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仲間旅に必要な覚悟とは (一人旅か仲間旅・その4)


お待たせしました。さて最後は仲間旅について!
あるよ。たくさんある。仲間がいて、いいことはすごくあるよ。

現実的な側面からすると、なんといっても仲間旅はワリカンが効く!
とくに部屋代。宿泊費をみんなで割れるのは、長旅であればあるほど経済的にものすごく助かる。
日本のホテルや旅館は頭数で宿泊費を取るのだが、海外の多くは部屋数で請求するところが多い。たとえば日本だと3人×1000円という計算だけれども、海外だと1部屋2000円だから3人で泊まろうが、2人だろうが1人だろうが2000円は動かない、ということだ(もちろん、限度を超える人数だとエクストラ・ベッド代を取られるけどね)。そうすると一人旅って……と思ってしまうことも、しばしば。
ベット泊のドミトリーは別として、ホテルを利用するなら仲間旅のほうが断然お得だ。

レストランもしかり。食べ物を上手にシェアすると何種類もの皿を味わえるので、その土地のいろんな味覚を一度に体験できるというお得感アリ。
また、自炊可能の宿では、食材があまりにくいのも大助かりだ。一人だと多すぎる材料も、複数でワリカンにするとかなり効率的だ。

ほかにも「自分はバスチケットを買いに行くから、君はマーケットで今晩の買い物してきて。そして君は洗濯」なんていう作業分担ができれば貴重な時間をぐっと短縮できる。
また一人が重い荷物を見ている間に、もう一人がトイレなどの用事を済ませられるのも仲間がいてこそ。一人旅だと自分で背負って個室に入らなければならない。荷物をトイレの外に置いて用を足すなんて危険なことはしては絶対にダメだからだ(盗難の危険だけではなく、テロリスト容疑をかけらることもある。実際に私と空港内で別行動をしたツレが爆弾テロの容疑者に! in シャルル・ド・ゴール空港‼︎ 空港封鎖でジャンボ機を3機止めたよ……)。

また、ガイドブックや虫除けスプレー、蚊取り線香、シャンプーのボトルなど、かさばるけど一つは必要なものも、どちらかが分担して持っていればそれだけ荷物も軽くなる。
慣れない食べ物で食あたりを起こしたり、ひどい風邪をひいたりだの、ふいの病気にダウンしたとき。誰かが側にいてくれるありがたみというものは、何ものにも変え難いものだろう。水ですら外出しないと手に入らないのだ。寝込んでいる自分のために、ミネラルウォーターや消化にいいビスケットなどを買ってきてくれるだけで落涙ものだ。
そしてなんといっても、非常時。誰かがスリに遭った、怪我をしたなどトラブルに遭遇したときに、もう一人が助けを呼びに行ったりポリスに駆け込んだりと、いざというときは助け合える強みがやはり仲間旅にはあるのだ。


精神的な側面からいうと、シンプルに一人じゃないって寂しくない。
下手するとまる一日以上かかる長い長い移動時間も話していると退屈しない。毎日の食事が、そして毎晩の酒が、ポツンと一人ではなく和気あいあいとするのもいいものだ。
さらに、ちょっとお高めの入りづらいお店なんかも、シーンと静まったお店なんかもずっと気軽に入れるというもの。

そして心細さも半分以下。みんなで行けば怖くない。
先にも触れたが、どんなに一人で隙なく振る舞ったとしても、旅人から何かを奪いたいという悪い輩にとっては、一人のほうが物理的に押さえ込みやすいのだから、誰かと旅をするほうが安心するというものだ。同行者が旅慣れていたらなおさら心強い。

以前の話の裏を返すようだが、旅の感動や体験を分かち合えるもいい。
美しい風景、素晴らしい出逢い。お互いに語り合って確認し合うことで、感動を深め合うことができる。ともに手を取って笑い合い、泣き合い、そしてときには喧嘩し合うことでさらに強烈な印象を残すかもしれない。それは忘れ得ない、得難い瞬間だと思う。
そして旅から受けた感銘も人によって様々だ。自分にはない視点も得られるかもしれない。一人で堂々巡りだった考えも、話してみると案外すっきりと解決するかもしれない。
さらに旅先で困ったときは、三人寄れば文殊の知恵。何も三人でなくとも二人でも、一人よりはグッドアイデアも出てくる可能性も高い。


ね。いいこといっぱいでしょう? しかしここだけは心して欲しい。

旅は、日本のカフェや居酒屋で落ち合ってほんの数時間、飲んだり喋ったりするのとは次元が違うのだ。
長期で一緒に旅をするということは、もう「共同生活」をするのとまったく一緒。降り掛かる困難をともに乗り切り、いくつもの選択肢を相談しながら選んでいく。相手が友だちだか恋人だか知らないが、もう「同棲するような覚悟」で望まなければならない。

二泊三日程度の旅ならいいだろう。だいたい人の忍耐は三日ぐらいは持つのではないか。私はそこらへんが限界。しかし二泊三日が成功したからって、長期旅行がうまくいくわけではないことを肝に命じてほしい。

