30歳の呪い
30歳になった日、
生きている心地がしなかった。
時計がてっぺんを指した瞬間から、「誕生日当日中に死ぬ」という事実がそこにあるような感じがした。
背後がひんやりとしていた。例えるなら、刃物を突き付けられているような。
思い残したことを作らないとその運命通りになる気がして、お祝いのケーキとプレゼントも今日は遅いからと断った。食べたいと寄った中華料理屋さんが準備中だったことに安堵した。
ドライブ中も、砂浜散策中も、死亡事故が起こるんじゃないかと生きた心地がしなかった。
お祝いの言葉もうまく受け取れず、就寝は永遠の眠りになる気がして恐怖だった。
#運転してくれたパートナーの名誉のために言っておくと 、彼は石橋を叩きまくってもまだ疑うくらいの超安全運転のゴールド免許保有者である。
翌朝起きると、背中の冷えは消えていた。なんだか死なない気がした。
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