【野菜】最初のベランダでレベル100にする。
「ふぇぇ……たかいよう……」。
近所の野菜ギルドにて、ここ最近の私は狼狽してばかりだった。
原因は明らかだ。
野菜の小売価格の上昇。
「白菜半玉で270円とか冗談だろ……」。
胸中でつぶやく。円安だか天候不順だか知らないが、このままでは指をくわえて見ているわけにはいかない。
野菜を雇って腹の虫を退治する、我々のような”雇い主”にとってこれは死活問題だ。腹の虫を放っておけば、彼らはやがて我々に襲いかかる。何もしなければ死ぬだけだ。
なにか打つ手は無いものか。逡巡する私の横目に、あるものが飛び込んで来た。
「野菜戦士の源」――148円。
「これだ!!!」
大きく手を打ってうなる。一筋の光明が差す。
「ウチで野菜戦士を育成すればいいではないかッッ!!」。
私はすぐさま彼らを迎え入れる準備に取り掛かった。
用意したもの
トマト戦士の源
バジル戦士の源
プランター(直径30センチ、12リットル)
土
支柱
肥料
かかった費用合計 2,673円
世の中には育成に長けた「育成師」なる者が存在する。
育成初心者である私はかれらの英知の結晶である文献を読み漁った。
どうやら戦士によって育成に向いている時期というものがあるらしい。
4月からぐんと気温の上がり始めるこの時期にオススメなのは「トマト」であるという。それも育成が手軽であり私のような育成初心者に向いているそうだ。
ものによっては一緒に育てると良い相性の野菜戦士というものが存在するらしい。
トマトの場合はバジルが筆頭として挙げられる。
今回はこの2つを育成することにした。
さて、さっそく準備に取り掛かる。と言ってもなんてことはない。
プランターに土を入れる。
野菜(の源)を植える。
支柱を立てる。
以上だ。あとは定期的に水をやればよい。時機を見て肥料をやり、葉が伸びれば支柱に括り付けてやろう。
1.プランターに土を入れる。
理想的には、プランターをよく洗っておく、鉢底石という水はけをよくする石を敷くなどの工程が必要らしいが、まぁいいだろう。
とにかく無心で土を投入していく。ただこのとき、土の入れ過ぎには注意だ。あとで水を入れたとき溢れる可能性がある。
2.苗を植える。
(この設定ちょっと疲れてきちゃったよぉ)
先ほど投入した土に、源である苗がすっぽり入るほどのくぼみを作る。
両手の先でぐいぐい広げていく。
苗の容器をひっくり返して、形を崩さないように取り出す。このとき無理に引っ張ったりすると源が傷つくので要注意だ。2時間前ぐらいに水をやっておくと容器から抜けやすくなるらしい。心配な人はやっておこう。
それにしても、こんな貧弱な源から立派な戦士が育つものだろうか。少し心配になる。
先ほど開けた穴に優しく入れていく。
あとは倒れないように上から土を覆いかぶせてやれば完了だ。
根を土になじませるために、あとで水を多めにあげよう。
3.支柱を立てる
最期に支柱を立てる。
立てる場所は苗から10センチほどの箇所が良いらしい。
10センチってよくわかんねぇなぁという人は私のように適当な箇所めがけてぶすぶす刺してもいいだろう。あとで調整もきく。
苗が成長してきたら、茎をこの支柱にひもでくくり、支えてやる。この作業を誘引と呼ぶらしい。勉強になったな。
一週間ぐらいで様子をみながら誘引してやろう。
というわけで、あっという間に完成である。
あとは日当たりが良く、雨風のしのげる場所に置いておこう。
これから屈強な野菜戦士を育成するレポートをここに書き記す。
後報を待て。
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