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彼の隣で本を読む、そんな恋をしたい

2年前の春、数年彼氏がいなかった。
コロナが余韻となりはじめる中、まだ独りの寂しさとの付き合い方を知らなかった私は、自分と闘っていた。ひとり時間を充実させようと、よく本を読んでいた。

図書館がすきだった。本に囲まれたあの空間も、たくさん人がいるのに保たれている静けさも、幅広い年齢の人が同じ場所にいることも、すきだった。読みたい本がなくとも歩き回って興味が出たものを数冊借りて、家に置いておく。読まないで返すこともたびたびあったけど、それもすきだった。

この時期はよく一人旅に出掛けた。出先で必ず、図書館を訪れた。
図書館は特徴的な建築物となっていることも多く、想像よりも見どころがあった。図書館の規模で街の大きさがなんとなくはかれたり、中で勉強している人をみて彼らの日常に触れている気持ちになったり。高揚感と少しの不安を抑えながら澄ましている私を、あたたかく迎え入れてくれる場所だった。

寝る前、キャンドルの明かりだけをたよりにして、本を読んだ。ここが現実か空想かわからなくなるほど必死に物語にのめりこんだ。物語が苦しければ苦しいほど、ページをめくる手が止められなくなった。

小学校の頃から、よく本を読んでいた。そのときから図書館が好きだった。地元の図書館にはよく通っていた。図書室もすきだった。どの学生時代も頻繁に通っていたわけではないが、ふと思い出しふらっと寄った。とりわけ、小説がすきだった。

色んなタイミングで本から長期的に離れた。
高校受験、大学受験、サークル、バイト、Youtube、彼氏。

人と密接に付き合うようになると、本から離れるらしい。予定を詰め込んで、暇なときは飲みに行って、気づいたら自分だけの時間がなくなるくらいに忙しくなってしまう。彼といたら、彼とできることをしたい。だから一緒にYoutubeをみたりアニメをみたりごはん作ったり。それが知らず知らずのうちに自分を蝕み、ひとりでいられなくさせる。

彼の隣で本を読む、そんな恋をしたい。

春はお花見にいって草の上で寝ころびながら本を読みたい。夏は花火に行って、始まるまでの間本を読んで過ごしたい。秋は滝と紅葉がきれいなスポットに行って、風を感じて本を読みたい。冬は寒いからこたつでダラダラ本を読みたい。そして、あわよくば、そこにすべて彼がいるなんて、そんな恋を。

そうして今日も私は物語と現実を行き来する。

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