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17年前、おかしい人しか採用しない会社に勤務していた時の話

芸能人や有名人のエピソードで、
「実は昔から繋がりがありました」
みたいなのってよく聞く話だと思います。


一番よく引き合いに出されるのが、才能のある漫画家が無名時代に集結していたと言われる「トキワ荘」。


手塚治虫と藤子不二雄、石ノ森章太郎に赤塚不二夫が同じ建物に住むなんて考えられないじゃないですか。事前審査があってこういう人たちが同じような時期に来たのは偶然じゃないなんて話もありますけど、審査していたにしてもちょっとこれは集い過ぎです。


トキワ荘はあまりにも有名で、これ単体で漫画が出来てしまうくらいの話ではあるんですけど「甲本ヒロトと松重豊が下北沢のラーメン屋でバイト先が一緒だった」とか「その松重豊が有名になった後で隣に住んでいたのが日本代表三笘選手だった」みたいなのもあります。


ちょっとこれ、話が出来過ぎですよね。


私も無名時代の誰かとどこかで知り合う機会ってあるのかな?なんて思っていたこともあったんですけど、ここまでの次元になった人っていうのは居なくて。


CSのスポーツアナウンサーとか、有名ラーメンチェーンの経営者とか、「純烈」の弟分のメンバー(この前話したガッキーです)とか、そういうレベルであれば居ますけどね。「ええっ!?」ってレベルまでは今のところは無いかと。

ただね。


有名人っていう訳ではないんですけど、どうやったらこんなに濃い人たちしか集まらないのか?っていう職場に1年半居たことがありまして、今日はその話をしたいと思います。


新卒の時に福島の学習塾で国語と英語を教えながら運営に携わっていたという話は何度かしてきたかと思いますが、実家の父が脳梗塞で倒れたりと色々あって福島から実家に戻ってきまして。


その色々が落ち着き、東京近郊で職を探そうと動き始めた時に考えたのは、「とりあえず塾以外」ということでした。


さすがにね、31連勤とかヤバいっすよ。


深夜のポスティングとか完全に迷惑行為ですし、入塾を促すために生徒と面談を重ねるとか軽く軟禁行為ですからね。休みの日は予習以外した記憶が無いですし、楽しくてやりがいはあるけど別の会社でも同じことが待ち受けているとしたらこれは耐えられない。

さすがに今は違うと思いますけど、多かれ少なかれ同じ何かがあるのだとすると一生続けることは難しいと思ったのも事実でした。


そのため当時の私は未経験でもいいから、次の強みを身に付けることを優先事項にしました。


塾で覚えた英語という少しばかりの強みに、もう一つの専門性が身に着く業界。そこで考えたのが、IT業界でした。


後で知りましたが、IT業界ってエンジニア志向が非常に強いせいか技術寄りなところで強い方は非常に多いのですが、皆さんそこに特化しているんです。言い換えると、技術以外のところで積み上げが出来ればこの業界で居場所が出来る。私はそう理解しました。


ただ、いかんせん未経験ですからね。今よりは人手もありましたし、最初から正社員というのはハードルが高いと思い、経験を積むためにまずは派遣社員という形で始めることにしたんですよ。


派遣会社に登録して、常駐先として斡旋されたのがサーバやスイッチなど企業の機関システムを商材とする会社で、私はそこで英語も含めた障害一次受け窓口のスタッフになったんです。


やっていることは一次受け窓口なんですけど、職場にはサン・マイクロシステムズ社のサーバとかCisco社のスイッチやルーターも転がっていますし、障害内容や対応を調べていけば自分で勉強することも出来ます。そういう意味で仕事しながら勉強が出来るってことでして。


あと、英語を教えるという経験はあっても実際に仕事として使うという経験は無かったのでそれも魅力的でした。いろんな意味で自分にとって勉強になると思ったんですよ。


そこの職場で私のようなIT未経験者を取っていたのには理由がありました。


機器の性格上24時間365日の対応が必要だったのですが、時間外についてはサーバとかスイッチの担当技術者が一次受け対応も行っていて、彼らの本来の業務を圧迫していたんですね。あと、英語対応を彼らが出来なかったということも問題視されていました。


そのため、全ての時間で専任の一次受け窓口担当者を配備するということになったんですよ。


元々は10人程度で回していたのですが、時間外も含めての対応となるとかなりの増員が必要で、計画通りにサービスを稼働させるには総勢30人規模のチームにする必要がありました。


