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『砂漠の空堀』


ほとんど砂漠と言っていいこの大地に

俺たちは延々と深い溝を掘り続ける


国の定めに反したとして捉えられた

そんな俺たちが

大嫌いな国を守るため

空堀を造るのに手を貸さなきゃならんて




徴税官吏の目を盗んで俺は

納める野菜の目方をごまかした


運悪く俺は捉えられた

村ではほぼ唯一の働き手だった俺


親は老いぼれて

妹たちは幼い


隣の家族も病人を抱えている

そのまた隣も…




しかし故郷へ帰りたい

そんな郷愁に浸る猶予すら

俺たちには与えられていない


もう何日になるだろうか

天が高い


作業の始めにいた連中の

もう半分ほどに人手は減って


酷暑のなか

ろくにのまず食わず


豆が数粒と水が茶碗一杯

おとついの晩だったか




村にはもう一人

俺よりひとつ年上の男がいた

俺以上に身体が丈夫だった


奴もまた徴税官吏を

この国を

目の敵にしていた


ただ奴は少し頭が足りなかった


官吏の着物がえらく高そうなので

振り向いた先に袖をちぎろうとした


まもなく取り巻きに首を刎ねられた


奴は頭が足りなかったばかりに

家族の眼前で瞬殺された

なんとも惨たらしい最期よ




意識が朦朧とする

喉はこの砂地と同じく

とうの昔に渇ききって


それから容赦も間断もなく

日差しは俺たちを差し続ける


手足がしびれてきた

意識が朦朧とする


つい鍬を落としてしまう

まもなく俺はここでくたばる


空堀造営作業を見守る

官吏が俺に

怒号を浴びせるのが聞こえる


ただ俺は耳を貸そうにも

身体を動かそうにも

どうにもならない


無理くり立たされて

鍬を握らされる




待てよ頭が足りないのは

俺のほうじゃなかろうか


俺もスパンと

首を刎ねられていれば

今頃どれだけ

安らかだったろう




空堀ができるのは

いつの日になるやら


そんなこと俺には

関係ないのだが

















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