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働くことを苦しくしているのは何者なのか?

最近は若い人ほど転職への決断も早かったりもしますが、その理由も単に「年齢的に労働市場で有利だから」というだけとも言い切れません。

上の世代を見て、会社組織の中で疲弊し、かつ定年後は行き場を失うその姿に、ゾっとするような恐怖を感じていることもあります。こういった閉塞感の中にいることそのものが怖いのです。

ここには「労役という義務で人生を消費したくない」とも言える恐怖があります。そしてその裏を返せば、「より自由にイキイキと働きたい」といった健全な願いや欲求も見え隠れしています。

しかし私たちの住むこの社会では、ある意味では当たり前のこの欲求がなぜ果たされずにいるのか?そして、何をすれば止めるものを取り除くことができるのか?今回はそんなことを書いてみます。


戦争が生み出し引き継がれる抑圧的な規範

この恐ろしい閉塞感の正体は、個の願いや欲求の抑圧にあります。今では人手不足が急激に進み変わってきていますが、特に働き方改革が本格化する前までは、人をモノ扱いし尊重しない風土がスタンダードでしたよね。人は工業製品のように換えがきくものであり、人件費換算され損益計算書に記載されるものだったです。

特にバブル後の氷河期で人余りの時代はその傾向が顕著であり、様々なところで暗い影を残してしまっていますね。

さてそんな抑圧が強力に社会に現れたのが、元を辿ると直近の軍国主義です。若い男性は自らが戦場で死ぬことを、また女性たちは配偶者や子どもが戦場で死ぬことを、それぞれ「お国のため」として喜びと定義する規範を受け入れるよう同調圧力をかけられることになりました。※参考「ハラスメントは連鎖する『しつけ』『教育』という呪縛」

これは現代でも紛争地のレポートなんかを見ると同じことが起こっているのが分かると思います。対外的な緊張が最大化すると、めちゃくちゃ抑圧的な規範が社会を席巻してしまうのです。

さてそんな軍国主義の担い手であった将校などの職業軍人たちは、戦後に企業戦士に身を置き換え、経済界でその文化を再現していきます。(「24時間働けますか」というのがその象徴ですね。)

経営幹部の抑圧的な世界観は矛先が社員へと向かい、社員はその妻を抑圧し、妻はまた子を抑圧する。社会の中で抑圧的な規範が世代を超えて連鎖していくサイクルが回り始めます。灰色の閉塞感の再生産ですね。

社会規範を獲得した後に、もう一度自分軸を立てるプロセスが必要

さてそんな個の存在を軽視する強い抑圧的な規範の連鎖の果てが、今の私たちの社会という見立てをすることもできます。だから働くことに未だに滅私の気風があり、苦しみを帯びていて喜びも希望も薄れているのです。そりゃエンゲージメントも世界一低くなるわけだ。

もちろん、集団の中でなんらかの一定の規範を獲得することが悪いことであるとは言えません。人の発達のプロセスにおいては、どこかで外側の規範を取り入れる過程を経ることは必要です。

しかしここで問題なのは、この個を立たせまいとする圧力が強過ぎて、その先に進めていないことにあります。自分なりの考えを持ち、他者を尊重しながらも自分の規範で行動を決定するところに辿り着けないのです。そのため色々なところで「そういう人材が必要だ」と言っていても、ベースのふわっとした規範、要は空気がそれを拒否してしまっているのです。

そこでは何が起こっているのか。例えば、出る杭を打とうとする風潮。チャレンジする人に対して安全圏から評論家のような姿勢でいること。さらに若い世代はSNSなどで攻撃対象になるかもしれない、というストレスがあるかもしれません。

そのような意地悪な行為の裏にあるのは、抑圧の裏にある、自由などを求める人間性への欲求です。自由に飛びたとうとする人を見ると、必死に追いやっていた本来の願望が音を立てはじめるので、より強く塞ぎたくなるんですね。これをひらたく言うと妬みと言います。

個を尊重しチームで力を最大化する社会へ

今必要なのは、ただただそんな目に見えない抑圧を取り除いていって、その人が持つ本来の力を表舞台に引き出していただくことです。

もっと具体的に言うと、自分が本当にやりたいことにチャレンジしてください。自分が正しいと感じていることを口にしてください。自分が気に入らない規範を叩き直してください。規範を守りたいという人はいくらでもいるので、安心して別の道を試してみてください。

そして、あなたの力を最大限に発揮してください。限界を自分で決めつけないでください。あなたを不当に抑圧しようというあらゆる試みを、全て突き返してください

その先に隠されている、働くことへの本来の楽しみや喜びを手に入れて欲しいです。人生の多くの時間を占める労働を、苦役ではなく大切な時間にして欲しいです。

そんなスタンスで生きられる個が尊重されてこそ、組織やチームの力は最大化されます。規範意識の強い同じような人だけのチームにできることは限られているからです。

もちろんそこには規範を守る人がいてもいい。でも、既存の規範では納まらない人がいてもいい。状況に応じて取るべき役割が果たされることが大切です。

抑圧と閉塞感にまみれた社会と、人の可能性が最大限に映し出される社会。想像したらワクワクするのはどちらでしょう?

そんな面白い世界をつくりたくて、今はコーチングやファシリテーターをしています。

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本当にやりたいことを探したり、スタートするとき。今までのやり方を変えていくとき。人生の旅路の岐路にはコーチングを。

チームの力を引き出す対話はこちら。


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