そうした背景があって、従来の配属者に加えて20人程度増員したんですが…


マジで!?
っていうような人も結構たくさん居たんです。


採用はこのチームのリーダーだったシイナさんという方が全て担当していたんですけど、この規模で増やす関係上いっつも面接やってたんですよ。


で、結構な割合で落としていて。
まぁ全員派遣としての採用なんですけどね。


じゃあ入ってくる人がちゃんとしているか?と言えば全くそんなことは無くて、最たるところで言うと英語は喋れるけど殆ど仕事が出来なくて、最終的に弁当の注文しか1日のタスクが無くなってしまった彼みたいな人も居ました。

でも彼の場合は単に仕事が出来ないっていうだけで、キャラとしては別に普通の人だったんです。


この時期に採用された人は面白くて、二パターンに別れていたんですよ。一目見ただけで明らかにおかしい人と、フタを開けてみたらおかしい人。


どちらにしてもおかしいじゃねえか!


って話なんですけど、シイナさんの採用基準は「おかしい人」なんじゃないか?って思うほど、ノーマルな人って殆ど存在していなかったんですよね。逆にノーマルな人が個性的に映るほどだったんです。


一目見ただけでおかしいっていうタイプの代表例だと、顔中にピアス付け放題の男性が居ました。


片耳にピアス10個くらいなのはもはや普通で、鼻と口とか付けられる隙があれば全てピアスをしちゃうみたいな人でして、でも普通に採用されました。


ピアスをすること自体は自由だと思うし、その是非を問うっていう話ではないんですけど、これは2005年辺りのドレスコード的には完全にNGなんですよ。しかも、面接のときも彼はこのスタイルで来たらしいんです。


普通、この出で立ちだと不採用です。
でも、シイナさんは普通に取っちゃう。


で、面白いのが、採用した後で彼にピアスNGって言っちゃうんですよ。なら採用するなよ!って話なんですけど、彼は反発して普通にピアス付けて出社してくる。まぁそりゃそうなるだろうよって。


あと、フタを開けてみたらおかしかった人の代表例として、Fさんという人が居ました。


この方は英語が堪能でそれが理由で採用された人なんですけど、結構いい歳で。その時点で40歳以上だったはずです。


こういう歳で、しかも英語も堪能。
キャリアを聞いてみると、どうやら会社を経営しているのだと言います。


でも驚くべきはそこじゃないんです。
借金が1億7000万円あるらしいんです。


どうもその会社の運営が上手く行かなくて、昔の野球選手みたいな額の負債を抱えてしまった。で、少しでも足しになるようにということで派遣で仕事を探していた、と。


1億7000万円の借金に対して派遣社員としての年間収入400万円くらいが入ることによってどれだけ足しになるのかはわかりませんけど、でもFさんはそういう目的でこの会社にやってきました。


別に面接の時にそういうカミングアウトがあったわけじゃなくて、これはあくまでも採用後に明らかになったことなんです。


いや。
これね。
どうなってんのよ。


新規配属者が来ると身の上話を聞くのが本当に楽しかったんですよね。一人一人の数奇な人生が交錯して、偶然にも同じ職場で皆出会っている。


だから妙な話なんですけど、職場の仲間同士すんごい仲良かったんですよ。


一目見ただけで変わっている人と、フタを開けてみたら変わっている人と、少数派で普通の人が居て、同じように一次受け窓口の仕事をして。


勿論その職場で働いている人はもうほぼ居なくて、17年も経つとかつての派遣社員たちが自分の会社を持っていたり、音楽プロデューサーをしていたり、それぞれの道を歩んでいるんです。


これ、平成のトキワ荘ですよ。


パッと思いつくだけでもこんな感じなんですよ。確かこの人たち、全員同じタイミングで在籍していましたからね。


・Winnyでデータ横流しにしているのがバレて逮捕された人
・音楽プロデューサーになった人
・仕事中に腹を立てて帰宅中にストーカー行為をした人
・借金1億7000万円あった人
・顔中ピアスしているメジャーアーティスト
・駅前のビルの1Fから10Fまでそれぞれ出禁になった人
・コスプレ界の有名人だった人
・彼女が出来た喜びから整形に数百万使った人


ヤバいっすね。
全員無名人ですよ。


多分この人たちの話だったらどれも1本記事書けます。ご希望があればコメント欄でお待ちしています。

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