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ideakeysこだわりの1台

今回はideakeys(18キーのマクロパッド)の制作過程とともにこだわりを紹介していきたいと思います。
少し長くなるかもしれないですがお付き合いのほどよろしくお願いします。


作ろうと思ったきっかけ

左 : Autodesk Fusion 右 : Blender

自分はAutodesk Fusion(CADソフト)やBlender(CGソフト)をよく使用します。ソフトをある程度使えるようになってくると効率化を求めショートカットキーを多用するように。しかし、ショートカットキーの位置が遠くにあるため、1度キーボードに視線を落とさないと押せないのが不満でした。また、キーの位置が遠いことで手を移動させないと押せないのも気になりだし、同時押しのキーが押しにくいなども不満として出てきました。この不満をマクロパッドによって解消しようと考えたのがきっかけです。

初めは既製品で解決できないかと思い、次のような条件でマクロパッドを探し始めました。
①テンキーとして数字入力ができる
②キーマップをカスタマイズできる
③macでも使用できる
④右手はマウス、左手はマクロパッドで作業が完結できる
⑤キーを見ないで押すことができる(大きな手の移動がない)

まずは試しにMicrosoft Number Padを購入してみました。

Microsoft Number Pad
Karabiner-Elements

macではKarabiner-Elementsというソフトを使用することでキーマップを変更できることを知ったので、同時押しで他のキーコードになるよう設定してみたりと試行錯誤しながら1ヶ月ほど使用しました。

しかし、同時押しなどをするには不向きなキー配置であるとともにキーマップの変更が気軽にできないことを不満に感じました。
さらに小指の位置にキーがなく、小指が使えないことに少しモヤモヤしました。

さまざまな商品を探しましたが値段が高かったり、キー配置が好みではなかったり、本当に欲しいと思えるものは見つけることができませんでした。

そんな時にサリチル酸氏の記事を見つけました。
この記事を読むまでは自作キーボードというものも知りませんでした。キーボードを自分で作ることができるとも思っていなかったのでとても驚きました。昔からものづくりは好きだったのでとりあえずやってみようと足を踏み入れました。

(これが沼への入り口。
軽い気持ちで足を踏み入れましたがとても深い沼で簡単には出られません。
ここから本格的なキーボード作りが長く続きます。)

キー配置もキーマップも自由に変更できることがわかったので、欲しいものがないなら作ってしまおうと考えました。

自作キーボード自体初めてだったので、corneキーボードを作ってみたり、

foostan氏が頒布されているCorne Chocolate

GL516互換のキーボードを作ってみたり、

minuskanamo_65 CGレンダリング画像
アクリルサンドイッチケースは完成していますが木製ガスケットマウントケースは現在制作中です。

とマクロパッドを作るまでにも右往左往していましたが、これも書き出すととんでもなく長い記事になってしまうのでこれについてはいつか他の記事に書こうと思います。

どんなマクロパッドを作りたいかを考える

まずはどんなマクロパッドを制作したいかを書き出しました
・テンキーとして使用できる
・レイヤー機能を活用し、ショートカットキーをたくさん設定できる
・小指も活用できる
・ホームポジションから大きく手を動かさずに全てのキーにアクセスできる
・レイヤーインジケータLEDを搭載している
・自然に手を置いた位置にキーがくる
・既製品にはないオリジナリティのあるもの

レイヤーインジケータLEDを搭載することによって今どこのレイヤーにいるのかすぐわかるようになったり、アプリごとに違うレイヤーを指定しておくことで活用の幅が広がると考えました。OLEDの搭載も検討しましたが、サイズの問題と画面のドット感が今回のマクロパッドのイメージと異なったため却下しました。

マクロパッドを制作する前にたくさんの試行錯誤をしてきたため、不満点やこうしたいという考えはたくさんありました。

キー配置を考える

キー配置はKeyboard Layout Editorを使い、いくつか検討しました。
検討したものの一部を紹介します。

キーを押す指ごとに色分けした図

どのキーをどの指で押すかを確認しながら配置を検討しました。
人差し指が一番動かしやすかったため、人差し指の担当するキーを少し増やしました。
また、レイヤーインジケータLEDを搭載するためのスペースも考慮して検討しました。
キーキャップを並べて実際に試しながら最終的に一番右のキー配置に決定しました。

キー配置を検討する中で、せっかくマクロパッドを作るのであれば他の人にも使ってもらえるものにしたいという思いが芽生え始めました。
テンキーの数字キーは使い慣れている人も多いと思い、テンキーと同じ数字キーの配置になるようにというのも最終的なキー配置の決め手となりました。

基板を設計する

基板を設計するにあたりサリチル酸氏の著書「自作キーボード設計ガイドVol1設計入門編」を参考にさせてもらいました。自作キーボードも知らず、まして基板設計などしたことなかった自分ですが、この本の通りに進めていけば思い通りのキーボードを制作することができました。
最終的に基板はこんな感じになりました。

回路図
PCB

ファームウェアを作成する

サリチル酸氏の本や、ネットの情報を元にキーボードとして動作するまでのファームウェアはスムーズに作成することができました。

問題となったのはレイヤーインジケータLEDです。QMKのドキュメントにやり方は書いてあるのですが、プログラミングをまともに学んだこともない自分にはどこにどうやって書けば良いのかよくわかりませんでした。(今は少し知識がついたのでこんな簡単だったのかと思ったり、丁寧に例まで示してあり親切だなと感じたりもします。)しかし、制作当初はターミナルなどの黒い画面も怖く、謎の民族の言語にしか見えなかったのです。

