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SES・フリーランスエージェントの異変と、営業職のキャリアパス

これまで本noteではSESでエンジニアとして働いていたり、入社を検討するエンジニアに向けた情報発信を行ってきました。今回はSES界隈の異変について触れた後に、SES営業やフリーランスエージェント営業担当職を念頭にしたキャリアパスについてのお話をしていきます。仕事柄、接することが多い職種なのですがどうにも心配になることが少なくありません。SES界隈を整理したYouTubeも公開していますので合わせてご覧ください。

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SES・フリーランスエージェントを巡る変化

まずSES・フリーランスエージェントを巡る背景情報についてお話をしていきます。

ジュニアを入れすぎた、新卒採用をしすぎたSESの失速

SES・フリーランス共に単価とパフォーマンスが見合わない人、もしくはスキル的なジュニア層について案件に困る事象が多く見られるようになりました。

特にSESについては上場・非上場を問わず案件にアサイン可能な正社員が居ないと売り上げに繋がりません。投資を受ける際に投資者との合意形成において採用目標人数を高く設定したりします。採用人数を達成するためにジュニア層を採用した結果、案件アサインができずに待機(アベイラブル)になる人が増えていきます。

案件が決まらないことに業を煮やしたフリーランスエンジニアがフリーランスエージェントを変更

フリーランスの選考をしているとよく見られるのが、フリーランスエージェントの変更です。当該フリーランスエージェントでの稼働実績をヒアリングするとこのあたりが見えてきます。フリーランスエージェントを渡り歩く理由としては、表向きは『良い案件がない』なのですが、短期案件を続けているようなフリーランスであれば下記のような背景があります。

  • 単価に対し、スキル見合いがしない

  • どうしてもフルリモートが良い(自宅から1時間圏内であればたまに出社可とあるが、そもそも地方だったりする)

  • 週2-3日のみ可

紹介予定業務委託(仮)などの展開もするが決まらず

派遣社員について直接雇用を前提にした派遣を行う紹介予定派遣があります。ここのところよく見るのが「入場したフリーランスについて、双方が合意した際には追加の金額を払って正社員化しても良い」という紹介予定業務委託とでも呼べる業態が複数確認されています。

SESやフリーランスエージェント経由のフリーランスを正社員化する場合、間に入っている企業に対するフィーなどがトラブルになりやすいので、予め明文化されているのは助かります。他にも業務委託を挟むことによってスキルマッチ、カルチャーマッチが図れるというメリットもあります。

しかしこれがあまり決まらないようです。単価がやや高い方が多いので、企業側の期待に対する実際のバリューが下回りやすいことに加え、正社員希望給与が大幅に乖離していることも問題になりやすいです。フリーランスブームが過度に煽られる前の2019年以前であれば、ある程度成約が出せていた契約に思われます。

増えるM&A

下記サイトには2023年のSES企業によるM&Aの事例が列挙されています。こちらによるとSES企業を事業継承したい思惑としては下記のようなパターンがあります。

  • 自社サービスのエンジニア確保

  • SIerのエンジニア確保

  • 自社のSES事業のグロース

  • 新規SES事業の立ち上げ

M&Aについては雇用が継続されるのであれば、心象の問題程度かと思います。周囲でもM&Aの話がありますが、割と受け入れる従業員が多いです。待遇がそれを期に見直されるようなことがあれば尚可といった具合です。

ただ下記のように思ったように売りあがらなかったのであろうSESもM&A仲介サイトに見られ、人間模様が感じられます。

廃業パターンもある

従業員目線で特に問題なのは廃業のパターンです。「SESは儲かる」という言説を信じてなんとなく参入するもノウハウが分からず多重請負の下の方になり、少しずつ遅れる支払いサイトを前に従業員の給与支払いが滞って倒産するケースがあるようです。『SESは楽に儲かる』という情報を信じて創業し、右も左も分からない状態で採用、多重請負の下位層に位置することで支払いサイトが追いつかず、売掛金が入らずに給与未払いに陥ることがあるようです。社会保険未払い、税金未払い、助成金横領といったものもあります。SES起業のハウツーサイトなどにも上位に資金繰りが挙げられており、融資を受けることを推奨していたりします。

社員を採用するために高還元を謳うことで「思ったより稼げない」と閉業するパターンも聞こえています。

SES・フリーランスエージェント営業担当の傾向と課題

仕事柄、エンジニア出身のSES社長とは多くお会いします。このあたりの方はご自身で入場される方も少なくなく、エンジニア市場とも近しい存在なので商談もスムーズに進みます。問題は純粋な営業職の方々のうち、エンジニアに興味のない人たちです。

