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手間とコストとブランドの折衷

ものづくりには手間とコストがかかります。陶磁器の世界は作家さんが手作りで作るのもと窯元さんが型で作るものにざっくりと分けられます。

作家さんの制作するうつわは、ロクロやたたらなどで型を使用せず1つ1つ製作しますので時間がかかります。作家さんでも型を使って創作する人もいますので一概には言えませんが。

窯元さんは型を使って生地を作ります。型は主に3パターンあります。ローラー整形と呼ばれる丸いお皿やお茶碗を大量に製作する方法、圧力射込と呼ばれるお弁当箱のような石膏型に土を射込んで中量を製作する方法、ガバ射込と呼ばれる液状の土を型に流し込んで少量製作する方法。

生産量で比較すると作家さんは手作りと型の人がいますので少量と中量、窯元さんは大量と中量と少量、うつわ作りにもいろいろなパターンがあるわけですね。

窯元さんの型を使った製造方法も、特に中量、少量のパターンでは手作業の工数がとても多いので、手作りと言っても間違いではないと思います。

生地をつくる工程だけ手でやるか型を使うかの違いがありますが、その他の工程(施釉や焼成)は作家さんも窯元さんも同じ工程を経て完成します。

時間をかけて少量作るわけですから必然的に作家さんの作品は高く、窯元さんの商品は安くなるわけです。

工業製品と手工業製品の線引きはどこなのか?ということもあります。大量生産するローラー成形でも手をかける工程は大変多いので全てが手工業製品と言って良いのではないでしょうか。

1個製作するのにかかるコストの中で一番大きな要素は「人件費」。土や釉薬やガス代などももちろん大きなコストですが、人件費は作家さんでも窯元さんでも一番コストがかかるのではないでしょうか。

私たちのブランド「m.m.d.」は、窯元さんが圧力射込で作る商品が大半を占めます。ですので販売価格も作家さんと大量生産品の真ん中くらいになりますね。

機械的に量産をするのであれば費用は生産方法と数量によって概ね決まってきますが、作家さんをはじめ私たちのようなブランドではそれぞれの個性を創作して製造コスト以外の付加価値を作り出すことに注力します。

ブランド作りにはたくさんの人に知ってもらうための広告宣伝費用やデザインに関わる人件費がかかりますので、その費用も商品価格に加味されるわけです。

「そんな余計な費用が乗ってるならブランドのない商品でいいわ」

という人もたくさんいらっしゃると思います。モノの価値は人それぞれですのでそのような人は廉価で機能的な商品を使われていると思います。

少し話が変わりますが、どこかの記事で拝見したホストのローランドさんが以下のようなお話をされていました。

「ホストに月何百万も貢ぐ人たちがいる。それを馬鹿げているという人がいる。でも考えてみてください。質素な暮らしをしながら欲しかった車や時計など数百万、数千万するモノを手に入れる人がいます。しかし車や時計に全く興味のない人には理解できない馬鹿げたことなんです。人それぞれの価値観があるわけです」

激しく同意です。

人それぞれの価値観がある。つまり全ての人に共通した価値のあるプロダクトを作ることは不可能だということです。ブランド作りの難しさはここにあります。

私が考えるブランド作りの根幹は、いつまでも変わらないコンセプトを持つことでブランドの世界観が少しずつ成熟されて、やがて興味のなかった人たちにも共感してもらえるよう訴求し続けることです。その結果、ブランドに好意を持ってくれる人が増えていき少しづつ育つのではないでしょうか。

その意味でもプロダクト自体のビジュアルが大きな変化を常に続けていると、ブランドコンセプトが理解されづらくなると思います。

陶磁器は何十年も使い続けることができるプロダクトです。例えば初めて購入してから10年後、新たに買い足ししようとそのブランドを探すと全く違ったテイストに変化していて今持っているうつわと全く相性の悪い物ばかり売っていた。という事になります。

必要な部分の僅かなブラッシュアップを繰り返すことで、コンセプトから外れることのないプロダクトを作り続けられるのではないでしょうか。

手間とコストとブランドの価値がちょうどよく折り合う価格を見つける事で、みなさまの価値観を満たすプロダクトを提供できると確信しております。

それは相対的な価値観ではなく、「絶対的」な価値観をつくること。

そんなブランドになりたいと日々考えている今日この頃です。









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