お互い元気で気力に満ちていれば問題も少ない。笑いも起こるし余裕がある。でもリゾート地でのバカンスと違って、放浪の旅はとはときとして体力的にも精神的にも疲れることがある。
疲れている人間というのは、どうしても言葉や態度が雑になり、視界が狭くなる。つまり自分本意になって、相手の気持ちや体調を思いやる気持ちのスペースがなくなる。
そこを踏みとどまって、心が狭くなりそうな自分をよくよく自覚しつつ、同様に疲れている相手のことを思んばかる。そういった、こちらの器も問われるというものだ。ある意味、そこは修行と言ってもいいかもしれない。
居酒屋やカフェで上機嫌でいるときとは違った、普段は見せない意外な側面を許し合っていかなければ旅は続かない。

そして相手の趣味志向にも、ときには寄り添う。
お互いの趣味がバッチリ合えばいいけれど、そうでない場合は全然興味がないことにも付き合っていかなければいけない。あまりにも志向が正反対だと、旅の自由時間のうち半分は相手のために捧げなければならない。
高額なチケットを買ってはるばるやってきた海外で、毎日高いお金を支払って生活しているのだ。できるだけ無駄なことに時間やお金をかけたくないのが人情だ。相手合わせる状況が苦痛になってしまわなければいいのだが。

もしエステ巡りをしたい人と博物館巡りをしたい人とでは同じ街中でのことだから、お互い別行動するという手立てもある。だが海に行きたい人と山に行きたい人。さらには自然が好きな人と都会が好きな人なんて、もう目的地が違うのだから十分話し合いが必要だ。ていうか、無理なのでは? その場合はあらかじめ話し合って、お互い納得してから行かなければならない。

金銭感覚も近くなければ、お金を掛けたくない場所に掛けなければいけないストレスも生まれてくる。
「そんなに高いところに泊まりたくない」とか、「せっかくの旅なのに。こんなショボい宿なんてやだよー」とか。「その国のグルメを味わい尽くしたい」だとか、「メシなんて、なんでもいいよ」など、お互いの予算や価値観に大きな隔たりがあると厳しいものだ。

あるいは「ワリカンっていうけれど、おまえ、めちゃくちゃ食うなぁ」という人と、どう折り合っていくか。「また食べるのか」とか「さっきカフェで休んだばかりじゃない。また入るの?」とか、「酒代がかかりすぎるよー」とか。
長期間だとそんな悩みもチリが積もって多額になるので、話し合っていかなきゃ先に進めない。

さらには基本的に虚弱体質の人が、丈夫だけが取り柄です! といった、元気でドンドン先へ進みたい相手に合わせられるか。その反対もしかり。
体力差というのも、長期ともなると誤魔化せない大きな壁なのだ。同様に、男女差というのも頭に入れておくべきかもしれない(女のほうが強いときもあるけれど)。

日本では豪快に見えた相手が本当は心配性で、海外ではいろんな提案を却下してくることもある。また自分は慎重に旅を進めたいのに、不用意に突き進む相手かもしれない。人によってバランス感覚はすべて違う。どっちが正しくて、どっちが悪いなんていう判断はできない。単に性格の違いなのだ。しかしその違いが大きなストレスだとしたら、その隔たりは帰国までにもつかどうか、それとも許しあえるものなのか。
成田離婚の仕組みが、うすらぼんやり見えるような気がする。

妥協。我慢。でも自分を押し殺さない。きちんと相談する。そして許し合う。
これらができる者同士でなければ先へ進めない。旅の仲間とは、リスペクトがなければ成立しない運命共同体だ。上下関係があると、どちらかに負荷がかかる。これは大げさに言っているのではない。

「ちょっと合わないみたいだから、もう一緒に旅をするのはよそう。ここから別行動で。そんじゃ! グッドラック!」と、お互い、個人旅行をする力量があるもの同士だったら、別れることも可能だ。けれども誰かが初めての海外だったり、一人はいやだといったら別行動もできないのだ。
なので、よくよく気心が知れた人と行ってほしい。

反対に結婚を視野に入れたカップルは、大いに推奨、二人旅。
わかりやすく困難が立ちはだかるわけなので、疲れるとこんな態度になるんだとか、いつもお行儀よく品がよかったけれど、実のところかなりガサツだったとか。こんな金遣いなのねーとか、どケチだったとか。いざというときに相当頼りになるとか、自分を置いて一人で走って逃げた! とか。一人じゃ何にも決められないじゃん! だとか、オレ様感が過ぎる、だとか。他人の強引な押しに弱いとか、人に質問できない性格だったとか。
普段の楽しいデートではあまり出てこない、生活感あふれる一面が出てくるので、結婚相手にふさわしいかどうかは、ここでリアルに判断することができる。人生をかけて結論を出す前に、まずは旅先で検証してはどうか。

私も婚前に、旦那さんと何ヶ月も旅をしてみました。そして帰ってきてから結婚したのだから、まぁ、いろいろな面でお互い妥協……いえ、協力しあえる相手だったということでしょう。

グッドラック!



ここまで読んでくれただけで、うれしいです! ありがとうございました❤️