帰ってから色々ネットで調べて応急処置をしたけれど、角度によっては少し分かるかもという感じ。高いバッグに染みを付けてしまった…とかデビューした日なのに…とか落ち込んだし、東京に行くときに修理を頼もうか…と考えたりもした。けれど逆に、あれだけ雨に濡れたのに(風も強くて横殴りの時もあった)、少ししか染みが出なかったのは強いなとか、ちょっと汚れたり傷ついたりでがっかりするのは同田貫じゃないよなとか思ったりもした。その時履いていたマーチンもそうだけれど、おそらく初めてちゃんと付き合う革のバッグと靴だから、失敗をしながらもガンガン使って経験していこう!どうしても気になった時に修理を頼もう!という結論に至った。

近侍バッグを手に入れたら、コンセプトがするする決まり、そのコンセプトに基づく活動がだだーっと始まったため、noteに長文書く余裕がない!という状態に。気がつけばひと月ほど経っていた。
ひと月の間、近侍バッグの他にコンセプトに必要なバッグもいくつか迎えた。初めは同田貫という近侍がいないと心配だったけれど、他のバッグも立派に近侍を勤めてくれた。どうもありがとう。

ほぼ日のカバーは結局使わずにいる。気に入ったものが見つかったらその時にしよう。今までは焦ったり妥協したりして買いがちだったけれど、とりあえず手持ちのものをフルに活用して機会を待つ、ということができた。
ほぼ日にファッション記録を付ける!と最初(4月開始)は意気込んでいたが、今はコンセプトが優先になっているため、ゆるい感じの使い方に変わった。

ゴールデンウィークには東京に行って、がっつり試着の旅に出ないといけない!というくらい追い詰められた気持ちでいたのが、コンセプトの用事ができたらそっちを優先してもいいな、万が一行けなくても地元でコンセプトを楽しめばいいやとまで思うことができた。結局は行けたけれど、試着の旅は予定していた三分の一くらいの量にして、あとはコンセプトにどっぷり浸かった。初めは着物で行こうと計画をしていたけれど、あえて洋服にした。着物はとても好きだけれど着物に逃げたくない、着物も洋服も楽しんでやる!と思ったから。
人生で一番充実したゴールデンウィークだった。

人生が変わった!というと大袈裟にきこえそうで言いたくないけれど、今現在、確かに変わりつつある。今までの、変わりたいけど変われないというジレンマをぶった斬ってくれたのが、私の近侍バッグなのである。