波を待つ

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Perch.のお手紙 #135

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ロングボードに跨っていつ来るともしれない波を待っている。

空いっぱいに二重の虹がかかって、遠く鯨がその半身を海上に畝らせてはしぶきを上げて沈んで行く。日差しは低く水温が上がり切る前の少しひんやりとしたハワイの朝。


日中の暑すぎる太陽を避けて早起きをして入る海。一度沖に出ても乗れて2〜3回のサーフィンは、波を待つ時間もとても輝いていた。


ゆったりと待つ間にしか見ることのできないいくつもの美しい景色。水中でぶらぶらとさせる両足が気持ちよかったこと。次の波が来たらどうしよう。あの波を捉えようか。海から上がったら、今日は何味のアイスを買って帰ろう。


2023年の年明けはゆっくりと始まった。チームの年間計画を粛々と立てながらも、私自身はと言えば、エンジンのかかり切らない日々に、ほんの少し焦れていた。

同時に「まだ今じゃない」という気持ちも去来する。がむしゃらに漕ぎ出したいのをぐっと堪えている様な気持ちで過ごしていた。


コロナ禍のこの3年、海は常に荒れ狂い、見たことも乗ったことのない様な大きな波が間髪入れずに襲いかかって来る様な日々だった。溺れない様に必死で波を掻き分けた。がむしゃらにパドルをし続けて、大概はその大きすぎる波に飲み込まれた。束の間に息を吸い、また漕ぎ出しては、いくつかの波に滑り込んだりした。ボードに跨って沖を見つめる時間はなかった。


家事を済ませる朝。ふと、あのひんやりとしたハワイの朝が思い出された。

そうか。今私は波を待っている。


スリリングな海を経験して少しは上達しただろうか。

長く気持ちよく乗るために、今できることは一体なんだろう。

次に波が来たらどんな風に水面を滑ってみたいだろう。


いつの間にか、海は少し凪を取り戻していたのかもしれない。


今年は波を待つ時間も楽しみながらやって行こうと思っている。

待つ時間にしか味わうことのできない、きらきらとした時間があることを思い出したから。


コロナ禍と一緒に始まったONLINE STOREとPerch.のお手紙。 今年は隔週にペースダウンをしてお届けする予定です。