なぜマーケティングと組織課題は表裏一体なのか?
こんにちは、桜井です。
普段は株式会社HONEという会社で「地方×マーケティング」をテーマに、地域ブランドを強くするお手伝いをしています。
最近、“【1週間で分かるマーケ講座】「地方マーケティング」の成功法則”をテーマに日経クロストレンドにて連載を書かせていただきましたので、こちらもあわせてお読みいただけると嬉しいです!
さて、本日は冨田憲二さんの「企業文化をデザインする」を読んで印象に残った箇所と、タイトルの「なぜマーケティングと組織課題は表裏一体なのか?」について考えてみたいと思います。
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企業カルチャーは経年劣化する
まず、前提としてなるほど!と思ったのはカルチャーは経年劣化するということです。「文化資本」や「アイデンティティ」といった言葉は風化しにくいというイメージがありましたが、当然ながらこれらは時代によって劣化していく可能性を多くはらんでいるんだと気付かされました。
時代背景として、パワハラなどの乱暴なマネジメントが減ってきたり、LGBTQなどの多様性の受容などによるリーダーシップ・マネジメントの変化による組織のあり方も随分変わってきたように思います。
企業カルチャーも同様で、時代や人の価値観の変化によっていとも容易く経年劣化してしまうものだと思っています。だからこそ、従業員・社会・自分自身にとってきちんと伝わるカルチャーになっているか?は常に考え続けなければならないと思いました。
全体最適と個別最適の圧力の間を揺れ動いている
組織には2つの合理があります。それは「全体最適」と「個別最適」です。会社としては「社会性を持ち、ビジョナリーに経営していきたい」一方で、事業単位では「明日の短期的な売上を上げなければならない」といった側面も持っています。
その他、私が経験した2つの最適化のジレンマとしては以下のようなものがありました。
「上場会社として株主への還元」と「従業員満足度のアップ」
「文化を継承する会社後継としての責任」と「時代に合わせた事業・商品開発の必要性」
「市場に求められていること」と「自分自身が実現したい未来」
それぞれ一方が合っている、間違っている、というわけではなく、極めてグレーゾーンなものが多いことがわかると思います。どちらも間違っていないからこそ、なかなか決断しづらい。そういった類の問題です。
本書にも引用として登場する田中角栄氏の言葉を借りるのならば、
「世の中は白と黒ばかりではない。敵と見方ばかりではない。その間の中間地帯、グレーゾーンが一番広い。そこを取り込めなくてどうする。真理は常に中間にあり」
といったところでしょうか。白黒つけづらい問題をどう着地させていくか?についてはヒューマンスキルが求められるところだと思っています。
「儀式」があった、かつての日本
昨今、リモートワークにより働き方はとても柔軟になってきましたが、一方で人と相対して話す機会が減少しました。
また面と向かって話すというのは単なる情報交換だけでなく、一体感を感じたり身体的な交わりによる仲間意識を生んだりすることができていたのではないかと推察しています。
私自身、新卒入社が2009年だったため、当時はリモートワークなどなく、毎日出社して朝礼を行なっていました(朝7時に来て1人朝練していました)。その結果、同じオフィス・部署・チームに一体感を感じていました。
今では飲みニケーションや対面で話すことは非効率であると避けがちですが、人間と向き合うという本質的なコミュニケーションはロジックだけでは解消できない隠れた課題をも解消できる術であるはず。そこに対面でのコミュニケーションは有効だと思います。
宗教から学ぶ「永続性の本質」
良いカルチャーとはしばしば宗教に近いと言われています。以下はYouTube残っている豊田商事の朝礼(1985年)風景です。
びっくり、というかもはや狂気に近い朝礼ですが、この朝礼を毎日行なっていたらどうなるか?きっとそんな根拠のない自信や希望に溢れていたのではないかと思います。
