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「卒業」前のクラスルームから -NVC実践コース第1期の「いま・ここ」

滲みいる「やわらかさ」 ・ 支えあう「しなやかさ」

「浸透力」と「修復力」。長い期間、定期的に集い、体験を重ねあわせる仲間がいることが「学び」にもたらす効果とは、集う人たちの間に自然と育まれるそのような力にあるのかもしれない。そんなことを思ったのは、NVC年間プログラム実践コースパート3「ふりかえりと統合の集い」でのことだった。

フリースタイルの「共感サークル」

1月11日、祝日。この日、8ヶ月に渡り学びをともにする仲間がzoomの場に集まった。普段は違う時間のクラスに参加しているメンバーも入り混じり、休日らしい寛いだ表情で「何が起こるのだろう」という好奇心と期待とともに、そこで起こる化学反応を楽しみにしている。

「何かの新しい学びや気づきがあるといいな」「無になること。呼吸をすること」「つながり」...。求める質感はどこかでつながっているようで、多様でもある。

「チェックイン」して、いま感じているものを伝えあったのち、小グループにわかれてそれぞれ心にあることを言葉に。それから、その場に漂うエネルギーや自然な流れから、この時間に扱っていきたいテーマや方向性を決めていった。

自分とのつながり・自己共感と自己肯定への関心の声があがり、その流れから「感謝のジャーナル」というワークの紹介へ。

それから、NVCの学びをどのようにいかすか、深めるかというテーマなど、関心の高いテーマごとに小部屋(ブレークアウトルーム)にわかれ、部屋を自由に行き来しながら、フローに任せてのダイアログの時間に。

そこでは誰が先導するでもなく、深い場所からの発言が起こったり、「少し勇気を出して言ってみます」いう声が聴こえたり、「このメンバーだからこそできることに一緒に挑戦したい」という声があがったりしていた。誰かの発した言葉の余韻に、静かに沈黙で寄り添う姿も。

秩序があるようで、無秩序。そこにある安心感。

なんなんだろう、これ......。私は思わず「フリースタイルの共感サークル」という言葉を、手元のメモに書き留めていた。「共感サークル」とは、誰かが話し、他の人たちがその言葉に共感的に耳を傾ける(言葉の奥底にある大切なことに寄り添う)こと。それをもっと自由なフローに乗せた対話が、この場では繰り広げられている。その自然な様子を思わず、そのように名付けたくなったのだ。

プロセスこそが道(ガイド)となる

「パート3まで続けてこれたつながりがあるからだね」。その場にいた幾人かの人たちが、そう言葉にしていた。「他にも学びの場はあるけれど、これだけの時間をかけて、同じことを学んできた仲間だからこそ、交わすことができるものがある。このつながりを続けていきたい。クラスが終わってもそれを保ち続けることを考えていこう」。そんな提案が聞かれたりもした。

「実践クラスというだけあって、実践練習がいっぱいで最初は大変って思ったこともあったんです」。と、ある参加者がいった。「そうそう」とうなづく人たちの姿も複数。そこには私たち講師側にも、うなづくところがある。もう少しゆとりをもってクラスを構成することができたかもしれない。ゆっくり・咀嚼するためのスペースをもつことにある豊かさを、参加者のフィードバックを通じて、私たちも学んだ。「けれども振り返ると、失敗したと思ったこともいい体験だったなって」という言葉がその後に続き、私ははっとさせられる思いだった。うまくできているかな、自分は十分だろうか。そういう観点とは違う視点がそこに育まれている。

続けてゆくことで、道のりそのものが学びとなっていくんだ。そう改めて実感した。

たかが「共感」、されど。

この日の対話のなかで、実践コース(年間プログラム)をつくるにいたったきっかけを思い出すことになった。

それは2020年3月頃のこと。新型コロナウイルスの影響でさまざまな制約が生じ、ストレスや孤独を抱える人たちが増えてきた頃だった。「こういう時こそ、共感を」。NVCという、人と人とのつながり、そして自分の大切なものにつながることをサポートするコミュニケーションがこんな時代だからこそ役にたつのではと、多く人が場を持とうと立ち上がった。そういった動きが活性化したことでもたらされたものは、とても大きいと感じている。ここなら安心して泣けると涙する人。外出が制限されるなか、人とつながれることが嬉しいと微笑む人...。「共感の力」を実感することが多くあった。

同時に、場を持つこと・わかちあうことの難しさに直面する人たちの姿も少なからずあった。NVCを知っている人も、知らない人も訪れる場をホストする。しかもコロナの状況もあり、オンラインという制約された環境の中でつながりをつくる必要がある。訪れる人たちの期待値もさまざまだし、予想しないことが起こることだって少なくない。そんな時、緊張やこわばりの中で「自分自身とつながる」ことが難しくなることもある。「うまくいかない」という考えが浮かんだとき、「相手に共感」する前に「まず、自分とつながる(自己共感)」ことを思い出すことができなくなることも...。

安心して挑戦できるスペースを

だからこそ「共感の場をつくる」という挑戦に踏み出す時、困難に直面しても自己共感に立ち返るための練習を重ねたり、自分たち自身も共感で聴きあいサポートしあえるような実践の場があることが役に立つと思った。「何が正しく、何が間違っているか」から抜け出す視点を手にするための実践を。

私が実践を積むことができたのは、アメリカの長期プログラムに参加する経験によるものが大きい。時間をかけて学ぶので、体感的な理解が深まる。プログラムが終わる頃には、始まった頃には思いつくことすらできなかった視点、感覚を手にすることができるようになっていた。自分や相手を責める声から立ち上がる力が少しずつ育まれる。困難に直面し心が揺さぶられることがあっても、根っこがあることを思い出すことができる。

日常に実践の場がなかったら、切磋琢磨する仲間がいなかったら、自己共感の基盤を育てることはきっと難しかっただろう。どうしたらそういう場をつくっていけるのだろうか...。そんな会話から生まれたのが、この「実践コース」だったのだ。

「共感の場をつくる」。その挑戦に踏みだしたり、何かが思うようにいかなかった時にも、自分自身とのつながりを取り戻しながら相手とのつながりを取り戻す力をつけていくこと。クラスの参加者の声を聞き「願っていたことが実現している」と感じて(言っていただけて)、年間プログラムをつくって本当によかったと思った。こんなに長いプログラムに飛び込んでくれた人たちの存在に感謝を込めて。

おわらない学びを

実践コース第1期はまもなく2月で修了。今日からは第2期が始まっている。「仲間の存在が、終わらない学びの糧となる」。そしてそれが、もしかしたらもっとも豊かな収穫(ハーベスト)なのかもしれない。それをともに祝福することをイメージして、第2期のスタート。また新しい旅が始まろうとしている。

この旅はどこに向かうのだろうか。ドキドキと緊張に包まれる、2021年1月。各地で雪の舞う、新しい一日に。

NVC大学実践コース (2021年1月12日・第2期スタート)

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