服部フェス-2023-

服部フェス-2023-まであと1日というところまで来ました。
昨年の服部フェスは1回目ということもあり全てにおいて手探りでしたが、今年はクラウドファンディングというものに挑戦しました。
色んな葛藤がありましたが、下記にそのクラウドファンディングのサイト用に載せた文章に少し加筆・修正を加えたものを記します。



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【はじめに・ご挨拶。】
「服部が服部緑地でフェスやったら面白いんじゃない?」
そんな冗談から始まったのが『服部フェス』でした。
私は大阪で1番売れてないアイドル「くぴぽ」の服部真希(まきちゃん)です。
2020年、2021年と新型コロナウイルスの蔓延により2年連続の中止に見舞われたものの、2022年4月。
私はやっと大阪の服部緑地野外音楽堂で念願の服部フェスを開催いたしました。
普段では味わえないような色んなジャンルのアーティスト様にご出演いただきとても楽しいイベントになりました。


【服部フェスが与えた試練。】
しかし、イベントが終わったのも束の間、私に重くのしかかってきたものがありました。
服部フェスは大赤字でした。
自分(たち)の力不足や2年連続のキャンセル手数料など理由を挙げればキリがありませんが、それでもこんなに楽しいフェスを主催できて「それだけで十分じゃないか」と当時私は自分に言い聞かせました。
こんなに大きな場所でたくさんの人に楽しんでもらえたフェスを開催できたことを胸に「またいつかここに戻ってこられるように頑張ろう」と。


【服部フェスを続けること】
しかし驚くことにお客さんや関係者の方から「またやってほしい!」という声は後を絶ちませんでした。
「来年もやるのか?」
いつもくぴぽを応援してくれているファンの方の声だけでなく、名前も顔も知らない方からの声も多数ありました。
戸惑いと喜びと現実を行ったり来たりしていく内に「服部フェスって一体何なんだろう。」「私は何のために服部フェスをするんだろう。」という疑問が頭に浮かびました。
いくら考えても答えは見つからず、それは服部フェスを続けないと分からないということしか結局分かりませんでした。
赤字なんて活動の合間にウーバーイーツのバイトでもして頑張って補填すれば良いじゃないか。
だって、あのステージから見たお客さんの表情。
太陽が照らす数え切れないほど広がるクリーム色の椅子たち。
青々と茂る芝生ゾーンからほのかに見える桜の木々。
ライブの熱狂とは対照的な会場外をのどかに散歩する人たち。
急な雨でもより一層高まる一体感。
愛しか感じない汚いヤジ。
いつもクールなスタッフからあふれ出る笑顔。
急なトラブルを助けてくれた憧れの共演者の大きな手のひら。
どんなに苦しいことがあってもあの場所に帰ってこられるなら、またもう1年生きていけるんじゃないだろうか。
決意しました。
「やるしかない。」


【私はもうひとりでは無い。】
そしてそんなある日、お客さんから「クラファンやったら?」「クラファンやってよ!」と、いわゆるクラウドファンディングの存在を教えてもらいました。
私はひとりでずっと悩んでいました。
だけど「お客さんと一緒にイベントを作り上げたらいいんだ」と気付かせてもらってから、少し気が楽になりました。
私の夢は服部フェスを通してこの服部緑地野外音楽堂をたくさんの人でいっぱいにすることです。
何年かかるかは分かりません。
1人でも多くの方と同じ夢を見て叶えられたら素敵だなと思います。
もちろん今年も私が自信を持ってお届けできる素敵なアーティストの方々に出演していただきます。
是非、期待しててください。
どうかみなさま、私と共に1つの大きな夢を叶える為に、そしてこれからも服部フェスが続くように、ご支援いただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
https://camp-fire.jp/projects/view/646219#menu