そんな自分が頼ったのはChatGPTでした。ChatGPT3.5の無料版を使用しました。ChatGPTにレイヤーインジケータLEDを搭載したいからプログラムを書いてとお願いするとものの10秒で書き上げてくれます。しかし、1回で動くはずもなく5時間ChatGPTと会話を続けやっと動作するものができました。

ChatGPTとの会話画面の一部

エラーが出てはChatGPTに貼り付け、自分の書きかけのプログラムを入れて必要な部分を足してもらったりを何度も繰り返しました。

しかし、何が書いてあるかわからない状態で進めては後のアップデートなどに対応できません。
そこで、何が書いてあるか読み解くことにしました。

ここでもう一度ChatGPTを頼ります。コメントをつけてと言うと、プログラムのこの行では何をやっているかをコメントとして書いて教えてくれます。ChatGPTにコメントをつけてもらい、わからないところはネットで調べるなどし、ある程度理解することができました。

最近のAIは本当にすごい。

キーマップを考える

キーマップの検討も何度もしました。
今自分が使用しているキーマップを例として紹介します。

レイヤー0
テンキーとして使用
レイヤー1
Fusionのショートカットとして使用
レイヤー2
テンキーの記号と矢印として使用
レイヤー3
音量や画面の明るさ変更ブラウジング用として使用

キーマップは今でも変更しながら運用し、もっと使いやすくならないか検討中です。キーマップ検討はとても楽しいです。検討を重ねるごとにどんどん使いやすくなっていくのですから。ぜひideakeysを手に入れたらどんな使い方をしているかシェアしていただけると嬉しいです。

テンキーとして使用する例

数字キーの配置を一般的なテンキーと同じにしたため
一般的なテンキーをお使いの方も移行をスムーズに行うことができます

ケースを設計する

ケースを設計するにあたり、またしてもサリチル酸氏の著書「自作キーボード設計ガイドVol.2ケース設計編」を参考にさせてもらいました。
初めは自分が設計した基板が動くかすぐに確かめたかったこともあり、アクリルサンドイッチケースを制作しました。
こんな感じです。

アクリルサンドイッチケースのideakeys

次にガスケットマウントケースの設計に入りました。ガスケットマウントが打鍵感が良いという噂を聞いて作り始めたので、ガスケットマウントを触ったこともありませんでした。調べるところから始まり、Tofu 2.0を触りに行ったり色々しました。

いよいよ設計開始です。
設計にはAutodesk FusionとBlenderを使用しました。
全部で20案ほど作成し検討しました。全て紹介したいところですが紹介しきれないので一部を紹介します。

キー配置を決めてからケースを作り始めたのですが、もっとかっこよくならないかと
キーの角度を変えたりもして右往左往していました。前に決めていたキー配置にすることにしたのでボツとなりました。いつか木製ケースも作成したいです
個人的になかなかかっこいいと思っていたのですが、実際出力してみると
親指にケースが当たったり、想像より大きく見えてしまうことがわかったのでボツに
大体のデザインはこれで行くことに決定。しかしガスケットマウントを考えると薄すぎる部分があったり強度的な不安があったため修正はまだ続きます。
上面の面積が広いと大きく見えることがわかったのでボツに
面取りの大きさを変更し上面の面積が小さくなるように修正
とても好みの形状になったのですが角が手に当たると痛かったり、
ヤスリで角を落とすとあまりかっこよく無くなってしまったのでボツに

縁の太さが1mm違うだけでも、面取りの大きさを少し変えるだけでも印象は大きく違います。
なるべくスマートに見えるように何度も修正を加えました。

ガスケットマウントにするため構造上必要な部分があったり、インサートナットの埋め込み部分など削れない部分がたくさんありますが、その中で一番スマートに見えるものを検討しました。

ケース制作で悩んだのはCADやCG上で見たものと3Dプリンターで出力したものでは印象が少し変わることです。

質感やライティング、サイズ感の影響もあると思いますが、CGではカッコよかったのに実際出力してみるとイマイチだったりということが多々ありました。
なので実際出力してみてから修正という手順も何度も踏みました。

そんなこんなで好みのケースが完成しました。

カラーバリエーション

ideakeys名前の由来と思い

ideakeysと名付けたのはアイデアを形にする手助けとなるキーボードになって欲しいという思いからです。cadソフトを使う時、CGソフトを使う時、絵を描くときなどにショートカットキーボードとして使っていただけたらとても嬉しいです。また、テンキーを使う作業にも使っていただけたらとても嬉しいです。ショートカットキーを設定して効率化したり、少しでも気分の上がるキーボードとなれれば本望です。

今後の予定

パッケージの制作をし、少量になると思いますが頒布しようと考えています。
頒布方法や値段などは検討中です。
3DPを持っている方であれば基板などのパーツとケースデータを販売し少しでも安くできたら良いなと考えています。ケースとキーボードキットで販売して欲しい、完成品を販売して欲しいなど要望がありましたらXなどで教えていただけるとありがたいです。

最後に

ideakeysを制作するにあたりサリチル酸氏をはじめ、様々な方にアドバイスなどをいただき制作することができました。この場を借りて感謝申し上げます。
今後もキーボードを作っていきたいと思っています。

<自作キーボードを始めていない方に向けて>
自分は自作キーボードというものも知らず、基板設計、プログラミングもできない状態から理想のキーボードを制作することができました。自分にはできないかもと思って作るのを諦めている方はぜひ一度挑戦してみてほしいです。ネットにたくさん情報はありますし、同人誌などもたくさんあります。Discordにはアドバイスをくださる優しい方々もたくさんいます。一歩踏み出してみましょう。楽しい沼がそこにはあります。

拙い文章でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました。
頒布までもう少し頑張ろうと思います。

この記事はminuskanamo_60で書きました。

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