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YouTube朗読〜青空文庫編〜

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短編小説、童話、詩、随筆など2〜15分くらいのお気に入りの作品の朗読しています。作品にまつわるエピソードも。
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記事一覧

古川緑波「氷屋ぞめき」

本日は古川緑波「氷屋ぞめき」を朗読しております。 名エッセイストでもあった喜劇役者古川ロッパが、夏のひんやりした食べものについてシャキシャキと語っています。 黄色いアイスクリンのことや、東京と大阪の氷の違いなど。 ところで、「ミルキン」「すいと」って、なんのことか、あなたはご存じですか~? 古川緑波の作品は他に、「うどんのお化け」「色町食堂」も朗読しております。 あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。

アポリネール「青い眼」

本日はアポリネール「青い眼」(堀辰雄・訳)を朗読しております。 修道院の廊下で、こちらを見つめている青い眼とは…? フランスの修道院で暮らす少女たちが、塀の向こうの遠くから聴こえてくる角笛の音をきっかけに娘として目覚めていく様子が、あやしく、美しく、瑞々しく描かれている短編です。 ギヨーム・アポリネールといえば、ピカソやアンリ・ルソーとの交流、そしてなんといっても、マリ―・ローランサンとの恋を思い出します。 彼女との恋の終わりをうたった名詩「ミラボー橋」は、シャンソン

芥川龍之介「沼」

本日は芥川龍之介「沼」を朗読しております。 「おれは沼のほとりを歩いてゐる。沼にはおれの丈よりも高い芦が、ひつそりと水面をとざしている。おれは遠い昔から、その芦の茂った向うに、不思議な世界のある事を知つてゐた。いや、今でもおれの耳には、Invitation au Voyage の曲が、絶え絶えに其処から漂って来る」 …作中に出てくるこの「Invitation au Voyage」(旅へのいざない)はボードレールの詩で、アンリ・デュパルクが曲をつけた歌曲。「おれ」は、沼のな

原民喜「椅子と電車」

本日は原民喜「椅子と電車」を朗読しております。 ラストの男のつぶやきに、全幅の共感を私は抱いてしまいます。 特に「止まることのない電車」というのはステキ。 比喩ではあるのでしょうが、私なんぞは現実的に、心地よい天気の日に心地よいゆれに体をゆだねていると「このままずっと乗っていたい。どこにも着いてほしくない」(笑)と思うのであります。 小学生のときの夏休み。東京から2時間ほどの伯母の家に泊りがけで遊びにいくことになりました。それ以前に伯母の家にいったときは父か母といっしょで

竹内浩三「五月のように」

竹内浩三「五月のように」を朗読しております。 「なんのために生きている」「どう生きるべきか」…といった自問に、真っ直ぐに、正直に自答し、他にも呼びかけている作品です。 五月の陽光が後押ししてくれるこの理想を、人々は、いったいどれぐらい、実現することができるのでしょうか…。 竹内浩三の詩はほかに、 「金がきたら」「横町の食堂で」「夜汽車の中で」「十二ヶ月」「雨」も朗読しております。 あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。

岡本かの子「五月の朝の花」

本日は岡本かの子「五月の朝の花」を朗読しております。 「お洒落でつつましやかで、おとなしくてお済しで、群っていても実は孤独で、おっとりしていてもなかなか怜悧で。しのびやかにしかもはればれと桐の花」 「うるんみ始めた」五月の空を背景に、ひとつの花をこんなふうに描くことができるかの子の眼に、思わずうなってしまう作品です。 その「眼」で見つめている他のさまざまな花たちの表現も、なんと美しいことでしょう。 岡本かの子の作品はほかに、「巴里のむす子へ」(岡本太郎に向けたものです)

桜間中庸「月夜のバルコン」

本日は桜間中庸「月夜のバルコン」を朗読しております。 薔薇の家のバルコニーから月を眺める…そんなシーンに私は縁がないワなんて思いつつも、何度も何度も読み返しているうち、なんだか自分も薔薇の香りに包まれて、蟻や蝶や風と話しているような気になってくるからフシギ…そんな、短い、短い詩です。 詩人であり童謡作家であり児童文学者である桜間中庸は、早稲田大学在学中に、故郷で病にかかり、二十代で夭逝しました。 桜間中庸の作品はほかに、「動物列車」「赤い電車」「獏」も朗読しております。

