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もう一歩前へ

あけましておめでとうございます。平成も残り僅か、個人的には三年間の厄年をようやく抜けた2019年、ギアを上げて駆け抜けたいと思っています。

2019年ということは、当たり前だけど来年は東京オリンピック。だけど、ここ北東北では全くと言っていいほど気配すらないのが正直な感覚。大局を見つつも、地に足つけて10年スパンで取り組んでいきたい。

2012年から6年関わってきた「のんびり」を春に離れ、秋田に戻ってやりたくて立ち上げた自身のcasane tsumuguとして専念すべく、ゼロからの再スタートのつもりで走り続けた2018年。その中でも昨年力を入れて取り組んできたのが、横手市増田の「旬菜みそ茶屋くらを」の仕事。2018年の大晦日、2019年に新たなスタートを切るべく、くらをの新しいウェブサイトを公開しました。

www.kurawo.net

旬菜みそ茶屋くらをは、昨年、創業100年を迎えた「羽場こうじ」が運営する食事処。この春開催予定の47都道府県の発酵「Fermentation Tourism Nippon」展に向けて奔走する発酵デザイナーの小倉ヒラクも、「全国の町場の麹屋で三本の指に入る麹のクオリティ」と太鼓判を押してくれた、オラが町の誇らしい麹屋のひとつ。

その羽場こうじが、内蔵の町として増田が国の伝統的建造物群保存地区に選定された2013年、新たにオープンさせたのが「旬菜みそ茶屋くらを」です。かつて、秋田県初の水力発電を中心とした電力会社が生まれ、羽後銀行が生まれたこの地域。誤解を恐れずに言えば、そのかつての繁栄の遺跡が、文化財として選定された。増田は、ここから、この遺跡、遺産をどう活用していくかという、新たな歴史を、これからの世代が刻み始めなくてはいけない。

少し話しはそれるけど、くらを女将の鈴木百合子との出会いは、五十嵐前横手市長からお声がけいただいて、横手市のアドバイザーを務めさせていただいた2012年に遡ります。当時、農産物を含めた物産や特産品をどう売っていくか、というところの助言を求められていて、広い横手市を何度も案内してもらったし、市の実験農場やたくさんの加工品も見せてもらった。

当時も既に、耕作放棄地は増え続け、農機具購入のために借金をしながらも先祖代々という理由で田んぼは兼業農家が仕方なくやっているという状況も少なくなく、市としても、都市部の市場を見ながら、比較的高価格で市場投入できる野菜などを模索し、田んぼを畑に転作していくことを推し進めようとしていたように思う(いまもそうなのかな?)。

だけど、ぼくはこの広大な盆地に田んぼが広がる景色をとても美しいと思ってた。いまもそう思っているし、この風景が大好きだ。それは厳しく雪深い冬がもたらす豊かな水の恵みによるものだし、この自然環境に適したかたちが、そのままこの風景を作り上げてきたと思っている。

さらに、横手市のとりわけ平鹿、増田、十文字地域には、酒蔵も多く、電話帳ベースだけでも当時20軒以上の麹屋があった。
 
酒も、麹も、原材料はそう、水と米。

この景色を活かしつつ、経済のことも考えていくならば、なおさら、転作せずに、酒や麹、発酵食品や二次加工品を伸ばしていくべきだとぼくは伝えたけれど、力不足もあって、なかなかそれは叶わなかった。

横手市のアドバイザーを2年務めさせてもらった後、横手市や仙北市のみなさんならご存知の若杉さんと一緒に、横手市某所の市直営施設(毎年数千万の赤字)のリニューアルプロジェクトに取り組んでいた。そこには、温泉、産直と、若杉さんのコネクションで一流のシェフが腕を振るうレストラン、そして、そのシェフに学ぶ若き料理人が集う、発酵を中心とした施設を構想していた。

さらに一般の方も短期〜長期で学ぶことができ、日帰りだけでなく、滞在型とすることで広域から一般の方も学びに来てもらう仕組みや、世界中の発酵に関する図書を集めた発酵図書館なども構想していたのだけど、政治的な理由でプロジェクトは途中で強制終了した。

あれから5年、いまもぼくの基本的な考えは変わっていない。この地域の季候風土が生み出した特徴であり、大きな可能性を秘めているのは、これだけの数の麹屋がいまも息づく「麹」や「発酵」にあると思っている。

昨今の発酵ブームとは無関係に、ずっとずっと昔から、この地域にとって当たり前だったもの。地元では日々の暮らしの中に溶け込み過ぎていて、なんとも思わないのかもしれない。だけど、今回のくらをのウェブサイトのように、情報を丁寧に伝えていくことで、外からの目を獲得し、少しずつ扉を開いていけると信じている。

話しがずいぶん脱線して長くなったけど、まずはウェブサイトご一読いただけたら嬉しいです。まもなく通販ページも開始します。

発酵がつなぐ他の地域、山梨の五味兄、ヒラク、小豆島のケリーちゃんや愛知の宮本さんなど、それぞれが地域に根を張って取り組んでいる日本の宝を、いつか一緒に連携して取り組んでいける日も夢見ながら、2019年、さらに一歩前に踏み出していきたいと思っています。

2019年 元旦

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