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マツコを正面から30分間見つめ続けた日

マツコ=マツコ・デラックスのことだけど、正面から30分間見つめ続けた。

いつもの黒い丸首のワンピースを来て真っ直ぐ立っていらっしゃる。
テレビでちょっと見かけるだけだと気付かなかったけれど、結構なで肩なんだなぁ。
そして不思議なことにずっと見ていられる。
そんなことを考えながら、右隣にある文字をチラチラ読みながら30分間ずっとマツコ・デラックスの姿を見つめていた。

もちろん御本人ではない。
ライフネット生命の電車内の広告だ。

ドアに一番近い座席の前のつり革に捕まって正面を向いて立つと、
ドア横の座席上部にはポスター2枚分の車内広告のスペースがある。

その日の朝の電車は、
一番端にマツコ・デラックスのライフネット生命のポスター。
その隣は空きスペースになっていた。

そういえば、天井からぶら下がっているつり革広告(ていうのかな?)をすっかり見かけなくなった。
昔は天井からぶら下がるつり革広告といえば、発売日に合わせた週刊誌の広告ポスターだと決まっていた。

ぼやって眺めながら、あぁ今度は◯◯のスキャンダルか、そんなことを思いながら広告をくまなく読んでいた。
スマホもない時代だし、車内は満員なので本を取り出して読む余裕もない。
そんな時はつり革広告は助け船だ。
特に週刊誌の広告ポスターは文字が多いので時間つぶしには持ってこい。

ところが、最近はどうだろう。
ドア横の広告もこの日と同じく空きスペースも目立つし、あってもほとんどが美容クリニックかダイレクト損保じゃないだろうか?

企業側に広告出稿の予算が立たないのか、それとも乗客はほとんどがスマホを見ているので広告効果が見込めなくなったからなのか。
いずれの理由もあるんだろう。

車内広告の代わりに出てきたのが、ドア上部のスペースに設置されたモニターで流される無音の動画。
そのほとんどが何かのCMぽいものが多かったが、
マツコ・デラックスを30分間見続けたその日の朝、乗り換えた各駅停車で見たものはちょっと様子が違っていた。

ヒカキンが次々と変顔をして、
「さてどの変顔をしたでしょう?」
と1番から5番までナンバリングされた漫画の変顔を当てるというなんともバカバカしいクイズだった。

ヒカキンのYoutubeチャンネル動画は見たことがないけれど、小学生が一番の視聴者だというから、なるほどこれは小学生低学年なら喜ぶんだろうなと思って眺めていた。

それにしても、朝の通勤時間帯にこんな子供だましの動画を流す意味がどこにあるんだろう?
この動画はいったい誰が何のために流しているんだろうか?
まさか無料な訳がないし、通常の広告出稿より費用は高額なんではないか?
と不思議に思いながら周りを見やると、窓上部のポスターに
TRAIN TV
と書いてある。

どうやら、これは「ヒカキンからの挑戦状」という番組らしい。
そして他にも4つか5つの番組のバナー・ロゴが掲載されていて、
あなたはどの番組が見たい?
そんな感じのことが書いてあった(ように思う)。

「ように思う」としか言いようがなかった時点で、本当に何かの投票を求めていたとしたら、ポスター効果はないのだけれど、
単にTRAIN TVというものの宣伝なのだったとしたら、それは成功していたんだろう。

なぜなら「TRAIN TVって何だ?」と思ってこうやって検索してnote記事に書いているんだから。

なるほど、車内のモニターでの動画ストリーミングを広告ではなく、インターネットTVチャンネルのコンテンツ上映に利用しようというのは一つのアイデアかもしれない。

地上波TVの凋落は激しいけれど、動画コンテンツが見られていないのかといえばそんなことはなく、
ドラマも地上波のリアルタイム視聴ではなくTVerやNetflixでは見られているらしいし、
Youtubeはもちろん、全世界的にバズを生み出しているのはTiktokのショート動画だ。
動画で訴求するというニーズは本を読まなくなった現代人には合っているメディアなはずだから。

そんな電車内の空き時間の視線をインターネットTVへの誘導に使おうというのはなかなか頭がいい。

なんて、ことをその日の朝の通勤電車で考えていた。
スマホを覗かないというのも色々と発見があっていいものかもしれない。


<了>


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