見出し画像

SPAM化するITエンジニアの転職スカウトと、疲弊するスカウト担当者

2月に前職を退職し独立したわけですが、最初から独立をするつもりだったかというとそうではありません。当初はEMとしての転職を前提に複数の会社さんとお話をしていました。そんな中、いくつかスカウト媒体もプロフィールを更新し、様子を見ていました。

そんな中、とても気になったのが下記のような「気のないスカウト」です。更新翌日に同じ人材紹介会社から同日7:00と7:01に届いたそれは、どう見てもプロフィールを見ていないものでした。この企業に限ったものでなく、宛名だけカスタマイズされたプロフィールは掃いて捨てるほど届きました。

7年ほど前、広告代理店に居たときに会社に電話があり、出ると「スカウトのものです。久松さんの営業部長としての経歴を拝見してお声掛けしました!」と言われたことがあります。どうやら社名と役職名だけ見て電話をしてきたようです。エンジニアであり営業はしたことがないと告げると「それでも良いです」とのことで、随分と雑なスカウトに感じましたが今はそれが全国区で起きている印象です。職種にエンジニアらしき文字があれば取り敢えずスカウトする状態が蔓延しています。

スカウト媒体におけるスカウト開封率、返信率の低下は世間的に顕著になってきていますが、今回はそんなお話です。

有料設定していますが、最後まで無料でお読みいただけます。もしよければ投げ銭感覚で応援をお願い致します。


スカウトの変遷

スカウトは元々は通常ルートでの採用が困難なポジションや、ハイクラス人材に対して実施されていました。現在で言うところのヘッドハンティングの位置づけでした。数年前はマネージャー以上や年収800万円以上の方を対象者にしていました。

そこから徐々にキャズム越えし、メンバー層や新卒へとスカウト対象者が拡大していきました。

2018年頃までは「スカウトを受けることで舞い上がってしまい、そのまま転職してしまう1-2年目」を懸念する経営者も居られましたが、今となっては新卒からスカウトに遭う状態です。学部3年生のサマーインターン期から既にスカウト慣れした学生の中には、中途経験者も顔負けの処世術を身に着けて交渉してくる方も珍しくなくなっています。

疲弊するスカウト送信者と、原因としてのKPI・採用RPA

5年ほど前、スカウト返信率は10%あたりが目安となっていました。しかし今では中途経験者採用の場合、5%というのが一つの目安になるほど低下してきています。このスカウト返信率に対する対応策というのが一つの明暗を分けます。

スカウトの内容を改善し、スカウト返信率を高めようという動きがメインストリームになればまだ健全でしたが、そうはならなかったようです。返信率10%の時代に100通送ることで10通返って来ていたのであれば、返信率5%の時代であれば200通送りましょうという発想です。KPIとして返信率ではなく、スカウト送信数に置いていると言えます。発想が営業のテレアポと言いましょうか。人事採用担当の方には営業バックボーンの方も少なくないため、スカウト送信数を重視する向きというのは親和性が高いというのはあるのでしょう。勢い、スカウト媒体側も目標送信通数をクライアントに課するようになります。n通送信するとスペシャルスカウト送信権利を何通付与しますというような施策もあります。

同時期に起きたのが人事採用担当のフリーランス化です。多くの人事採用担当フリーランスはスカウト送信者になったため、「数を送りましょう」という施策を企業が取るとクラウドソーシングサイトなどを経由して呼応する向きがありました。

また、ここ数年流行っていたRPAの流れも採用シーンで見られます。スカウト媒体によっては利用規約ベースで禁止されていますが、各人の所属企業だけ置換して自動スカウト送信する「採用RPA」が席巻していきます。冒頭に紹介したメールもまた、採用RPAによるものと思われます。7:00と7:01の送信時間はループの周期か何かでしょうね。

スカウト大量送信とマッチングサービスヘビーユーザーの共通項

私もかつて携わっていた男女のマッチングサービスの場合、通常のユーザーであれば一人一人を吟味しながら「いいね」を送ります。しかし一部ヘビーユーザーの場合、片っ端から「いいね」を送ってマッチングしてからプロフィールを精査し、継続してやり取りをするかどうか考える人たちが居ます。現在のスカウトもマッチングサービスの「いいね」と同様に一通一通送っていた時代から、一部ヘビーユーザーのようにマッチング(返信)されてから考える風潮が一般的になっています。

エンジニアから聞こえてくるスカウトに関する苦言として「スカウトされてので書類を送ったらお見送りされた」「スカウトされてカジュアル面談に行ったらお見送りされた」ことに対する憤りの話がありますが、これもまた「マッチングした後に塩対応になる一部ヘビーユーザー」と同義のものと思われます。

スカウト媒体を巡る憂い

このように返信数を稼ぐためには返信率を鑑みて大量に送られなければならないという状態が引き起こり、結果としてスカウト内容の陳腐化に繋がっています。そしてノルマを課されたスカウト担当者や役職者もまた、疲弊しています。

実際にヘッドハンターの方とお話をしていると、返信率が低すぎるスカウト媒体については気のないスカウトに埋もれてしまうため見限る動きが出ています。気持ちの入ったスカウトを打とうと思うと、こうした媒体を選別する動きもまた戦略でしょう。

契約する企業側からすると、成果報酬型の人材紹介会社とは違い、固定費が大きなスカウト媒体では費用対効果がより強く見られます。スカウト媒体運営者の方もたくさん繋がらせて頂いていますが、顧客に通数の増加を求める時代から、顧客のスカウト品質向上施策に着手するアプローチにしないとだいぶマズい状態ではないでしょうか。

執筆の励みになりますので、記事を気に入って頂けましたらAmazonウィッシュリストをクリックして頂ければ幸いです。

オンラインサロンも開講しております。noteやTwitterには書けないことや個別相談などを展開していきます。

Meetyも解説しております。キャリア相談、組織づくり相談などお気軽にどうぞ。


ここから先は

0字

¥ 500

頂いたサポートは執筆・業務を支えるガジェット類に昇華されます!