人材紹介事業とSES・フリーランスエージェントの営業職比較

人材紹介事業とSES・フリーランスエージェント事業をまたがった勉強会を開催することが多々ありますが、SES・フリーランスエージェント営業の人たちの継続的な参加は極めて少ないです。質問も少ないです。エンジニアのキャリアについて解像度を上げたいというモチベーションが低く、エンジニアからキャリア相談された時にエンジニアのキャリアに興味がないために答えられない人が多いのが特徴的です。

これは偏にSES・フリーランスエージェント営業が「キーワードマッチで仕事ができてしまう」ということにあります。顧客のところに行き、求められるスキルセットと大筋の経験年数を聴けばキーワードマッチで仕事ができてしまいます。決まりにくければひたすら企業に書類を送るだけです。

SESとフリーランスエージェントの営業職比較

近年のフリーランスブームもあり、フリーランスエージェントが非常に増えました。SES同様派遣契約が不要なために参入障壁が低いだけでなく、扱うのがフリーランスであるため社内にエンジニアを抱える必要がなく、語弊を恐れずに言うと「在庫」の概念がないためにプレッシャーを感じていない人が多いように見受けられます。

交流会などで話していても、SES営業よりもフリーランスエージェント営業の方がより「ノリが軽い」傾向にあります。。

SES・フリーランスエージェント営業担当の次のキャリアチェンジ

SES・フリーランスエージェント営業担当職からの転職先としては下記のようなパターンをよく見ます。

  • 企業人事

  • 人材紹介会社

  • 営業職としてSIerやWeb制作会社といった無形商材の営業担当

  • 有形商材の営業担当

  • 他のSESやフリーランスエージェントに転職

  • SESやフリーランスエージェントを起業

これまでSESやフリーランスエージェントでキーワードマッチに甘んじてきた方の場合、上位3つを選択するとキャッチアップが非常に難航します。上手く転職先で結果を残せる方も居られるものの、下記のようなケースが見られます。

企業人事の場合、労務や評価を前に悶絶します。採用担当専門の場合、採用の母集団形成の仕方が全く異なるので苦労します。採用力が低かったり、採用予算が乏しい場合には母集団形成に更に難航するので往生します。

キャリアアドバイザーの場合、候補者の職務経歴書を理解するだけの必要な勉強量を前にパニックになります。勢い、職務経歴書の薄い若手ばかり紹介するようになってしまい、ミドル層・スキル層に対する苦手意識を持ってしまう人も居ます。

無形商材の営業担当は驚くほど結果が出ないので早々に退職される方も居られます。SIerやWebデザイン会社などの場合、システムやデザインを深く分かっていないとトラブルになるため、エンジニアやデザイナーが商談に立ったほうがスムーズです。純粋な営業ではあまりに結果が出ないためにインバウンド問い合わせの首振りを担当することになりがちです。辛くなってSES企業に戻る人も見られます。

有形商材の場合、社内で既にトークスクリプトが完成していたり、営業体制が整っていた場合であれば定着しているようにも見えます。これはやや別問題ですが、The Modelに依存しすぎてかゆいところに手が届かない営業スタイルを展開している企業も散見され、別の課題を感じています。

キャリアチェンジを成功させるポイント

SESやフリーランスエージェントのメンバー層営業職から、抜け出たくても抜け出せない人が居られます。抜け出るにしても、頭一つ抜けた成果を収めるにしても、キーワードマッチングから抜け出ること、Whyを深堀ることがポイントになります。顧客からのキーワードの御用聞きではなく、企業人事採用担当であれば事業部、人材紹介会社であれば採用企業が求める人物像の言語化と期待値調整を進めなければなりません。そのためには下記の要素が必要です。

  • エンジニアのキャリアについての興味

  • (特にフリーランスエージェントと違って)次のキャリアが決まらないエンジニアを諦めない

  • IT用語や職種のキャッチアップと、用語間の位置関係の整理

  • 対象となるエンジニアのキャリアを理解するための歴史のキャッチアップ

  • 業界を取り巻く流行や、将来予測のキャッチアップ

お勧めの書籍

最後に、エンジニアキャリアを掘り下げていく上でのお勧め本を列挙しておきます。私の本もありますが、ご参考になればと思います。

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