牧野信一「雛菊と雲雀と少年の話」

本日は牧野信一「雛菊と雲雀と少年の話」を朗読しております。 野心や羨望の気持ちなどは少しも持たない雛菊のありようが、驕り高ぶったり傲慢であったりする牡丹やチューリップとは対照的に、清々しく描かれています。 そんな雛菊の美しさを見出し、雲雀は心惹かれるのでした。 さて、ふたりを待っていた運命とは…? 牧野信一は私の従伯父(いとこおじ・父の年嵩の従兄)です。 牧野信一の作品はほかに、 「地球儀」「香水の虹」「ライス・ワッフルの友」「街上スケツチ」 「どうしたら私は憐れな彼女を

太宰治「待つ」

本日は太宰治「待つ」を朗読しております。 他人や社会とうまくやっていけない主人公が抱いている、不安と焦燥と偽善的使命感とおそれ。その奥にちろちろと小さく燃えている甘美の炎を自覚しながらも、ただ待ち続けているだけの彼女は、おそらくわかっているのでしょう。誰も、なにも、迎えになんてこないことを。 …ラストのしめ方が、こわく、うまい作品です。 太宰治の作品はほかに、「黄金風景」「秋」「メリイクリスマス」「春昼」「海」「リイズ」「雪の夜の話」も朗読しております。 あわせてお楽し

小川未明「赤い魚と子供」

本日は小川未明「赤い魚と子供」を朗読しております。 「花を食べてはなりません」「魚をとってはいけません」…「いけない」と言われると、そのことが余計したくなってしまうのは、人間も魚もいっしょなのでしょうね。 さて、「いけない」ことをしてしまった彼らは、その後…? 小川未明の作品はほかに、 「希望」「野ばら」「金の輪」「一粒の真珠」 「熊さんの笛」「どじょうと金魚」 「赤いろうそくと人魚」「冬のちょう」 「雪の上の舞踏」「飴チョコの天使」 も朗読しております。 あわせてお楽し

国木田独歩「初恋」

本日は国木田独歩「初恋」を朗読しております。 ガンコな老人とナマイキな少年の勢いのあるやりとりと、 ラストの、やわらかでほっこりしたまとめ方が好きな作品です。 作中の孟子や孔子の言葉について、その意味を記しておきますね。 「君、臣を視ること犬馬のごとくんばすなわち臣の君を見ること国人のごとし」 (主君が家臣を犬や馬のように扱えば、家臣も主君をやからとみなし敬わなくなる) 「君、君たらずといえども臣もって臣たらざるべからず」 (主君に徳がなく主君らしくなくても、家臣は臣下

新美南吉「明日」

本日は新美南吉「明日」を朗読しております。 なんと素直で、けがれなく、肯定的な詩であることか…。 この詩のうちの一行でも、信じられる自分でありたいなと思うとともに、 そのような「明日」をつくるために、少しでもなにかができる自分であればいいな…と思うのであります。 新美南吉の作品は、ほかに、 「うた時計」「飴だま」「木の祭り」「二ひきの蛙」「ひとつの火」「蟹のしょうばい」「去年の木」「子どものすきな神さま」「巨男の話」「一年生たちとひよめ」「手袋を買いに」も朗読しております

山川方夫「予感」

本日は山川方夫「予感」を朗読しております。 ラストを、「裏目に出た」ととらえるか、「運命からは逃れられなかった」ととらえるかは…あなた次第。 ショートショートのひとつのかたちとしてのお手本のような作品です。 山川方夫の作品はほかに、「十三年」「トンボの死」「朝のヨット」「箱の中のあなた」「あるドライブ」「暑くない夏」「他人の夏」「メリイ・クリスマス」「非情な男」「愛の終わり」も朗読しております。

原民喜「青空の梯子」

原民喜「青空の梯子」を朗読しております。 こんなに短いなかに…季節の豊かさとそして、ちょいと学校をサボっちまったひとりの少年が抱く、先の人生への不安と夢想とを絡めて込めることができるなんて、じつに見事ではありませんか。 タイトルもかっこいいですね。 原民喜の作品はほかに「気絶人形」も朗読しております。 あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。