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睡眠の質、太陽光、そして文脈依存性。

「日中浴びる太陽光の量が、熟睡に欠かせない神経伝達物質セロトニンの量を調節している」

睡眠の質を改善したい場合、寝具などの睡眠環境に意識を向けるように思いますが、日中に浴びる太陽光の量にも睡眠の質が左右されるのだとすると、睡眠環境に留まらず「そもそもどのような生活をしているか?」という問いを立てることが必要になってきます。

たとえば、もし日中を室内で過ごすことが多い場合、太陽光がどれほど入る環境であるのかが気になってきます。あるいは、少しでも屋外に出るような時間を作るような工夫もあるかもしれません。

「睡眠環境を整える」というのは「点(静)」で捉える一方で、「どのように一日を過ごすか」というのは「線(動)」で捉えるようなところがあると感じます。抽象化してみると、睡眠の質は一日の生活という「文脈」に依存している(文脈依存性がある)と言えることになります。

この「文脈依存性」は何かの事象を捉える時に重要な要素であると思うのですが、文脈はその多元性ゆえに捨象されてしまうことが多いように思いますし、文脈を掘り下げること自体が労力を要します。

たとえば、もし「元気がなさそうだな」と気づいた時、人は「何かあったのかな?」と察することができるのですから、「文脈」に想いを寄せることも本来は難なくできるはずだと思うわけです。

夜ぐっすり眠るための行動は、朝目覚めた瞬間に始まる。私たちが暮らす世界では、明るい時間帯と暗い時間帯を予測することができる。人はそのパターンとともに進化を遂げ、そのパターンが睡眠サイクルをコントロールしてきた。24時間周期で訪れる睡眠サイクルは、日中に浴びる太陽光の量に大きく左右される。日中に太陽光をたくさん浴びるほうが夜によく眠れると言われても、ピンとこないかもしれない。しかし、科学がそれを証明している。

ショーン・スティーブンソン『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』

私たちの身体には、24時間周期の体内時計がある。これは決して空想上のものではない。(中略)24時間周期の体内時計は、脳の視床下部にある「視交叉上核」と呼ばれる神経細胞の小さな集まりで管理されている。視床下部は、体内のホルモン分泌系の要として知られる。この領域が体内のマスタークロックとして機能し、空腹、喉の渇き、疲労、体温、睡眠サイクルを調節するのだ。つまり、睡眠をどうにかしたいなら、頭に意識を向ける必要があるということだ。

ショーン・スティーブンソン『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』

ならば、朝の光を浴びたら睡眠はどのように改善されるのか? 光は、視床下部や光に反応する臓器や腺に「起きなさい」という警告を送る役割を果たす。光、それも太陽光には、日中に分泌されるべきホルモンや、体内時計を調節する神経伝達物質の生成を促す力がある。太陽光が引き金となって、身体にとって最適な量の生成が始まるのだ。一方、日中にあまり光を浴びず、日が落ちてから人工光を大量に浴びれば、夜の熟睡に悪影響が生じる。これは、熟睡に欠かせないセロトニンという神経伝達物質が、光を浴びる量に左右されるからである。

ショーン・スティーブンソン『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』

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