それも働いている人が「ここで一発逆転する」「絶対に勝ち組になる」という意志を持っていたのなら成果が出るのも頷けます。
メカニズムとしては、「何かしらのマイナスの状態にいる」→「輝かしい未来や希望が見える」→「それらを信じてみる」→「信じた先に同じ未来や希望を信じる仲間がいる」→「同調して同じ未来や希望を信じて行動を起こす」といったものだと思うのですが、これが企業カルチャーととても親和性が高い。
宗教団体が新規入会者に個人宅を訪問させて布教活動をするのも集団としての帰属意識を高めることだと聞いたことがあります。
「個人宅に訪問する」→「当然ながら断られる」→「孤独感に苛まれる」→「宗教団体の一味が励ます」→「仲間意識が芽生え、宗教に帰属させる(友達や知り合いを減らし戻る場所をなくさせる)」といったロジックみたいです。
同属性を高めること、というのは必ずしも悪いことではないと思っています。同じ価値観の人たちが集まれば強い集団となり、困難に立ち向かうことができるからです。ただし、目指すべき未来に幸せになる人がいなければ、それはよろしくないのですが、、。
なんにせよ、「みんなで断続的に(または定例的に)一緒のことをやる」ことは結束力を高めることだと思っています。
カルチャーはトップが実践しなければ意味がない
立場上、経営層は部下を評価する立場にあるのですが、その実、部下からも常に評価されているという意識を持った方がいいと感じました。
というのも、物理的に「経営層→部下」を見るよりも「部下→経営層」を見る方が機会が多いからです(部下の人数が多いので当然ですが)。そのため、経営層がいかに綺麗なビジョンやカルチャーを叫んだところで、トップが実践しなければ部下はすぐに見抜くと思っています。
経営層に言動不一致が起こったらどうなるか?というと、先ほどのような「儀式」「宗教」の集団に懐疑的になる人が出てきます。そうすると、そのネガティブな空気は一部の組織から全体に広がり、集団からの離脱が増えてくるでしょう。
こうなってしまうと強固なカルチャーは実現し得なくなってしまいます。そのため、まずはトップがカルチャーを実践すること。これが求められるのではないかと強く感じました。
余談ですが、弊社の内部に共有しているコアバリューは以下の3つです。
FACT FULNESS(真実ではなく、事実を見よう。データを深く洞察してヒントを得よう。まずは一次情報から取りにいこう。)
SELF CONTROL(自分の機嫌は自分でとろう。怒りも悲しみも喜びも、自分の感情をコントロールしよう。自分に打ち勝とう。)
NEVER GIVEUP(最後まであきらめない胆力を持とう。約束は果たそう。だれかのために力を使おう。)
まず、上記のバリューを私自身が実施しなければならないと思っています。
現場に行き、常にご機嫌で、最後まで諦めない姿勢を持つこと。それが私の会社で求められることです。逆にいうと、たいして事実や実態に向き合わず、感情に支配され不機嫌な状態で、途中で約束を反故にするようなことがあれば斬首刑になります。
カルチャーを経営層が信じきり、いかに実践できるか?が大切なポイントだと感じました。
ギバーとテイカーを見分ける方法
ギバーとはすなわち、「自分よりも大きなものの一部になれる人」という表現がとてもしっくりきました。これは会社だけでなく、会社を超えたコミュニティや社会全体に対しても言えるのではないかと思います。だから従業員だろうが、経営者だろうが、誰にでも当てはめられるはずです。
また、この定義をビジネスに当てはめて考えると以下のような棲み分けができます。
▼テイカー
・ゼロサムゲームを煽る(これをしないと負け組になる)
・短期的な成果を謳う(3ヶ月で月収xx円)
・「誰かと」よりも「自分が得をする」
▼ギバー
・Win-Winを訴求(社会全体の底上げ)
・長期戦であることを謳う(長い道のりであることをあらかじめ伝える)
・「誰か1人」ではなく「仲間と共に」
とも言えるなと感じました。私は常にギバー側でいよう!とも思えました。
なぜ地方企業や斜陽産業で組織エラーが起こりやすいか?
