見出し画像

【拡大するDevRel】技術広報・採用広報への期待とポイント

ちょうど1年前、低迷するスカウトを前に採用広報にリソースを割く企業が登場しているというお話をさせていただきました。

こうした動向がよりはっきりと確認されるようになったため、整理してお話ししたいと思います。

有料設定していますが、最後まで無料でお読みいただけます。もしよければ投げ銭感覚で応援をお願い致します。


DevRelの採用文脈への意味合いの拡大

DevRel (Developer Relationship)は元々はAPIを提供するような事業会社が、開発を活性化するためにエンジニア向けにコミュニティを展開することを指していました。つまり自社サービスのマーケティングの側面が主だった時期が長くありました。どのように意味合いが拡大していったのか、その経緯をまとめていきます。

コロナ禍以前:社外向け技術広報の拡がり

2010年代後半コロナ禍以前のオフラインイベントが活況だったころ、自社の社名を関したテックカンファレンスを開催するところが見られていました。10月11月はカンファレンスが多く開催されるため、オフライン開催されるイベントが相互に干渉し、集客にマイナス影響を来すという悩みもあったほどです。

コロナ禍:オンラインイベントへのシフト

コロナ禍に伴ない、セミナーやイベントがオフラインからオンラインにシフトせざるを得なくなりました。しかしオンラインイベントはインターネット配信という映像や音響、ネットワーク配信といった技能が必要なため、シフトできなかった企業も多数ありました。

当初は物珍しさと、地方人材、ないしは現職が忙しい人などの参加も容易になったことから参加率が7割程度と高かったオンラインイベントでしたが、やがて各社や各コミュニティが慣れて乱立してくるとドタキャン率が増え、5割程度の参加率へと落ち着いていきました。

リモートワークの拡がり:社内報の意味合い

リモートワークの拡がりにより、「普段打ち合わせをしているメンバー以外の顔ぶれが分からない」という社内の分断が進んでいきました。そこで出てきた需要が、広報を通して社内の人たちに対してどういうことをやっているかというのを発信するという内容です。経営層から社員に対しての限定公開YouTubeなどもありますが、社外広報に社内広報の意味合いを込めている企業も見られるようになりました。

2023年:DevRelの拡大

冒頭で紹介したように2022年11月からエンジニア採用がトーンダウンし、スカウト返信率がはっきりと落ちてきたためにスカウト媒体やスカウト代行を解約し、浮いた金額を採用広報・技術広報に回したり、自社での更新リソースやノウハウが足りない場合はメディア運用代行などに回す企業が見られるようになりました。そして同時期に技術広報・採用広報の側面がDevRelとして呼ばれるようになっていきました。2023年現在のDevRelの状況としては、2つの課題があるように感じられます。

1つはコロナの拡大により2020年から丸3年間、オフラインでの交流が途絶えてしまったため各社、ノウハウを思い出しながら運用しているというものです。3年間という時間は人材流動化の現在では長すぎ、オフラインイベントでのノウハウを抱いたままキーマンが転職していることもあります。

また、2年の借家契約が一般的であるため、3年の間に広いオフィスを手放す企業も多数あります。交流スペースを潰して執務室にしたり、解約して狭いところに引っ越していたりします。そのため借りられる会場探しというのが重要になっています。

こうした状況に対し、注目されているのはDevRel Guildというコミュニティです。第一回の集まりでも早速数十名が参加していましたが、実にいろいろな業態の技術広報・採用広報をミッションにされた方々が参加されていました。

また、「技術カンファレンスのマスターガイド」も話題です。私も技術書典に買い求めに行きました。3年以上前を思い出しながら、もしくは初めてのDevRelイベントを実施する上で、良きガイドラインとなってくれることでしょう。電子書籍でも手にすることができます。

技術広報・採用広報はいつからやるべきか

人的リソースが限定的な中で、採用チャネルと同列に並べて広報に着手するための優先順位をどうするかというご質問をよく頂きます。企業の状況にも寄りますが、下記に判断ポイントについて整理していきます。

技術広報・採用広報については、1年ほど前であれば「余裕があればどうぞ」という回答をしていました。人材紹介やスカウト媒体がコストは掛かるものの採用はできていたため、急ぎであれば採用チャンネルの選択である程度は採用できていました。

しかし現在ではスカウトなどは特にですが1人当たり100通/月〜100通/日受信している現状を鑑みると、メッセージタイトルで「見覚えのある会社から来た」などと興味を惹かれないと開封率自体厳しい状態にあります。

スカウトに限らず実際に候補者の方から上がった声でもあるのですが、企業名を知っていたとしても「会社名は知っているが、何をしているのか分からないので検討に値しない」と言われたこともあります。これは会社の歴史が長く、上場していて社内では「弊社は大手である」という認識が強い企業ほど見られる傾向にあり、決まって「弊社は有名なはずなのにどうして人が集まらないんだ」と憤る結果になっています。ポイントは自社が採用したいターゲットに対してリーチする情報を出せているかというものです。そこに上場の有無や歴史は関係ありません。

近年の新卒採用や若手採用などではすっかり採用動画が一般的になっていますが、どういう人たちが働いているかという実情に迫りつつ、「何を」「誰が」「どういうレベルで手がけているか」を発信していくことが必要です。

テックブログを更新する余裕がないのであれば、インタビュー記事の発行であったり、スポットでのLT発表などからでも始めていくことが必要でしょう。求人票やスカウト文などに職種別に反響の良いコンテンツを出しわけることも有効です。

企業によっては返信のないスカウトに割くリソース比率を下げてでも、こうした広報にリソースを割いていくことをお勧めしています。明確にやる・やらないという話ではなく、できることからやる必要が出てきているのが採用広報・技術広報です。当面話題になっていくテーマではないかと捉えています。

ここから先は

0字

¥ 500

頂いたサポートは執筆・業務を支えるガジェット類に昇華されます!