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読書は一期一会 〜2023年7月分

「読書は一期一会」というタイトルで、毎月買った本を紹介する月例noteを投稿しています。

今回はシリーズ第10回、8月に入って折り返していますが、2023年7月に購入した10冊を紹介します。




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「真珠とダイヤモンド」桐野夏生 (毎日新聞出版) 2023

何を読んでも面白い、安心の桐野夏生さんの新作。
しかし作品世界はとても安心出来ないダークで人間の業を書いています。
昨年の「燕は戻ってこない」もかなりヘビーでしたが、今作はどうでしょう。
1986年の春、証券会社で出会った短大卒と高卒の女性2人が狂騒のバブル時代を駆け抜ける、そんな話のようです。
ほぼ同じく同時代に社会人になった僕にとっては、IT業界と金融業界の違いはあれども横目で見たことがあるような景色が出てくるのでしょうか。
一足先に3日かけて一気読みした相方の感想は「最高」でした。
楽しみです。

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「禍」小田雅久仁 (新潮社) 2023

前作「残月記」もまだ未読なのに、新作が出てしまいました。
本作も凄そうです。
帯の文言や絶賛・驚愕のレビューの数々を目にするだけで、なんだか読むのが怖いです。
「残月記」は一風変わったSFのつもりで購入して積んであるのですが、そんな生易しい代物ではなさそうです。
気合の入っている時に一気に読んでしまわないと危険かもしれません。

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「踏切の幽霊」高野和明 (文藝春秋) 2023

今は空前のホラーブームだそうです。
つい先日出たブルータス最新号も怖いもの特集でした。
夜眠れなくなるので、基本的にホラーは遠慮しているのですが、怖いもの見たさで気がついたら手にとっていたりします。
今作は惜しくも受賞は逃しましたが第169回直木賞候補になっていました。
同じく候補作となっていた冲方丁「骨灰」と2作品がホラー作品として候補にあがっていたことからも時代なのだなぁという感じです。
さて、どちらか1冊を読もうと思った時に、今作「踏切の幽霊」の方が直球のタイトルとは裏腹にさほどホラー・オカルト感はなさそう、ということで選びました。
高野和明さんは傑作「ジェノサイド」から遠ざかっていましたが、あれからもう12年ですか!申し訳ないです。

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「代わりに読む人 1 創刊号」友田とん編集 (代わりに読む人) 2023

不思議なタイトルの文芸誌が刊行されました。
この手の情報少ない新刊は興味津々で読んでみたくなります。
出版社もタイトルと同じ「代わりに読む人」、編集の友田とんさん個人出版社でしょうか。
ますます応援しないといけません。
創刊準備号が出ていたのは認知していましたが、そちらは手に取る機会がなく、この創刊号からのはじめましてとなります。
誰が、何を、代わりに読むんでしょう?どういうこと?
謎は深まります。

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「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」辻仁成 (マガジンハウス) 2022

世代的に辻仁成さんはエコーズのVoとしてよく聴いていた方です。
作家の辻仁成さんはよく存じあげなかったのですが、
(「けっ!作家になっちゃったよ」と僕も若かったので斜に構えて見ていました)
それから中山美穂さんとご結婚されたことも驚きましたが、フランスに移住され、お一人でシングルファーザーとして子育てをされていたこともなんとなくニュースで漏れ聞こえてきていました。
そんな辻さんが小説ではなく、ご自身と息子さんとのフランスでの二人三脚の生活を書かれたものと知り俄然読んでみたくなりました。
父と息子ものにはどうも弱くて。

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「あなたは月面に倒れている」倉田タカシ (東京創元社) 2023

新しいSF作家さんですよね?
倉田タカシさんのことはこの本までは存じあげませんでしたが、最近の国内SFも、新しいムーブメントが起きているようでなんだかわくわくします。
柞刈湯葉さんの「まず牛を球とします。」とか、
北野勇作さん「かめくん」とか(あ、これはもう20年以上経つのか!)
もちろん見た目も文体もバリバリゴリゴリのハードSFもいいんですが、普通の生活と地続きで力の抜けた感じながら、作品世界の設定がどこかおかしかったりぶっ飛んだりしている、そんなSFらしくないルックをしていて、実はヤバい、そんな肩の力が抜けた(ように見える)作品たちが増えているように思います。
僕の少年自体、中学生でもとっつきやすかった星新一にSFの世界に引っ張り込まれたように、そんな作品が増えればいいなぁ、と思っています。
(まだ未読なので、完全に雰囲気だけで書いています。全然違っていたらごめんさない)

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「考える脳 考えるコンピューター [新版]」ジェフ・ホーキンス (早川書房) 2023

新書が3冊。
まず最初の「考える脳〜」は、先日からシリーズで読んでいる生成AIとChatGPT関連本の流れで入手しました。
AI研究はそもそも人間の脳を作ろうとして研究されてきましたが、本作は脳の仕組み、アルゴリズムから紐解き、果たしてコンピュータがその代わりになることができるのか?そういうような話だと想像しています。
松尾豊さんの推薦があるので間違いないでしょう。

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「現実とは?脳と言霊とテクノロジーの未来」藤井直敬 (ハヤカワ新書) 2023

2冊目もその流れから。
脳の働きとコンピュータという対比からもう一段階上がって、「現実」とはそもそも何なのか?何が充足されれば「現実」として認識される=脳を騙すことができるのか?
AIに並んでVR、ARなどの「仮想現実」を構築するテクノロジーがこれからどんどん出てくると予想できます。
いや、Apple Vision Proの発売が、iPhoneにより携帯電話というデバイスの概念そのものが激変したように、VR/ARが確実に生活の一部に入り込んでくるでしょう。
そのための基礎知識として読んでおきたいな、というのが選択理由です。
それにしても、ハヤカワ新書のタイトルは刺激的なものが多くていいですね。

「言語の本質」今井 むつみ, 秋田 喜美 (中央公論新社) 2023

こちらも生成AI〜ChatGPTと近からずとも遠からず。
そもそも「言語」とは何なのか?
それを「オノマトペ」の研究をベースに切り込んでいくというとてもユニークなアプローチの、とても評判のよい書籍なので、
これは読んでおかないと、と選択した一冊です。

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さいごに

2023年はじめての「読書は一期一会」でした。
なんと、今年に入ってからすっかり連載を休んでしまっておりました。
新年から少しだけ本を買うのを控えていたので(*)、そうした関係もあってリズムが狂っていました。
いかんいかん。
今月からまた記録として書いていきます。

(*) このあたりの事情については「加齢で読書ペースが落ちて積読が溜まってくる話」というタイトルで以前noteしました。


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