【最後に。】
クラウドファンディングをすると決めてから何度も「これでいいのだろうか?」と自問自答しました。
クラファンをしなくてもフェスを開催している人は周りに居るからです。
「フェスを開催するのに今時クラファンするのは何もおかしいことでは無いよ。」という優しい声も頂きました。
リターンがあるとはいえお金を支援していただくということは、ただフェスを主催するということとは別の非常に重いプレッシャーがありました。
私(たち)に多くの人を呼べる力があればこんなことしなくていいのでは?と思うと、情けなさや恥ずかしさを感じることもありました。
どれだけこだわっても大赤字になるイベントなんて価値が無いのでは?と思うと、身分不相応なイベントを主催しているのではないだろうかと不安になることもありました。
果たしてこんな文章で思いが伝わるのだろうか。
そもそも私が伝えたい思いってどんな思いなんだろうか。
これらのリターンは頂く金額に見合っているのだろうか。
これらのリターンは喜んでいただくものになっているのだろうか。
本当に私は赤字が嫌だからという理由でクラファンをしているのだろうか。


銀杏BOYZ、サンボマスター、Cocco、クラムボン、ミドリ、N’夙川BOYS、筋肉少女帯、数え切れないほど色んなアーティストをフェスで見た。
あの何とも形容できなかった感情って一体何だったんだろう。
微妙に高いし冷静に考えたらそんなに美味しくないのについ浮かれて買ってしまうフェス飯。
自分なりのタイムテーブルを蛍光ペンで囲って作ったのに大体は疲れて半分も見れないことがほとんどだった。
好きな子が応援してるバンドを一緒に見に行って「良かったね」と言ったけど、本当は全然好きじゃなかった。
雨が降って最悪の状況だったのに、あのジメジメした匂いとぬかるんだ地面のあの感触を今でも良い思い出として覚えているのは何故なんだろう。
少しでも大人になれる気がして勇気を出してダイブしようとした時に肩を貸してくれたお兄さんは、今でもまだあの汗でびちょびちょに濡れた青春パンクバンドの黒いバンTを着ているのだろうか。
目の前でこんなに沢山の人が熱狂してるのに、どうして学校やバイト先の人たちはあんなに素敵な音楽たちを1つも知らなかったんだろう。
いつかこのフェスに出たいと家に帰ってすぐギターを弾いていたかつての私は、今小さなライブハウスで全然人気の無いアイドルをしている。
あんなにフェスに行って勲章のように毎回日焼けしていたのに、そんなことも忘れたかのように私の肌は今真っ白で、日焼けなんて絶対にしたくない。
「フェスの為に生きてる。」とOTODAMAやRUSH BALLに一緒に行った友達はみんなもう結婚して、フェスもライブハウスも行ってないどころか音楽を聴くことも無くなったらしい。
そういえば初めて行ったフェスで買ったあのバンドのオレンジのTシャツをあんなにいつも着ていたのに、一体どこにいったんだろう。
良い思い出ばかりじゃないのに思い出せば思い出すほど、どうしてフェスの思い出ってキラキラしてるんだろう。


名前を付けることができなかったあの時感じた気持ちはもうお金では買えません。
色んな偶然と奇跡が重なって楽しかったフェスが成り立っていたことに今気付きました。
リターン以上にお返しできることは「今年も服部フェス楽しかったな」って思ってもらうことだと思います。
私は別にフェスを主催したいんじゃなくて、フェスでライブがしたかったのかもしれません。
でもどんなフェスでも良いんじゃなくて、イカしたお客さんの前で、イカした演者の中で、イカしたライブを。
そう、そんなフェスに呼ばれるような人気が無いので自分でフェスを主催したんでした。
ライブを愛する人なら誰もが考えたことのある、実現する訳の無いあの自分なりの夢のフェスを。
そんなフェスで起こる魔法みたいなあんな奇跡を。
本当は赤字でも良いんです。
でも、また今年も来年も、イカしたフェスやれたらいいな。
服部真希(くぴぽ・服部フェス主催)
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おかげさまで現在、当初目標にしていた金額以上の支援をクラウドファンディングで頂いています。
本当はもっと必要だったのですが達成できなかったら恥ずかしいなという情けない理由で50万円という金額に設定しました。
これを書いている今、支援額は95万円まで達しています。
去年の赤字は何とか帳消しになりました。
そして支援者の数は現在130人にまで上(のぼ)っています。
とても嬉しいです。
支援してくれた方の応援コメントを見たら熱いものが込み上げてきて涙腺がずっと震えています。
未だに支援額も支援者数も私にとっては天文学的な数字で実感が湧きません。
顔の見える人だけでは無く、名前も顔も分からない人にも服部フェスは、くぴぽの活動は届いていたみたいです。
「服部フェスとは何か?」
「何のために服部フェスをするのか?」
こんなに応援されていることが分かったのに、未だにそれは分からないままです。
「服部フェスすごいじゃん!」と言われても、すごいのは出演してくれるアーティストの皆さんです。
「〇〇を呼んだ俺ってすごいだろ?」とふんぞり返ってるイベンターには死んでもなりたくありません。


