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「メダカの学校」の波紋は消えない

 社会的活動をしてきた団体が、会員の高齢化で解散する話を、ニュースや私の周辺などで見聞きするようになった。

 「メダカの学校」は、フルート奏者の池田博幸さんが「甲突川にメダカを呼び戻そう」との思いで作った、鹿児島の環境保護団体だ。発足した30数年前、小川を泳ぐメダカを観察しながらの講演会に足を運んだ。自然のメダカが減っていることを入り口に、広い視野での環境問題の話だった。その場で、池田さんに私たちの団体での講演を依頼。しかも話の間にフルートのミニコンサートまでお願いした。

 会当日の1週間ほど前に「会場にピアノはありますよね」と池田さんからの電話。音楽に無知の私は、フルート演奏にピアノ伴奏が必要など知らなかった。電話口では「当日は準備できています」と答えたものの、会場は旅館の大広間、ピアノなどない。中止もやむなしが頭をよぎった。

 大学時代の知人が楽器店に務めていることを思い出し、店まで走った。「そんな無茶な話を」と、彼は困惑顔で手を横に振るだけ。何度も頭を下げなんとかグランドピアノを借りられた。一難去ってまた一難。旅館の廊下や階段は狭くピアノは運べない。ピアノを乗せたトラックが、大広間の外に駐車できると分かり、窓を数枚はずしピアノを室内に入れた。

 「メダカの学校」は一時は400人の会員がいたが、NPO法人はすでに解散。年1回の「メダカのコンサート」も、運営者の高齢化でこのほどFINALを迎えた。しかし「学校」に集った若い「メダカ」たちは、別の「川」や「池」で波紋を広げて泳いでいる。

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