特に3つ目の「成長」によって、それまで隠れていた組織課題が明るみになる、を読んだ際になるほど!と腹落ちしました。組織課題はどこにでもあるものであり、それが売上や成長によってただ「隠れていただけだった」、ということです。
成長や売上停滞になるとポジティブ要因が薄まり、「問題探し」がはじまる。そうなると人は仕組みやルール、市場ではなく、なぜか「チームや人」にいきつく(おそらくそれがコントローラブルだと思っているからだと思います)、結果、成長によって隠れていた問題・課題があぶり出される、という流れです。
地方企業は人手不足・担い手不足による慢性的な問題を抱えています。斜陽産業においても打ち手が見つからず売上減少にあえぐことも少なくありません。となると、組織の問題・課題に行き着くのは至極当然のことだと感じました。
組織課題があるから売上が下がる、のではなく(組織課題というのはいつ何時でも存在している)、売上が下がるから組織課題が目立ってくる、という構図ではないかと思っています。この関係は不可逆ではないかという仮説です。
組織の成功に最もレバレッジを効かせられる変数は「やる気」
「ヒト・モノ・カネ」のうち、最も可変しレバレッジが効くのは「ヒト」だと思っています。結局、モノ・カネについても増やしたり大きくするのはヒトの手が少なからず介在するもの(AIの時代だからといって、完全にAIに依存できないはず)。
そのヒトのレバレッジを効かせるキードライバーが「やる気」である、ということですね(逆を言うとAIにやる気という概念はない)。すごく単純・短絡的に聞こえるかもしれませんが、人間は論理ではなく感情で動く習性を持っているため、「論理的に正しいかどうか」よりも「どれだけ心を動かされるか」によって潜在能力をどこまで使えるか?が変わってくるということだと思います。
「仕組み化できるか?平準化できるか?」を考えるのではなく、やる気を引き出すためにはどうするか?を考え続けていきたいと思います。
人間関係はアルゴリズム化できない
人間関係に「A=x」というような公式はなかなか当てはまらないと思っています。テンションが高い日もあれば低い日もあるわけで、ルールをすべて明文化・可視化したところでうまく行くか?というとそうでもないのが人間というもの。
結局、ダメなら修正して、よかったものは続けて、と細かくチューニングを繰り返しながら情理に訴えかけていく、ということが大切なのかなと思っています。
人間関係はアルゴリズム化、フレームワーク化できるものでないし、そもそもしたくないなぁと思っています。
事業の成長は「組織課題を隠す」
まず、諸説あります!という前提で話をすると、私はこの意見に全面同意です。
「売上はすべてを癒す」というコメントに過去賛同していたこともあるのですが、それは癒しではなく(実際に癒されているのかもしれませんが)、組織課題が一時的に隠れただけなのかなということです。
この隠す・隠れる、という意味合いは「優先度が下がる」とも言い換えられると思っていて、大切なのは売上が上がったからといって組織の課題が解決されるわけではないということだと思います。
根本解決には当然ながら組織に向き合わなければならず、組織とはすなわち働いている従業員、ということになると思います。何がエラーなのか、原因なのか、どうすればより良くなるのか、を一つひとつ解消していくほかないのだと思っています。
私自身、まだ法人化して2期目のペーペーですが、さまざまなクライアントさんや自社の課題に直面し、組織と人に向き合う大切さがわかってきました。
事業成長と組織課題に向き合っています
以上が「企業文化をデザインする-戦略を超えた「一体感」のつくり方-」で印象に残ったポイントでした。
良書なのでぜひ購入いただき、全編お読みいただけたらと思います。また弊社ではマーケティング戦略の伴走支援を行なっていますが、事業成長(ブランドづくり)と組織課題(ブランド成長をドライブするための土台づくり)の双方からお手伝いをしています。
私がこれまで会得してきた知識・経験を詰め込んだBrand Strategy
Support planでは全5回でマーケティングの太刀筋を学べるものになっているため、ご興味ある方はご検討いただけたらと思います。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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