出演アーティストを発表してから辛い気持ちになることもありました。
1番辛かったのは「どうしてあのアーティストを呼ばないんだ。」という声でした。
呼びたいアーティストは沢山いましたがもちろん全てを呼ぶことはできないし、その中にはスケジュールが合わず出演できなかった方もいたり、音出しや音止めの時間も決まっていたり、去年の演者と被り過ぎるのも…とか、これじゃああのイベントと似たような演者になっちゃうな…とか、当然予算のことも考えなきゃいけない。
フェスを開催するというのはこんなにも色んなバランスを考えて進めなきゃいけないのかと今更ながら大変さを痛感しました。
それでもやっとそういった批判を得るまでの大きなイベントになったんだなと思うと、自分が主催してるフェスという実感が更に遠のいていくようでした。


一般的にアイドルとバンドが混在するイベントはお客さんがなかなか集まらないと言われています。
お金だけのことを考えればアイドル(やバンド)だけのイベントにした方が儲かるということです。
今まで私も何度かそういうイベントをしましたが儲かった試しはありません。
それでも振り返ると強烈に思い出すのはそんなイベントだったりします。
服部フェスは今までの自分を育ててもらった色んなジャンルの音楽が交わるイベントにしたいんだという自己満足のイベントですが、実際去年そこにはあの日しか味わえない感情の震えがありました。


クラファンもお金儲けと揶揄されたら嫌だなぁと思っていました。
そんな不安の中で半信半疑のまま始めてみたものの、驚いたのは支援してくれた方々のとても純粋な気持ちでした。
自分を信じれない優柔不断な私の弱い心が何も知らない奴らのそんな声に負けて、開催を望み支援したいと言ってくれる人の熱い気持ちをないがしろにするところでした。


個人的な話をすると、今年はコロナウィルスに感染した影響で約1ヵ月家から出ることができず、2月に予定していたアルバムリリースが遅れてその制作や新曲の練習やツアーや普段の業務やまだ言えないことや確定申告が一気に押し寄せ、それがこの服部フェスの準備にも影響して周りの方々に迷惑をかけました。
ホームページやクラファンも本当はもっと早くに公開したかったんですが、スタッフの人数も多いわけでは無い少人数での手作りのイベントでは色んな限界が見えて来年以降もまた開催できるなら可能な範囲で少しずつ改善したいなと思います。


会場からコンビニまで少し距離があるということで今年は2品だけですがフードを出すことにしてみました。
それこそ色んな準備が遅れた影響で昨日までメニューの試作に取り組んでいました(フードも色んな条件や縛りがあって知り合い何人かに出店してもらう予定でしたがご飯類が出せなかったり予算的にも不透明だったりして今回は自分で考案してみました)。
そして去年は雨が降って寒かったという声があったので、今年はホットドリンクを置いてみるのはどうかと考えて用意してみました。
大変だけどこうやって1年1年積み重ねてお客さんの声と共にフェスが成長していくのは今まで生きてきて体験したことの無い共同作業でとても私の人生にとって意義があるように感じます。
当日もきっと色んなトラブルが起きるんだと思います。
天気予報を見ると1日目は雨です。
それでも当日「きっと何か奇跡みたいなことが起こるんじゃないかな。」なんて楽観的な自分がいます。
そして何よりも、そこでライブをするということに実はずっと緊張しています。
リスペクトしてる出演アーティストの誰よりも1番良いライブをしたいからです。
もしそんなことができたら気持ちいいだろうなぁ。


みなさん、服部緑地野外音楽堂でお会いしましょう。
奇跡も感動もお金も何にも要らないから、ずっと音楽だけは続いていきますように。

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